睡眠不足が「内臓脂肪型肥満」の引き金に 睡眠を回復しても短期では元に戻らない
良い睡眠をとれないでいると内臓脂肪がたまりやすくなる
現代社会では、睡眠を十分にとれていない人が増えている。その背景として、シフト勤務をしていたり、夜間にテレビやスマホ、インターネット、ゲームなどを利用する人が増え、睡眠時間が短くなっていることなどがある。米国の成人の3分の1以上は睡眠不足だという。 これまでも、シフト勤務が多く夜間に働くことの多い人は、肥満や2型糖尿病のリスクが上昇するという報告がある。また、質の良い睡眠をとれないでいると、日中の運動量が減り、食欲を抑えられなくなり食べ過ぎてしまうことが知られている。 「研究では、若くて健康で比較的やせた人でさえ、睡眠時間が短いことは、食事のカロリー摂取量の増加、体重の増加、さらには内臓脂肪の蓄積に関連していることが示されました」と、メイヨークリニック心臓血管医療部のヴィレンド サマーズ教授は言う。 「そうした人は、十分な睡眠がとれるようになり回復すると、カロリー摂取量や体重は元に戻るものの、内臓脂肪は増加したままでした。つまり、質の良い睡眠をとれないことは、内臓脂肪の蓄積の引き金になり、睡眠を改善しても、短期的には内臓脂肪を減らすのは難しいということです」としている。 関連情報内臓脂肪は糖尿病や心血管疾患のリスクを高める
研究グループが実施したランダム化比較試験で、睡眠を十分にとれないでいると、食事でカロリーを摂り過ぎてしまい、腹部の脂肪面積が9%増加し、とくに内臓脂肪は11%増加することが示された。 内臓脂肪は、腹筋の内側、腸などのまわりにつく脂肪で、高血圧や2型糖尿病、さらには心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクを高めやすい。 また過剰な内臓脂肪は、体内でじわじわと持続的に起こる炎症である慢性炎症を引き起こし、動脈硬化の引き金となる。内臓脂肪型肥満の人は、新型コロナの感染により重症化しやすいことも知られている。 一般的に、男性は内臓脂肪がつきやすく、女性は皮下脂肪がつきやすい傾向があるが、女性も閉経後は、次第に内臓脂肪がたまりやすくなることが知られている。 日本では、腹囲が、男性は85cm以上、女性は90cm以上であると、内臓脂肪型肥満の可能性が高いと判定される。十分な睡眠をとれないと内臓脂肪が11%増加
肥満や糖尿病の人では睡眠障害はより深刻
「内臓脂肪の蓄積は進行性で、数年にわたり累積的に引き起こされます。質の良い睡眠をとれない期間が繰り返されると、内臓脂肪型肥満に潜在的に影響するおそれがあります」と、コヴァシン氏は指摘する。 「睡眠を改善するのが容易でない人も多くいます。そうした人に対しても、健康的な食事スタイルや運動量の増加など、より健康的な生活スタイルを指導する必要があります」と、サマーズ教授は言う。 「今回の研究は、健康な若者を対象としたものですが、すでに肥満やメタボがあったり、2型糖尿病の人では、睡眠障害はより深刻である可能性があります。今後さらに詳しい研究が必要です」としている。睡眠を制限する試験を実施
研究では、肥満ではない12人の健康な人を対象に、それぞれを入院患者として設定し、2回の21日間のセッションに参加してもらった。3ヵ月のウォッシュアウト期間を挟んで、参加者は、通常の睡眠をとる期間(対照群)と、睡眠が制限される期間(睡眠制限群)にランダムに割り当てられ、次のセッションでは反対に割り当てられた。 それぞれのグループは、研究期間を通して食事を自由にできるようにした。研究グループは、食事のカロリー摂取量を正確に測定し、カロリー消費量、体重、体組成、内臓脂肪とその分布、食欲などについても調べた。 最初の4日間は順応期間で、参加者はベッドで9時間眠ることができたが、次の2週間は、睡眠制限群は4時間の睡眠しか許されず、対照群は9時間の睡眠を維持した。続いて、両方のグループで3日間の回復期間も設けられ、9時間眠ることができた。 研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の心肺血液研究所の支援を受け行われたもの。研究成果は、医学誌「Journal of the American College of Cardiology」に掲載された。
Effects of Experimental Sleep Restriction on Energy Intake, Energy Expenditure, and Visceral Obesity (Journal of the American College of Cardiology 2022年4月5日)
本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。

