ニュース
日本人高齢者の認知機能は向上している 認知機能障害が減少 国立長寿医療研究センター
2022年06月27日

国立長寿医療研究センターは、地域在住高齢者を対象に老化・老年病を研究しているコホート研究のデータを統合し、近年の日本人高齢者の認知機能が向上している可能性を示した。
認知機能障害の高齢者の割合は男女ともに減少
研究は、国立長寿医療研究センターの鈴木隆雄理事長特任補佐をはじめとする「長寿コホートの総合的研究(ILSA-J)」グループによるもの。 ILSA-Jは、地域在住高齢者を対象に老化・老年病を研究しているコホート研究のデータを統合し、日本人高齢者の健康水準とその推移を明らかにすることを目的とした多施設共同研究。2022年5月現在、全国の16のコホート研究が参加している。 研究グループは、各コホートが2010年と2017年に調査した認知機能検査(Mini-Mental State Examination 2)の代表値(30点満点中、認知機能障害が疑われる23点以下および、認知機能が良好な28点以上の性・年代別の割合)を収集し、統合解析を行った。2010年には8,575人、2017年には6,089人の高齢者のデータが含まれている。 その結果、2010年から2017年にかけて、認知機能障害が疑われる高齢者(MMSE得点23点以下)の割合は、男女ともに減少した(75~79歳の女性を除く)。一方、認知機能が良好な高齢者(MMSE得点28点以上)の割合は、男女ともにどの年代でも増加した。
認知機能障害が疑われる高齢者の割合は男女ともに減少している
2010年、2017年の認知機能障害が疑われる者(MMSE23点以下)の割合の推定値
2010年、2017年の認知機能が良好な者(MMSE28点以上)の割合の推定値


出典:国立長寿医療研究センター、2022年
急速な高齢化にともない、世界的に認知症の患者数が増大すると推計されている。一方、欧米を中心に、最近20年ほどの間に認知症発症率が減少しているという報告もあり、日本でも認知症や高齢期の認知機能の時代的推移に関する研究が求められている。
ILSA-Jではこれまでに、日本人高齢者の歩行速度や握力などの健康指標の向上、身体的フレイルの頻度の減少を報告してきたが、今回の多施設共同研究では、日本人高齢者で、寿命の延伸にともない、身体機能だけでなく、認知機能も向上している可能性が示唆された。
ILSA-J参加コホートは、2022年5月現在で、以下の通り――。NCGG-SGS(国立長寿医療研究センター)、NILS-LSA(国立長寿医療研究センター)、JAGES(国立長寿医療研究センター)、草津町縦断研究(東京都健康長寿医療センター)、鳩山コホート研究(東京都健康長寿医療センター)、板橋お達者健診(東京都健康長寿医療センター)、東京MoCA-J(東京都健康長寿医療センター)、お達者健診(東京都健康長寿医療センター)、高島平スタディ(東京都健康長寿医療センター)、ROADスタディ(東京大学)、柏スタディ(東京大学)、嬬恋村スタディ(桜美林大学)、米原コホート研究(筑波大学)、垂水研究(鹿児島大学)、CIRCS(大阪大学)、FESTA Study(兵庫医科大学)。 国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター 老化疫学研究部
Temporal trends in cognitive function among community-dwelling older adults in Japan: Findings from the ILSA-J integrated cohort study (Archives of Gerontology and Geriatrics 2022年5月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
- 2025年07月28日
- 【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月22日
- 高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?