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【子宮頸がん】HPVワクチンの予防効果は優れている 接種9年後の感染率は0% ワクチンの有効率は100%

 高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に対して、HPVワクチンの長期の予防効果を検討した新潟大学の研究で、接種から9年が経過した25歳の女性で、HPV16/18型の感染者はみられず、HPVワクチンの長期予防の効果は優れていることが実証された。

 積極的勧奨が中止されていたHPVワクチンだが、12~16歳で公費接種を受けられた女性は、長期的な効果を享受できていることが明らかになった。

 「まだHPVワクチンの接種を受けていない女性に対しては、このような科学的根拠をもとに、ワクチンの効果を強くアピールしていく必要があります」と、研究者は強調している。

HPVワクチンの高い有効性を確認

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性交渉によってうつるウイルスで、性交渉の経験のある女性のおよそ8割は、生涯で一度はHPVに感染すると言われている。つまり、男女ともに誰でも感染するリスクのあるウイルスだ。

 子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンは、2013年に無料で受けられる定期接種の対象になった。しかし同年、厚生労働省は積極的な接種の勧奨を中止した。

 その結果、接種対象者の接種率は、積極的勧奨が停止した世代では1%以下に激減した。そのため、日本では年間約3,000人の女性が、子宮頸がんにより命をおとしている。

 日本でHPVワクチン接種の公費助成が開始された2010年時点で、接種対象年齢だった女性は、現在20歳代の半ばを迎えている。

 その時期にあたる23~26歳の女性は、性的活動性がもっとも高まり、高リスク型HPV感染率がピークに達していることを、研究グループは新潟で行った先行研究で明らかにしている。

 研究グループはさらに、HPVワクチンの接種を受けた20~22歳の女性で、HPV16/18型感染に対する高い有効性が確認されたと報告している。

23~26歳の女性は高リスク型HPV感染率がピークに

出典:新潟大学、2022年

HPVワクチン接種から9年が経過した女性を長期調査

 HPVには200種以上のタイプがあり、ウイルスの発がんに関与する能力により、高リスク型と低リスク型に分類されている。HPV16/18型は、全世界の子宮頸がんの70%を占める代表的な高リスク型だ。

 HPVワクチンの接種を受けた女性では、HPV31/45/52型という、他の高リスク型に対しても、「クロスプロテクション効果」がみられた。この効果は、ワクチンが標的としたウイルス株とは異なるウイルスにも感染予防の効果を発揮すること。

 しかし、25歳以降の女性での長期的な有効性については、日本では確かめられていない。そこで研究グループは、HPVワクチン接種から約9年が経過した25歳時点の女性の長期の感染予防の効果を検証した。

 対象となったのは、1993~94年に出生し、2019年4月~20年3月に、新潟市内で子宮頸がん検診とHPV検査を受けた、25~26歳の女性429例。

 HPVワクチン接種歴と性的活動性(初回性交年齢、性交経験人数)などを、質問票を用いて調査し、接種歴については自治体の接種記録も確認した。対象となった女性の35.0%に、HPVワクチンの接種歴があり(ワクチン接種群)、65.0%は接種歴がなかった(ワクチン非接種群)。

 HPVワクチン接種からHPV検査までの平均期間は8.6年で、中央値は103ヵ月(範囲92~109ヵ月)で、ワクチン接種群と非接種群で、初回性交年齢および過去の性交経験人数に有意差はなかった。

関連情報

感染率はワクチン接種群では0% ワクチンの有効率は100%

 その結果、ワクチン接種群とワクチン非接種群で、HPV感染率を比べたところ、高リスク型HPVのうち2価ワクチンが標的とする16/18型の感染率は、ワクチン非接種群の5.4%に対して、ワクチン接種群では0%と有意に低かった(P=0.0018)。

 ワクチンの有効率は100%であることが示された。また、HPV31/45/52型の感染率も、ワクチン非接種群の10.0%に対して、ワクチン接種群では3.3%と有意に低く(P=0.013)、有効率は69.0%と、クロスプロテクション効果も持続していることが示された。

HPVワクチンの接種を受けた女性は、高リスク型HPVの感染率が0%に
ワクチンの有効率は100%
他の高リスク型のウイルスの感染を防ぐクロスプロテクション効果も

出典:新潟大学、2022年

接種機会を逃した女性へのキャッチアップ接種と子宮頸がん検診の受診勧奨が課題に

 HPVワクチンの積極的接種の勧奨は、2022年4月より再開された。小学校6年生~高校1年生相当の学年までの女の子は、無料で接種を受けることができるが、それ以外の女性は自費での接種となる。

 ワクチン積極的勧奨の中止以降に、接種機会を逃した女性へのキャッチアップ接種と、子宮頸がん検診の受診勧奨の強化が課題になっている。HPVワクチン"停止世代"の女性は、現在20歳代となり、性的活動性がもっとも高まる年齢に到達している。

 研究グループは今回、実臨床データを用いて、ワクチン接種から9年が経過した25~26歳の日本人女性で、HPV感染に対する2価ワクチンの長期の有効性を日本ではじめて実証した。

 研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科産科婦人科学分野の黒澤めぐみ医師、榎本隆之特任教授、関根正幸准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Science」に掲載された。

ワクチン接種を受けていない女性にワクチンの効果をアピール

 「25歳時点でもワクチンによるHPV感染に対する持続予防効果が確認されたことは、ワクチンを接種した女性に対しての朗報になります」と、研究グループでは述べている。

 「まだHPVワクチンの接種を受けていない女性に対しては、このような科学的根拠をもとに、ワクチンの効果を強くアピールしていく必要があります」としている。

 また、HPVワクチンの接種を受けた女性に対しては、「ワクチンのHPVの感染予防の効果は、25歳になると消失するわけではないが、ワクチンを接種した女性でも、子宮頸がん検診は必ず受ける必要がある」というメッセージを伝えていくことが必要としている。

 今後、「NIIGATA study」では、25歳時点での子宮頸部前がん病変の発症予防に対する有効性と、30歳時点でのさらなる長期効果の解析を継続し、「国民の皆様への発信を続けていく予定」としている。

新潟大学医学部産科婦人科学教室
Long-term effectiveness of HPV vaccination against HPV infection in young Japanese women: Real-world data (Cancer Science 2022年4月8日)

ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~ (厚生労働省)
[Terahata]
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