ニュース
「コーヒーを飲む」習慣が痛風の発症を減らす? 尿酸値とは関係なく痛風リスクが低下
2022年05月02日
「痛風」は、血清尿酸値が高い「高尿酸血症」を放置すると発症する疾患だ。食生活の欧米化や高齢化にともない患者数は増えており、コロナ禍でさらに増加することが懸念されている。
コーヒーを飲む習慣により、痛風を発症しにくくなることが、防衛医科大学校などの研究で明らかになった。コーヒーを飲むことで、尿酸値を介さない痛風の予防効果をえられる可能性があるという。
痛風は糖尿病や肥満とも関連が深い
昨今のコロナ渦の影響で、ストレスや体重増加による生活習慣病の増加が指摘されている。生活習慣病のひとつとされる「痛風」は、血清尿酸値が高い「高尿酸血症」を放置すると発症する疾患だ。 「痛風」は、多量の尿酸が体内にたまって、これが主に足の親指の関節などに結晶化して起こる。ある日突然に関節が腫れて、激しい痛みに襲われることから、「風が吹くだけで痛む」とも言われている。痛風はメタボや肥満、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病などとも関連が深い。 コロナ渦以前の日本でも、食生活の欧米化や高齢化にともない患者数は増加しており、現在、無症状の高尿酸血症患者は約1,000万人、痛風患者は約100万人いるといわれている。とくに大量に飲酒する中高年の肥満男性に発症しやすいことが知られている。 一方で、近年の分子遺伝疫学の進展により、高尿酸血症や痛風の発症には、生活スタイルなどの環境要因だけでなく、遺伝的な要因も強く影響することも明らかになっている。 通風を予防・改善するために生活スタイルの改善が効果的とされており、どのような生活をすると予防できるのか、解明が期待されている。「コーヒーを飲む」習慣が痛風リスクを軽減
「コーヒーを飲む」習慣が、痛風の発症リスクを下げることが、メンデルランダム化解析により明らかになった
出典:防衛医科大学校、2022年
海外の研究で「コーヒーを飲む」習慣が痛風の発症リスクを抑えると報告されているが、解析方法の問題点も指摘されており、詳しくはよく分かっていなかった。
そこで、防衛医科大学校や大阪大学の研究グループは、「コーヒーを飲む」習慣に関連するゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果をもとに、(1) 日本人最大規模の血清尿酸値のGWASの結果、(2) 医師が痛風と診断した症例を対象とした日本人最大規模の痛風のGWASの結果を、それぞれメンデルランダム化解析を行い、「コーヒーを飲む習慣と血清尿酸値」と「コーヒーを飲む習慣と痛風の発症」という2つの因果関係について検討した。
その結果、日本人ではじめて、「コーヒーを飲む」という習慣が、血清尿酸値の変動とは関係なく、「痛風の発症リスクを軽減すること」を明らかにした。
食生活の欧米化やコロナ渦での生活様式の変化で増加している「痛風」を、「コーヒーを飲む」という簡単な生活スタイルで予防しうることが示された。
さらに、「コーヒーを飲む」習慣は、血清尿酸値には影響を与えないことも示された。コーヒーのどの成分が影響しているかは不明だが、コーヒーを飲むことで、尿酸値を介さない痛風の予防効果をえられる可能性がある。
尿酸値の変動とは別の生理学的要因が関わっていることも示唆され、今後の痛風の発症メカニズムの解明などにつながることが期待される。
メンデルランダム化解析によりコーヒーと痛風の因果関係を解明
研究は、防衛医科大学校の中山昌喜講師、河村優輔医官、松尾洋孝教授、大阪大学の白井雄也医師、岡田随象教授らの研究グループによるもの。研究成果は、医学誌「ACR Open Rheumatology」に掲載された。 国内の研究施設に所属する9人の研究者による多施設共同研究として実施され、9つの食習慣については日本人約17万人を、血清尿酸値については12万人を、さらに痛風の日本人男性約3,000人をそれぞれ対象にGWAS(ゲノムワイド関連解析)が実施された。 今回採用されたメンデルのランダム化解析は、遺伝子研究によるゲノム情報をもとに、関連のある環境因子(コーヒーを飲む習慣の有無)と疾病のリスク(痛風)との因果関係を推定する統計学的手法。 この手法は、ゲノム情報は生まれつき環境因子の影響を受けず、ランダムに分配されるという「メンデルの独立の法則」を前提としている。これにより、2つの因子の関連を比べる従来の観察研究で課題となっていた交絡因子(見かけ上の関連をもつ第3の因子)の影響を受けにくく、因果関係を特定しやすくなった。 また、ゲノムワイド関連解析は、ヒトゲノム全域にわたり遺伝子多型を検索し、病気などとの関連を統計的に調べる方法。 今回研究は、以前の報告で使用された欧米のデータの再解析として、「コーヒーを飲む習慣と痛風の発症」の因果関係について、遺伝子変異の多面性を考慮した、はじめて正確なメンデルランダム化解析により解明したもの。 防衛医科大学校の松尾洋孝教授らの研究グループは、機能・局在解析などとあわせ、新規の尿酸輸送体遺伝子を複数個報告してきただけでなく、臨床診断された痛風患者を対象とした痛風のGWASにより、数多くの痛風関連遺伝子座を同定してきた。 これまでにいくつも痛風・高尿酸血症と関連する遺伝子が報告されており、代表的なものとして、ABCG2遺伝子などがある。 防衛医科大学校分子生体制御学講座Coffee consumption reduces gout risk independently of serum uric acid levels: Mendelian randomization analyses across ancestry populations (ACR Open Rheumatology 2022年3月29日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要