【オピニオン公開中】高齢者の特性に配慮した「エイジフレンドリー職場」を目指して
現在わが国においては、少子高齢化の進展に伴い、生涯現役社会の実現が求められており、高年齢労働者の活用が求められています。しかし、それと同時に高年齢労働者の労働災害への対策が課題となっています。
そこで、オピニオンコーナーにて「高齢者の特性に配慮した「エイジフレンドリー職場」を目指して」を掲載しました。高年齢労働者と企業が直面している状況の解説と、「エイジフレンドリー職場」を実現するうえで留意しなければならないことを、日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会ご所属の3名の先生にご紹介いただきました。
No.1 人生100年時代の労働者に向けた保健指導
(德弘雅哉先生/三菱自動車工業株式会社 統括産業医)
少子高齢化の進展による人材不足は深刻
日本において、少子高齢化が加速しています。総務省の予測によると、今後、高齢者の増加幅は落ち着くものの、現役世代の減少は加速するようです。
これらの背景から、堅調な社会経済の維持・発展はすでに危機的な状況となっています。社会を支える側である現役世代(≒生産年齢人口)の減少は現在も深刻ですが、その影響はより顕著となるでしょう。
「労働市場の未来推計2030」によれば、2030年の人手不足は実に644万人、新型コロナウイルス流行や緊迫した世界情勢などを反映すると、さらに増加する可能性があります。
同研究では人手不足の解消として「働くシニアを増やす」「働く女性を増やす」「働く外国人を増やす」「生産性を上げる」の4点が提案されており、「働くシニアを増やす」解決策は人手不足解消の2番手に挙げられています。
人手不足に対しては国も対策をとっており、働き方改革などもその一環とされますが、即効性のある解決策はなかなか出てきていないのが現状です。
No.2 職場における高年齢労働対策
(横田直行先生/三井化学株式会社 大牟田工場 専属産業医)
化学工場と高年齢労働
私は2012年より化学工場の専属産業医として勤務しています。化学工場での現場社員の働き方は、基本的にコンピューター機器による監視業務(デスクワーク)とプラント(化学装置設備群)のパトロールが中心で、身体的に負荷の強い重筋労働などの作業はあまりなく、高年齢労働者にとって比較的働きやすい職場といえると思います。
2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、最も多い時で、社員全体の約3割にあたる300名以上が60歳以上で働き続けてきました。その中で得た経験と具体的な2つの事例を通して、高年齢労働者が働きやすい職場についてのポイントを考えてみたいと思います。
No.3 健康診断データから考えるエイジマネジメント
(谷 直道先生/般財団法人日本予防医学協会 営業統括部 健康情報分析課)
健診データから見えてくるリスク
中高年労働者の職場離脱リスクの最たるものに、虚血性心疾患や脳血管障害などのいわゆる生活習慣病の発症が挙げられます。特に、これら生活習慣病の大きなリスクとされているメタボリックシンドローム対策は現代の労働衛生の大きな課題です。
では、パソコンやタブレットといったさまざまなデバイスが登場し、日々のライフスタイルや働き方が大きく変化した昨今、健診結果はどのように変化してきたのでしょうか?
健診結果のうち、身長と体重から得られる体格指数であるBody Mass Index(BMI)を例にとってみてみましょう。まずは、1990年に40歳だったグループのBMIと2020年に40歳だったグループのBMIを男女別に比較してみると、残念ながら、男性では1990年よりも2020年の40歳のほうが若干高くなっている傾向が窺えます。一方で、生活習慣に気を付けている方が多いのでしょうか、女性はほとんど変わりません。
日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会とは
エイジマネジメント研究会は、エイジマネジメントに関する学術研究とその実務の振興を目的に日本の高齢労働研究の泰斗である産業医科大学名誉教授神代雅晴先生を中心として(公社)日本産業衛生学会の中に2008年設立されました。構成メンバーは現在140名程度で職種も多岐にわたっています。
エイジマネジメントとは、「労働の場における加齢と健康に関する課題や世代ごとの特徴に合わせた産業保健活動を行うこと」を意味し、高年齢労働者が暦年齢を意識することなくいきいきと働き続けるための健康管理の在り方や労務管理の在り方の発展、労働適応能力などの研究を通しての高齢労働市場と高齢労働者の雇用機会の拡大促進などを目的として活動しています。直近では、順天堂大学(スポーツ健康科学部)山田泰行先生による特別講演「テレワーク時代におけるエイジマネジメント」などを開催(2021年11月14日)いたしました。
保健指導リソースガイド「オピニオン」について
保健指導の現場で活躍する保健師・管理栄養士など、各領域に精通した専門職の方にそれぞれが取り組んでいる活動の現状や課題、今後の在り方などについての意見・提言を、連載でご紹介いただくコーナーです。

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