ニュース
海藻の食物繊維が腸内細菌を介してメタボ・肥満を改善 腸内環境を健康にすると肥満予防につながる
2021年10月05日

慶應義塾大学薬学部とカイゲンファーマは、海藻に含まれる食物繊維であるアルギン酸ナトリウムが、腸内細菌を介して、メタボリックシンドロームを抑制することを明らかにした。
海藻の食物繊維のメタボや肥満を抑制する効果については、食物中の脂質を吸着し、体内に吸収されにくくするなどの作用が考えられていたが、今回の研究により、腸内細菌叢の組成や代謝物を変化させることで、腸管内の炎症を抑え、メタボや肥満を抑制することが明らかになった。
「腸内環境を健康に保つことが、メタボ・肥満の予防につながる」という考え方を広めると、メタボを予防・改善につながる可能性がある。腸内環境を改善する医薬品や食品の開発も期待されている。
海藻の食物繊維のメタボや肥満を抑制する効果については、食物中の脂質を吸着し、体内に吸収されにくくするなどの作用が考えられていたが、今回の研究により、腸内細菌叢の組成や代謝物を変化させることで、腸管内の炎症を抑え、メタボや肥満を抑制することが明らかになった。
「腸内環境を健康に保つことが、メタボ・肥満の予防につながる」という考え方を広めると、メタボを予防・改善につながる可能性がある。腸内環境を改善する医薬品や食品の開発も期待されている。
海藻の食物繊維がメタボを改善する働きに腸内細菌が関与
「アルギン酸ナトリウム」は、コンブやワカメ、ヒジキ、モズクなどの褐藻類に含まれている多糖類で、増粘剤やゲル化剤など、食品の品質改良材として広く用いられ、水溶性食物繊維としても用いられている。
肥満モデル動物を用いた試験では、体重増加を抑える、コレステロールを減少させるなど、メタボ・肥満に対する効果も報告されている。
さらに、一部の腸内細菌がアルギン酸ナトリウムを栄養源として利用することも明らかになっている。
腸内細菌は代謝機能に影響を及ぼすことが知られているが、アルギン酸ナトリウムのメタボ抑制作用に、腸内細菌がどのように寄与しているかはよく分かっていない。
そこで研究グループは、抗菌剤で腸内細菌叢を撹乱させたマウスを使用し、生体内分子を網羅的に調べるオミックス解析により、アルギン酸ナトリウムによるメタボ抑制効果に、腸内細菌が必須であることを明らかにした。
研究は、慶應義塾大学薬学部薬学科の江島竜太氏、同薬学部の秋山雅博特任講師、金倫基教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授、カイゲンファーマの佐藤弘規氏らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Nutrients」にオンライン掲載された。
海藻の食物繊維がメタボ・肥満を改善するメカニズム

高脂肪食を摂取すると、腸内細菌叢の構成異常と腸管内への炎症性マクロファージの浸潤が引き起こされ、メタボが促進される。アルギン酸ナトリウムを摂取すると、腸内細菌であるバクテロイデス属菌の割合が増加し、炎症性の腸管マクロファージの浸潤が減少し、メタボが抑制される。
アルギン酸ナトリウムは腸内細菌を介して腸内の免疫炎症を減少

腸内環境を健康に保つことが、メタボ予防につながる
研究グループは、アルギン酸ナトリウムのメタボ抑制効果を確かめるために、高脂肪食を与えたマウスにアルギン酸ナトリウムを摂取させた。その結果、このマウスでは、高脂肪食の負荷後の体重増加や血中コレステロール、脂肪・肝臓重量、肝臓脂肪滴などの値が減少し、耐糖能(血糖値が高くなったときに、正常値まで下げる能力)も改善していた。
次に、アルギン酸ナトリウムにより腸内細菌叢が変化するかを検証した。高脂肪食を与えたマウスでは、4週目に腸内細菌叢が大きく変化していた。このマウスにアルギン酸ナトリウムを同時に摂取させたところ、バクテロイデス属菌が著明に増加した。
これらから、アルギン酸ナトリウムは高脂肪食によるメタボ・肥満の進展を抑制し、そのメカニズムとして、アルギン酸ナトリウムが高脂肪食を負荷したマウスの腸内細菌叢を変化させていることが示された。
海藻の食物繊維のメタボ・肥満を抑制する効果については、食物中の脂質を吸着し、体内に吸収されにくくするなどの作用が考えられていたが、今回の研究により、腸内細菌叢の組成や代謝物を変化させることで、腸管内の炎症を抑え、メタボを抑制することが明らかになった。
「腸内環境を健康に保つことが、メタボ予防につながる」という考え方を広めるとともに、メタボ・肥満を予防・改善するために、腸内環境を改善する医薬品や食品や開発をすることが期待されるとしている。
慶應義塾大学薬学部・薬学研究科慶應義塾大学先端生命科学研究所
Seaweed Dietary Fiber Sodium Alginate Suppresses the Migration of Colonic Inflammatory Monocytes and Diet-Induced Metabolic Syndrome via the Gut Microbiota(Nutrients 2021年8月16日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月05日
- 【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月30日
- 都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査