ニュース
【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?
2022年05月23日

新型コロナの1度目の緊急事態宣言中(2020年4~5月)に、結婚数と離婚数が減少し、2020年12月~2021年2月には出生数が減少したことが、慶應義塾大学の研究で明らかになった。
この時期は、1度目の緊急事態宣言の8~10ヵ月後にあたり、その頃に妊娠を控えていたカップルが多かったと推測している。一方で、結婚数・離婚数・出生数については、いずれもコロナ禍での増加はみられなかった。
コロナ禍により、将来に対する漠然とした不安や経済的な悩みが生じ、結婚や離婚を延期・中止し、またパンデミックに直面してカップルが妊娠の意思を変化させている可能性がある。
コロナ禍で結婚数と出生数が減少
慶應義塾大学は、日本全国と地域別の人口動態統計を用いて、コロナ禍とそれ以前における結婚数・離婚数・出生数の推移を分析した。過去5年分のデータにもとづき、パンデミックが発生しなかった場合の結婚数・離婚数・出生数を予測した。 その結果、1度目の緊急事態宣言中(2020年4~5月)に、結婚数と離婚数に減少が認められた。そこから8~10ヵ月後の2020年12月~2021年2月には、出生数の減少が認められた。パンデミックに直面して、カップルが妊娠の意思を変化させたことが示唆される。 この20年、日本では結婚数・離婚数・出生数は減少傾向にある。こうしたパートナーシップや出生率の変化は、メンタルヘルスやウェルビーイング(心身と社会的な健康)、人口動態などにも大きな影響をもたらす。 国外では、新型コロナのパンデミックにともない、結婚数や出生数の減少、離婚数の増加が報告されているが、日本でのコロナ禍でのこれらの状況は明らかにされていなかった。 研究は、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室のガズナヴィサイラス研究員、野村周平特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「BMJ Global Health」に掲載された。将来に対する漠然とした不安や経済的な悩み
研究グループは、過去5年間をベースラインとして、新型コロナのパンデミックが発生しなかった場合に予測される仮想現実の数値と比較した。 その結果、2019年5月と11月に、結婚数の"超過"が認められた一方で、2019年4月と10月、加えてパンデミック以降の2020年1月・4月・5月・7月・9月・2021年4月には、結婚数の"過小"が認められた。 2019年の超過は、5月に元号が令和へと変わるタイミングで婚姻届を提出する「令和婚」によるもので、また11月は令和初のいわゆる「いい夫婦の日」が影響したと考えられる。 2020年の過小の理由の一部は、令和元年に間に合うように結婚を早めたカップルが多かった可能性が考えられるが、1度目の緊急事態宣言(2020年4~5月)にも過小が認められた(それぞれ1日あたり150~476人、189~514人の減少)。 これは、コロナ禍により将来に対する漠然とした不安や経済的な悩みが生じ、結婚を延期・中止したカップルが多かったためと考えられる。地域別の分析でも同じような減少が認められた。パンデミック以降は妊娠を控えていたカップルが多い?
離婚については、過去5年間をベースラインとして比較すると、2020年4月と5月には、離婚数の"過小"が認められた(それぞれ1日あたり6~70人、138~199人の減少)。また、2021年5月にも過小が認められた。"超過"はどの期間中にも認められなかった。 地域別の分析でも、四国を除き全ての地域で同様のパターンが認められた(四国は超過・過小ともに認められなかった)。 出生については、過去5年間をベースラインとして比較すると、2019年2月・3月・4月・6月・2020年12月・2021年1月・2月には、出生数の"過小"が認められた。地域別では、コロナ禍での過小は、関西と関東でしか認められなかった。 2020年12月~2021年2月の過小は、おおよそ1度目の緊急事態宣言の8~10ヵ月後にあたり、その頃に妊娠を控えていたカップルが多かったと推測される(それぞれ1日あたり27~87人、137~205人、43~106人の減少)。全国または地域別いずれでも、"超過"は認められなかった。コロナ禍により少子化が加速 コロナ禍が終われば結婚や出生は増える?
今回の研究により、コロナ禍により、将来に対する漠然とした不安や経済的な悩みが生じ、結婚や離婚を延期・中止し、またパンデミックに直面してカップルが妊娠の意思を変化させた可能性が考えられる。 「この変化によって、少子化はさらなる速く進む可能性があります。2021年6月以降、結婚や出生が逆に増加するかもしれず、今後さらなる研究が必要です」と、研究グループでは述べている。
全国の結婚数・離婚数・出生数の推移
1度目の緊急事態宣言中(2020年4~5月)に、結婚数と離婚数に減少が認められ、そこから8~10ヵ月後には、出生数の減少が認められた。
パンデミックに直面して、カップルが妊娠の意思を変化させたことが示唆される。
パンデミックに直面して、カップルが妊娠の意思を変化させたことが示唆される。

出典:慶應義塾大学、2022年
慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室Changes in marriage, divorce and births during the COVID-19 pandemic in Japan (BMJ Global Health 2022年5月15日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2023 SOSHINSHA All Rights Reserved.

「特定保健指導」に関するニュース
- 2022年11月01日
- 【新型コロナ】高齢化が世界一の日本でなぜ死亡率が低いのか? 日頃の医療や保健活動の積み重ねが成果
- 2022年10月31日
- 【新型コロナ】運動がワクチン効果を高める ウォーキングなどの適度な運動によりワクチン効果は3倍に
- 2022年10月31日
- 【新型コロナ】ネットやSNSの医療・健康情報は信用できる? ヘルスリテラシーを高める4つのポイント
- 2022年10月31日
- 高齢者の「オーラルフレイル」に対策 口の機能を維持してフレイルを予防 「カムカム健康プログラム」を開始
- 2022年10月31日
- 更年期の女性が体重を増やすのは宿命? 「対処方法はあります、あきらめないで」と更年期障害学会
- 2022年10月25日
- 【特定健診】健診結果から糖尿病リスクを予測するAIを開発 スマホアプリに搭載し生活改善を促す 大阪大学
- 2022年10月24日
- 【新型コロナ】不安やうつを予防するのに「健康的な食事」が効果 ストレスになるニュースを遮断するのも有効
- 2022年10月24日
- 「フレイル」をわずか5つの質問で簡便に判定 フレイル予備群も分かる 保健指導でも活用
- 2022年10月24日
- 「超加工食品」の食べ過ぎで大腸がんリスクが上昇 不健康な食事は肥満・メタボの原因にも
- 2022年10月24日
- 【子宮頸がん】HPVワクチンのキャッチアップ接種は必要としている女性に届く? 9年近くにわたった積極的勧奨の差し控え
最新ニュース
- 2023年01月25日
- 労働政策審議会安全衛生分科会「第14次労災防止計画案」提示 2種類の指標(数値目標)を設定
- 2023年01月24日
- 漬物やキムチなどの「発酵食品」が肥満やメタボを抑制 腸内菌の有益な働きを解明
- 2023年01月23日
- 【新型コロナ】感染に対する偏見が心理的負担をもたらす 働いている人の健康と生産性に障害が
- 2023年01月23日
- 【新型コロナ】感染約1年後も半数以上に後遺症が 倦怠感や味覚・嗅覚の異常、睡眠障害など
- 2023年01月23日
- 「受動喫煙」の悪影響は子供や孫の代にまで引き継がれる 危険なのはタバコの煙だけではない