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「低炭水化物ダイエット」は実は危険? 毎日食べると確実に健康に良い食品が判明 欧州心臓病学会

 低炭水化物ダイエットは、体重減少や糖代謝の改善などの効果があると、人気が高い。

 しかし、あることに注意しないと、かえって死亡リスクを高め、安全ではないという。

 ナッツ類やコーヒーが心臓病や脳卒中のリスクを低下するという調査結果も発表された。

炭水化物を減らして動物性脂肪を増やすと危険

 血糖値を上げやすいのは、すぐエネルギーになりやすいごはんやパン、砂糖などの、炭水化物(糖質)の多い食物だ。「低炭水化物ダイエット」は、その炭水化物を制限する食事スタイルで、炭水化物の摂取比率や摂取量を低く抑えるのが特徴となる。

 低炭水化物ダイエットは近年、体重減少や糖代謝の改善などの効果があるとして、その健康効果が注目されている。効果があるという研究が、海外で報告されて以来、2型糖尿病や肥満症の食事療法でも注目されてきた。

 しかし、欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表された大規模な研究によると、不適切な低炭水化物ダイエットは、かえって死亡リスクを高め、安全ではないという。

 「低炭水化物ダイエットにより、糖質の摂取量を減らした代わりに、高脂肪の食事、とくに動物性脂肪を増やしてしまうと、かえって体には害になると考えられます」と、ポーランドのウッチ医科大学心臓病学部のマチェイ・バナッハ教授は言う。

 「低炭水化物ダイエットにより、食物繊維や野菜の摂取量を減らし、野菜などに含まれるビタミンやミネラル、抗酸化物質などが足りなくなり、代わりにとくに赤身肉や加工肉といった動物性食品を増やし、体に悪いコレステロールや飽和脂肪酸の摂取量を増やしてしまうのは大変に危険です」としている。

間違った低炭水化物ダイエットは死亡リスクを高める

 肥満は、心血管疾患、2型糖尿病、高血圧、がんなどの慢性疾患のリスクを高めるので、世界的に主要な健康課題になっている。体重を健康的に管理するために、低炭水化物の食事、高タンパクの食事、低脂肪の食事など、さまざまな食事法が提唱されているが、その効果や安全性については多くの議論がある。

 研究グループは、1999年~2010に実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万4,825人の医療データをもとに、低炭水化物ダイエット、全死因の死亡リスク、心筋梗塞などの冠状動脈性心疾患、脳卒中などの脳血管疾患、がんによる死亡リスクとの関連を解析した。

 その結果、炭水化物の摂取量がもっとも少ないグループは、もっとも多い人にグループに比べ、平均6.4年間の追跡期間に、全死因による死亡リスクが32%上昇した。さらに死亡リスクは、冠状動脈性心疾患では51%、脳血管疾患では50%、がんでは35%それぞれ上昇した。

 合計44万7,506人を対象に、平均して15.6年追跡して調査した7件の前向きコホート研究の解析でも、低炭水化物ダイエットは、総死亡リスクを15%、心血管疾患による死亡リスクを13%、がんによる死亡リスクを8%、それぞれ上昇させるという結果になった。

 「ご自分の体重や内臓脂肪、血糖値などを気にしている人は、健康に良い食事スタイルについて、かかりつけの医師や栄養士に相談して決めることをお勧めします」と、バナッハ教授は述べている。

ナッツ類やコーヒーが心臓病や脳卒中のリスクを低下

週に2回以上ナッツ類を食べると心臓病リスクが低下

 欧州心臓病学会(ESC)学術集会では、意外な食品が、心臓病や脳卒中のリスクを低下させ、健康増進に役立つという研究も発表された。

 ひとつは、アーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツ・ピスタチオ・ヘーゼルナッツなどのナッツ類だ。

 週に2回以上ナッツ類を食べていると、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患による死亡リスクは17%低下するという。

 「ナッツの多くは、脂肪を多く含み高カロリーですが、そのほとんどは体に良い不飽和脂肪酸です」と、イランのイスファハン心臓血管研究所のヌーシン モハマディファード氏は言う。

 「ナッツには、心臓の健康に役立つオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸、タンパク質、ミネラル、ビタミン、食物繊維、植物ステロール、ポリフェノールなども含まれています。欧州や米国の研究の多くは、ナッツを食べる習慣が心血管の保護につながることを示しています」としている。

心血管疾患による死亡リスクは17%低下

 この研究は、イラン人のナッツ摂取と心血管疾患と死亡のリスクとの関連を調べたもの。心血管疾患の病歴のない35歳以上の成人5,432人を対象に、クルミ・アーモンド・ピスタチオ・ヘーゼルナッツなどのナッツ類の摂取量を調査した。

 研究グループは、参加者やその家族に、心血管イベントの発生と死亡について、2年ごとにインタビュー調査をし、12年間追跡した。冠状動脈性心疾患、脳卒中、全心血管疾患、あらゆる原因の死亡、心血管疾患による死亡について調べた。

 その結果、週に2回以上ナッツを食べている人は、2週間に1回しか食べない人に比べて、心血管疾患による死亡リスクは17%低下した。

 「欧州心臓病学会の食事ガイドラインでは、塩分を加えていない新鮮なナッツ類を1日に30g食べることが、健康的な食事の特徴のひとつとして挙げられています。これは、片手で軽く一盛りするくらいの量で、小腹を満たすような量です」と、モハマディファード氏は言う。

 「ナッツは不飽和脂肪が多く含まれ、エネルギー密度が高いので、食べ過ぎは勧められません。また、ナッツの健康にもたらす効果を正確に知るために、ランダム化比較試験が必要となります。しかし、新鮮なナッツ類を食べる頻度を増やす習慣は、おそらくほとんどの人に勧められます」としている。

コーヒーを1日3杯まで飲むと心臓病や脳卒中のリスクが低下

 健康上のベネフィットをもたらす、もうひとつの意外な食品は、コーヒーだ。研究では、コーヒーを1日3杯まで飲んでいると、脳卒中や致命的な心臓病のリスクが低下することが示された。

 「今回の研究では、10年~15年の追跡調査により、1日にコーヒーを0.5~3杯飲む習慣は、脳卒中、心血管疾患による死亡、およびあらゆる原因による死亡のリスクの低下と関連していることが示されました」と、ハンガリーのセンメルワイス大学心臓血管センターのジュディット サイモン氏は言う。

 コーヒーは世界でもっともよく飲まれている飲料のひとつだが、コーヒーを飲む習慣が心臓血管の健康におよぼす長期的な影響については、あまりよく分かっていない。

 そこで研究グループは、遺伝的素因やさまざまな環境素因が健康にもらたす影響を調査している、大規模な研究である英国バイオバンクに参加している、平均年齢56.2歳の46万8,629人のデータを解析した。

心血管疾患の死亡リスクは17%、脳卒中は21%減少

 その結果、コーヒーをほとんどの飲まないグループに比べて、少量から中程度飲んでいるグループは、全死因による死亡のリスクが12%低く、心血管疾患による死亡のリスクは17%低く、脳卒中のリスクは21%低いことが明らかになった。

 コーヒーを1日に0.5~3杯飲んでいる、少量から中程度の人は58.4%を占め、3杯以上飲んでいる、高程度の人は19.5%を占めた。

 「1日にコーヒーを最大3杯まで飲む習慣は、心血管の良好な転帰と関連していることが示唆されました。根底にあるメカニズムを解明するためには、さらに研究が必要になります」と、サイモン氏は指摘する。

 研究グループは、3万650人を対象に心臓磁気共鳴画像法(MRI)の検査を行い、毎日のコーヒー摂取量と心臓の構造や機能との関連について分析する研究も行った。

 「画像解析では、コーヒーを飲む習慣のない人に比べ、毎日飲んでいる人は、心臓の機能がより健康的で、加齢が心臓におよぼす有害な影響が逆転されている傾向が示されました」と、サイモン氏は述べている。

 「毎日のコーヒーの摂取量が多い場合でも、心血管系の有害な転帰や全死因死亡リスクの上昇と関連していなかったため、コーヒーを毎日飲む習慣はおそらく安全だとみられます」としている。

Low carbohydrate diets are unsafe and should be avoided, study suggests (欧州心臓病学会 2018年8月28日)
Eating nuts linked with lower risk of fatal heart attack and stroke (欧州心臓病学会 2019年8月31日)
Light-to-moderate coffee drinking associated with health benefits (欧州心臓病学会 2021年8月28日)
2016 European Guidelines on cardiovascular disease prevention in clinical practice (European Heart Journal 2016年5月23日)
[Terahata]
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