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学生時代と高齢期に運動をした女性は骨粗鬆症のリスクが低い 運動が骨密度を高める
2022年02月08日

中学・高校生の頃に運動を習慣として行っており、高齢期にも運動習慣のある女性は、骨密度が高く、骨粗鬆症のリスクが低いことが、順天堂大学の調査で明らかになった。調査は、都内在住の高齢者1,596人を対象に行ったもの。
「日本では女性の要介護となる原因の多くは転倒・骨折であり、その背景にある骨粗鬆症を予防することは重要な課題です。中学・高校生期と高齢期の両方の時期で、運動習慣をもつことが、より高齢期の骨粗鬆症の予防につながる可能性があります」と、研究者は述べている。
運動が骨粗鬆症のリスクを低減
日本の骨粗鬆症の有病率は、先進諸国のなかでも高いことが知られている。とくに女性では、骨粗鬆症は骨折や要介護の重要なリスクになっており、予防が重要だ。 これまでの研究から、骨粗鬆症の予防には運動が有効であり、中学・高校生期の運動習慣は最大骨量(一生の中でのピークに達した時点の骨量)を高めることや、高齢期の運動習慣は骨量減少を抑えることが明らかになっている。 そのため、中学・高校生期と高齢期の両方の時期で運動習慣をもつことが、より高齢期の骨粗鬆症の予防につながる可能性がある。 そこで研究グループは、都市部在住の高齢者が参加したコホート研究「文京ヘルススタディー」で、中学・高校生期および高齢期の運動習慣と骨密度や骨粗鬆症の有病率との関連について調査した。 「文京ヘルススタディー」は、同大学が東京都文京区に在住する1,629人の高齢者を対象に実施している研究で、認知機能・運動機能などが「いつから」「どのような人が」「なぜ」低下するのか、「どのように」早期の発見・予防が可能となるかなどを明らかにすることを目的に行っている。 関連情報中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動習慣のある女性は骨密度が高い
研究グループは、65~84歳の高齢者1,596人(男性681人、女性915人)を対象に、質問紙調査を実施。中学・高校生期に運動部活動をしていたかどうかで中学・高校生期の運動習慣の有無を、現在、運動習慣があるかどうかで高齢期の運動習慣の有無をそれぞれ調査した。次に、それらの運動習慣の有無の組み合わせで4群に分類し、骨密度や骨粗鬆症の有病率を比較した。 その結果、女性の股関節の骨密度は、中学・高校生期および高齢期の運動習慣が両方ある群では、他の3群と比べて有意に高いことが明らかになった。 また、中学・高校生期と高齢期の両方で運動習慣のある女性は、両時期に運動をしていない女性に比べ、骨粗鬆症のリスク(オッズ比)が35%低下した。一方、男性では骨粗鬆症の割合が女性と比べ低く、過去の運動歴との有意な関連性もみられなかった。
中学・高校生期および高齢期の運動習慣が両方ある群(赤色バー)は骨密度が高い
中学・高校生期および高齢期の運動習慣が両方ある群(赤色バー)は骨粗鬆症リスクが低い


出典:順天堂大学、2022年
女性は骨粗鬆症の予防のために運動を
研究では、女性は中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動することで、骨粗鬆症のリスクを低減できる可能性があることが示された。 日本の女性は、中学・高校生期に運動をまったく行わない人と、活発に行う人に分かれており、「2極化」が顕著に進んでいる。その原因として、現在の運動部活動などが女性の運動のニーズに必ずしも合っていないことが指摘されている。 「競技スポーツでない"ゆるい"スポーツの普及の推進が期待されます。また、今回の調査に参加した高齢者では、カルシウムやビタミンDの摂取量が国の推奨量に達していない人が多く認められ、今後、栄養摂取の面でも改善が必要と考えられます」と、研究グループでは述べている。 「今回の研究により、中学・高校生期だけでなく高齢期の運動も骨に良い影響を与えうることが示唆されましたが、それぞれの時期にどの運動をどれくらい行うことが必要かなど、まだ不明の点が多く残されており、今後さらなる研究を進めていきます」としている。 研究は、順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの大塚光氏、田端宏樹研究員、田村好史先任准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Medicine」にオンライン掲載された。 Bunkyo Health Study (文京ヘルススタディー)順天堂大学大学院医学研究科 スポートロジーセンター
順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学
順天堂大学スポーツ健康科学部
Associations of exercise habits in adolescence and old age with risk of osteoporosis in older adults: The Bunkyo Health Study (Journal of Clinical medicine 2021年12月19日)
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