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健康食品の「免罪符型」の動画広告が不健康な行動を誘発 健康食品では乱れた食事や運動不足を帳消しにできない
2022年02月28日

「健康食品を摂取していれば、不健康な行動をしてもよい」という、"免罪符型"の動画広告が視聴者の認識に与える影響を、東京大学が世界ではじめて公衆衛生の観点から明らかにした。
こうした免罪符型の広告は、不健康な行動をとるための「免罪符」として健康食品を描いており、視聴者が「健康食品を摂取すれば、健康行動をしなくてよい」という誤ったメッセージを受け取ってしまうおそれがあるという。
健康食品は"魔法の方法"にはならない
研究は、東京大学大学院医学系研究科の家れい奈氏、奥原剛准教授、木内貴弘教授らによるもの。研究成果は、「Healthcare」に掲載された。 研究グループは、健康食品の「免罪符型」広告が、視聴者に及ぼす影響を評価することを目的に、ランダム化比較研究を実施した。 その結果、「免罪符型」の健康食品の動画広告を視聴することで、視聴者は「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識を強めることが実証された。 「公衆衛生のいくつかの研究では、健康食品の有効性は極めて限定的だとされています。健康食品を摂取するかどうかに関わらず、食生活・生活習慣の実行は重要であり、健康食品は乱れた食事や運動不足を簡単に解消する"魔法の方法"にはなりません」と、研究者は述べている。免罪符型の動画広告の閲覧により印象がどう変わるかを調査
民間の調査では、とくに「脂肪」への効果を訴求する健康食品への関心が高く、また近年のインターネットなどの通信環境の発展にともない、そうした食品の動画広告に接する機会は増えている。 研究グループは、日本の「脂肪」への効果を訴求する健康食品の動画広告に、「どのような」内容が「どれくらい」あるのかを類型化する、内容分析を実施した。 その結果、「免罪符型」と名付けられる広告が、分析対象の広告の約25%を占め、もっとも多いことが分かった。 次に、「脂肪」への効果を訴求する健康食品の「免罪符型」動画広告が、視聴者の認識に与える影響を評価することを目的としてランダム化比較研究を実施した。 調査会社の登録モニター788人を対象に、インターネット調査を実施した。参加者を、介入群または対照群にランダムに割り付けた。 介入群に割り付けられた参加者394人は、以前の研究で「免罪符型」と特定した動画広告のうち、再生回数が多い3本の動画を閲覧した。対照群に割り付けられた参加者394人は、健康食品とは無関係のお茶の抽出方法に関する動画を閲覧した。 「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識に関する質問9問について、参加者に「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの6段階で動画の閲覧前後に尋ねた。 動画を閲覧した後の認識の平均値を、介入群と対照群で比較した(閲覧前の値を共変量として調整した共分散分析)。免罪符型の広告の内容改善が必要
その結果、「免罪符型」の動画を閲覧した介入群は、お茶の動画を閲覧した対照群と比較して、「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」という認識が有意に強いことが分かった。 健康食品を、不健康な行動をとるための免罪符かのように描く「免罪符型」の動画広告は、特定の文言で「健康食品を摂取すれば、不健康な行動をしてもよい、健康行動をしなくてよい」と訴求しているわけではない。 しかし、動画広告内のストーリーや登場人物の表情などの視聴を通じ、そうした誤った認識を高めることが示された。 「健康食品は、乱れた食事や運動不足を簡単に解消する魔法の方法ではありません。たとえば、からあげ1つで約60kcalですが、その摂取を帳消しにする健康食品はありません」と、研究グループは述べている。 「免罪符型」の広告が、もし、日常的に不健康行動も誘発しているとなれば、不健康行動による害の方が大きいと考えられる。「健康食品の動画広告の内容を改善する重要性が示唆されました」と、研究者は述べている。 東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻The Effect of Exposure to "Exemption" Video Advertisements for Functional Foods: A Randomized Control Study in Japan (Healthcare 2022年2月11日掲載)
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