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【世界腎臓デー】10人に1人が腎臓病 正しい知識が必要 腎臓を守るための「5つの法則」

 3月10日は「世界腎臓デー(World Kidney Day)」だった。世界の成人の10人に1人にあたる8億5,000万人が腎臓病とともに生きている。

 腎臓病は早期の段階では治療で回復できるが、腎臓が壊れて機能があるレベルまで悪くなってしまうと、正常に戻すのは難しくなる。腎臓の働き低下し、最後まで進行すると、透析などの治療によって腎臓を代替しなければならなくなる。

 人工透析は高額な医療費がかかる治療だ。人工透析にかかる医療費は、1人年間400~600万円とみられている。透析が必要になると、患者のQOL(生活の質)が低下するだけでなく、医療費の増大が医療経済にとって大きな負担になる。

 腎臓病を予防・早期発見し、重症化を防ぐ仕組みが求められている。腎臓病を予防・改善するための「5つの法則」が公開されている。

腎臓病を早期発見して治療すれば腎臓を守れる

 「世界腎臓デー(World Kidney Day)」は、腎臓病の早期発見と治療の重要性を啓発する国際的な取り組みとして、2006年より国際腎臓学会(ISN)などにより開始された。毎年3月の第2木曜日に実施され、世界各地でイベントが開催されている。

 「世界腎臓デー」は、腎臓病の予防・治療、症状管理を改善し、患者の意識を高め、社会参加を促すために実施されている。世界腎臓デー運営委員会は、2022年のテーマを「すべての人に腎臓病の健康を」と定めた。

知識のギャップをなくして、より良い腎臓病のケアを
 慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが低下した状態や、尿のなかにタンパクが漏れでる状態(タンパク尿)の総称。世界の成人の10人に1人がCKDを発症しているが、診断や治療を受けていない人も多い。日本にも1,000万人を超えるCKDの人がいると推計されている。

 CKDになっても、腎臓の働きがかなり低下するまで自覚症状はあまりない。自覚症状のない、いわゆる「隠れ腎臓病」のうちに、早期発見して治療を受けることが重要だ。

 腎臓病は早期の段階では治療で回復するが、腎臓が壊れて機能があるレベルまで悪くなってしまうと、正常に戻せなくなる。進行すると腎不全と呼ばれる状態になり、透析治療などが必要になる。

 慢性腎臓病は、高血圧、糖尿病、コレステロールや中性脂肪が高い脂質異常症、肥満やメタボリックシンドロームとも関連が深い。

 「腎臓病が進行すると、ご自身とご家族の生活、仕事、社会生活、旅行などの日常の活動への参加において、深刻な影響がでてきます。腎臓の働きが低下するまで自覚症状はありませんが、進行すると、むくみ、貧血、倦怠感、息切れ、夜間尿など、さまざまな症状があらわれるようになります。腎機能の低下とともに、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクも高くなります」と、国際腎臓学会のアグネス フォゴ会長は述べている。

腎臓病の検査を毎年受け、早期発見することが大切

 腎臓病は早期に発見し治療することで予防・改善が可能だ。世界腎臓デーに「糖尿病や高血圧など、腎臓病のリスクの高い人は、食事や運動などの生活スタイルを見直して、適切な治療を受け、検査を定期的に受けてほしい」と呼びかけられた。

 「腎臓病を予防・改善するために、腎臓病についての正しい知識が必要ですが、知っている人と知っていない人の格差が大きいことが課題になっています。知識のギャップは、腎臓病との闘いを抑制するうえで障害となります。腎臓の健康に関する理解を深めるために、効果的な情報発信が求められています」と、カリフォルニア大学高血圧・腎臓学部のカミアル カランタルザデ教授は言う。

 日本腎臓病協会などが2021年に実施した調査によると、慢性腎臓病(CKD)を「知っている」と回答したのは55.9%で、2019年の調査から5.2ポイント上昇した。調査は、全国の20歳~50代の一般市民1,606人を対象に、インターネットで実施したもの。

 しかし、生活習慣病としては「糖尿病」「高血圧性疾患」がいずれも50%以上だったのに比べ、「慢性腎臓病」は27.4%と、生活習慣病としての認知度が低いことが分かった。

 また、CKDを認知している人のうち、健康診断での腎機能検査と尿検査項目のなかで、「尿タンパク」を知っている割合は51.4%だったが、CKDの重症度の指標として利用されている「eGFR」(推算糸球体ろ過量、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示す)を知っているのは15.5%で、認知度が低いことが分かった。

慢性腎臓病について知っていますか?
腎臓病を予防するために、若い頃から知識が必要
若い人の腎臓病の認知度は低いという結果に

出典:日本腎臓病協会、協和キリン、2022年

 「糖尿病や高血圧、高脂血症、肥満症は生活習慣病として広く認知されています。慢性腎臓病はこれらの疾患とも関連が深く、20代、30代といった若年期からの生活習慣が発症に大きく影響しています」と、日本腎臓病協会理事長、川崎医科大学副学長、腎臓・高血圧内科学主任教授の柏原直樹先生は述べている。

 「今後、疾患の予防に向けた対策を進めていくうえで、年代に応じた適切な情報発信を継続し、腎臓病の克服を目指していきたいと思います」としている。

腎臓病を予防・改善するための「5つの法則」

 世界腎臓デーには、腎臓病を予防・改善するための「5つの法則」が提案された。

 腎臓病は、自覚症状が乏しいうちに病状が進展していく「サイレントキラー」だ。進展すると、生活の質(QOL)が大きく損なわれる。しかし、腎臓病を予防・改善するために、いくつかの方法がある。

1 生活スタイルをアクティブに

 健康的な体重を維持し、血圧値や血糖値をコントロールして正常な状態を維持することは、慢性腎臓病のリスクを減らすのに役立つ。そのために、健康的な食事と、運動を習慣として行うことが必要。

2 健康的な食事をする

 健康的な食事は、高血圧・糖尿病・心臓病など、慢性腎臓病のリスクとなる病気を予防・改善するために必須だ。高血圧を予防するために、塩分摂取量を減らすことも必要。

3 血糖値をはかり、コントロールする

 血糖値が高くなっており、糖尿病である危険性があっても、世界の半数がそのことに気が付いていない。糖尿病をもつ人の半分に腎臓病の危機がある。良好な血糖コントロールを維持し、糖尿病の治療を続けていれば、腎臓病を予防・改善できることも分かっている。

 糖尿病の人は、医療機関への通院を続け、血液検査と尿検査で腎機能を定期的にチェックしよう。

4 血圧をチェックして、管理する

 高血圧は腎臓にダメージを与える原因になり、これに高血糖や高コレステロールが重なると、腎臓はさらにいたみやすくなる。

 血圧は家庭用の血圧計でもはかれる。中年以上になったら、血圧をはかることも習慣にしたい。

 もしも血圧が高い状態になっていたら、食事や運動などの生活スタイルを見直すとともに、医師に相談したうえで、必要に応じて薬物療法を受けることが勧められる。

5 喫煙をしない

 喫煙は腎臓への血流を悪くする。腎臓にいきわたる血液が少なくなると、腎臓が正常に機能する能力が低下する。喫煙は、腎臓がんのリスクも50%上昇させる。

 タバコを吸う人は、いますぐ禁煙を試みて、吸わない人も、他人が吐き出したタバコの煙を吸わないようにしよう。

世界腎臓病デー

NPO法人 日本腎臓病協会
[Terahata]
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