ニュース

【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?

 新型コロナの1度目の緊急事態宣言中(2020年4~5月)に、結婚数と離婚数が減少し、2020年12月~2021年2月には出生数が減少したことが、慶應義塾大学の研究で明らかになった。

 この時期は、1度目の緊急事態宣言の8~10ヵ月後にあたり、その頃に妊娠を控えていたカップルが多かったと推測している。一方で、結婚数・離婚数・出生数については、いずれもコロナ禍での増加はみられなかった。

 コロナ禍により、将来に対する漠然とした不安や経済的な悩みが生じ、結婚や離婚を延期・中止し、またパンデミックに直面してカップルが妊娠の意思を変化させている可能性がある。

コロナ禍で結婚数と出生数が減少

 慶應義塾大学は、日本全国と地域別の人口動態統計を用いて、コロナ禍とそれ以前における結婚数・離婚数・出生数の推移を分析した。過去5年分のデータにもとづき、パンデミックが発生しなかった場合の結婚数・離婚数・出生数を予測した。

 その結果、1度目の緊急事態宣言中(2020年4~5月)に、結婚数と離婚数に減少が認められた。そこから8~10ヵ月後の2020年12月~2021年2月には、出生数の減少が認められた。パンデミックに直面して、カップルが妊娠の意思を変化させたことが示唆される。

 この20年、日本では結婚数・離婚数・出生数は減少傾向にある。こうしたパートナーシップや出生率の変化は、メンタルヘルスやウェルビーイング(心身と社会的な健康)、人口動態などにも大きな影響をもたらす。

 国外では、新型コロナのパンデミックにともない、結婚数や出生数の減少、離婚数の増加が報告されているが、日本でのコロナ禍でのこれらの状況は明らかにされていなかった。

 研究は、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室のガズナヴィサイラス研究員、野村周平特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「BMJ Global Health」に掲載された。

将来に対する漠然とした不安や経済的な悩み

 研究グループは、過去5年間をベースラインとして、新型コロナのパンデミックが発生しなかった場合に予測される仮想現実の数値と比較した。

 その結果、2019年5月と11月に、結婚数の"超過"が認められた一方で、2019年4月と10月、加えてパンデミック以降の2020年1月・4月・5月・7月・9月・2021年4月には、結婚数の"過小"が認められた。

 2019年の超過は、5月に元号が令和へと変わるタイミングで婚姻届を提出する「令和婚」によるもので、また11月は令和初のいわゆる「いい夫婦の日」が影響したと考えられる。

 2020年の過小の理由の一部は、令和元年に間に合うように結婚を早めたカップルが多かった可能性が考えられるが、1度目の緊急事態宣言(2020年4~5月)にも過小が認められた(それぞれ1日あたり150~476人、189~514人の減少)。

 これは、コロナ禍により将来に対する漠然とした不安や経済的な悩みが生じ、結婚を延期・中止したカップルが多かったためと考えられる。地域別の分析でも同じような減少が認められた。

パンデミック以降は妊娠を控えていたカップルが多い?

 離婚については、過去5年間をベースラインとして比較すると、2020年4月と5月には、離婚数の"過小"が認められた(それぞれ1日あたり6~70人、138~199人の減少)。また、2021年5月にも過小が認められた。"超過"はどの期間中にも認められなかった。

 地域別の分析でも、四国を除き全ての地域で同様のパターンが認められた(四国は超過・過小ともに認められなかった)。

 出生については、過去5年間をベースラインとして比較すると、2019年2月・3月・4月・6月・2020年12月・2021年1月・2月には、出生数の"過小"が認められた。地域別では、コロナ禍での過小は、関西と関東でしか認められなかった。

 2020年12月~2021年2月の過小は、おおよそ1度目の緊急事態宣言の8~10ヵ月後にあたり、その頃に妊娠を控えていたカップルが多かったと推測される(それぞれ1日あたり27~87人、137~205人、43~106人の減少)。全国または地域別いずれでも、"超過"は認められなかった。

コロナ禍により少子化が加速 コロナ禍が終われば結婚や出生は増える?

 今回の研究により、コロナ禍により、将来に対する漠然とした不安や経済的な悩みが生じ、結婚や離婚を延期・中止し、またパンデミックに直面してカップルが妊娠の意思を変化させた可能性が考えられる。

 「この変化によって、少子化はさらなる速く進む可能性があります。2021年6月以降、結婚や出生が逆に増加するかもしれず、今後さらなる研究が必要です」と、研究グループでは述べている。

全国の結婚数・離婚数・出生数の推移
1度目の緊急事態宣言中(2020年4~5月)に、結婚数と離婚数に減少が認められ、そこから8~10ヵ月後には、出生数の減少が認められた。
パンデミックに直面して、カップルが妊娠の意思を変化させたことが示唆される。

出典:慶應義塾大学、2022年

慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
Changes in marriage, divorce and births during the COVID-19 pandemic in Japan (BMJ Global Health 2022年5月15日)
>> 新型コロナ ニュース一覧へ
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶