ニュース

肥満やメタボはメンタルヘルスにも悪影響 幸福感も低下 スティグマなどのサポートが必要

 肥満や過体重がうつ病を引き起こし、幸福感を低下させることが、14万人超が対象の大規模研究で明らかになった。
 肥満や過体重は、2型糖尿病などの代謝疾患に影響を与えるだけでなく、社会的不名誉(スティグマ)などの心理社会的な側面もあり、その両方が影響しているという。
 「体重を適切にコントロールすることが、身体的な健康だけでなく、精神的な健康にも役立つ可能性があります。肥満のある人をサポートすることが必要です」としている。
 英国バイオバンクから14万5,000人超の遺伝子やメンタルヘルスなどのデータを解析した。
肥満や過体重はうつ病のリスクも高める
 肥満や過体重がうつ病を引き起こし、幸福感を低下させることが、英国のエクセター大学などが14万5,000人を超える参加者の、遺伝子やメンタルヘルスに関するデータを解析した大規模研究で明らかになった。研究成果は、医学誌「Human Molecular Genetics」に発表された。

 肥満は世界的な健康上の課題となっている。英国でも成人の4人に1人が肥満や過体重で、子供の肥満も増えている。肥満があると、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などのリスクが上昇し、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気のリスクも高まる。

 一方で、肥満が身体の健康にもたらす危険性についてはよく知られているものの、メンタルヘルスにもたらす影響については詳しくは解明されていない。

 社会的スティグマとは、肥満や糖尿病などの病気や、多くの人と異なることがあり、差別や偏見の対象となることを恐れ、それにともう負のイメージを抱いていることをさす。

 「今回の研究で、肥満や過体重は、代謝の健康にも影響をもたらしますが、それとは関係なく、うつ病のリスクも高めることが示されました。肥満がもたらしているのは、身体的健康を損なうことだけでなく、社会的スティグマも深刻です」と、エクセター大学医学部のジェシカ オラフリン氏は述べている。

関連情報
14万5,000人超の遺伝子とメンタルヘルスの関係を調査
 医学アカデミーが支援し、エクセター大学が主導した今回の研究で、研究グループは、英国バイオバンクに登録された14万5,000人を超える参加者の遺伝子と、詳細なメンタルヘルスのそれぞれのデータを解析した。

 英国バイオバンクは、40~69歳の中高年約50万人を対象に追跡して調査している大規模研究。血液やDNAサンプル、生活習慣や身体活動レベルなどの関連を調べている。

 研究グループはこの多面的な研究で、肥満や過体重でBMI(体格指数)の高い人でみられる、一塩基多型などの遺伝子多型などの遺伝子情報に加えて、臨床的なメンタルヘルス質問票を用い、うつ病、不安、幸福感のレベルも評価した。

 メンデルランダム化解析として知られる手法は、交絡因子を除外し、ランダム化介入試験を行ったかのように因果関係を明らかにできると注目されている。

 研究グループは、この手法で解析し、肥満でBMIが高いことと因果関係が強いのは、2型糖尿病、高血圧、心血管疾患などの代謝疾患のリスクを高める身体的な要因と、肥満による社会的影響や不名誉などの心理社な要因(スティグマ)のどちらであるかを解明しようとした。
身体的と社会的の両方の要因がメンタルヘルスに影響する
 その結果、肥満や過体重は、うつ病を引き起こし、幸福感を低下させることがあらためて明らかになり、身体的要因と社会的要因の両方がそれに影響していることが明らかになった。

 過体重でBMIの高い人で、うつ病が引き起こされる過程で、どのような方向性が強く影響をしているかを調べるため、研究グループはこれまでに分かっている2セットの遺伝的変異についても調査した。

 1つ目は、肥満や過体重であっても、代謝的には健康であるパターン。こうした人では、2型糖尿病や高血圧など、BMIの上昇に関連する疾患のリスクは低くなる。

 2つ目は、太っていて代謝的にも不健康であるパターン。研究グループは、この2つの遺伝的変異には、ほとんど差がないことを明らかにした。このことは、身体的要因と社会的要因の両方が、うつ病の発生リスクの上昇と健康状態の悪化に関与していることを示している。
体重をコントロールするためのサポートが必要
 「肥満と過体重がうつ病を引き起こすことが裏付けられました。今回の研究は、英国バイオバンクの14万人超のデータをもとにした、質の高い強力なものです」と、エクセター大学医学部のフランチェスコ カサノバ氏は言う。

 「肥満のある人を、食事や運動の改善、必要に応じて薬物療法によってサポートすることが必要です。体重を適切にコントロールすることが、身体的な健康だけでなく、精神的な健康にも役立つ可能性があります」としている。

High BMI causes depression - and both physical and social factors play a role(エクセター大学 2021年8月9日)
Higher adiposity and mental health: causal inference using Mendelian Randomisation(Human Molecular Genetics 2021年7月16日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶