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熱帯夜による「睡眠障害」の被害は熱中症に匹敵 エアコンが適切に使われていない可能性が
2022年10月11日
東京⼤学や岡⼭⼤学などは、⽇本の夏の都市部での住⺠の睡眠の質を調査し、1日の最低気温が25℃を上回ると、睡眠は悪化し、睡眠障害の被害(健康ロス)は、熱中症の死亡(死亡ロス)に匹敵することを明らかにした。
名古屋市では、暑さによらず3割強の人が睡眠障害にかかっているとみられるが、日最低気温が24.8℃以上になると、睡眠障害になる人の割合が増加し、4割に達することが示された。
また、5年間の睡眠障害による被害は、熱中症の被害とほぼ同じであることも分かった。
調査を行った名古屋市は、エアコンの普及率が95%を超えるが、熱帯夜でもエアコンが適切に使⽤されていない可能性がある。エアコンの適切な使い⽅をアピールすることも必要としている。
夜の暑さ対する対策が必要
東京⼤学や岡⼭⼤学などは、⽇本の夏の都市部での住⺠の睡眠の質を調査し、1日の最低気温が25℃を上回ると、睡眠は悪化し、睡眠障害の被害(健康ロス)は、熱中症の死亡(死亡ロス)に匹敵することを明らかにした。 死亡数や救急搬送数といった統計のない、熱帯夜による睡眠障害の被害を定量化し、熱中症の死亡ロスに匹敵することを明らかにした。夜の暑さに対する対策が必要であることが、あらためて示された。 調査を行った名古屋市は、エアコンの普及率が95%を超えるが、熱帯夜でもエアコンが適切に使⽤されていない可能性がある。エアコンの適切な使い⽅をアピールすることも必要と考えられる。 研究グループは今回の研究で、毎⽇の睡眠の質を計測する⾃記式質問票を開発した。死亡ロスと健康ロスを、ひとつの指標で扱える障害調整⽣存年(DALY)で、熱帯夜による睡眠障害として定量化したのは世界ではじめてだという。1日の最低気温が25℃を上回ると睡眠は悪化
その結果、研究グループは、夏の名古屋市⺠の睡眠を調査・解析し、1日の最低気温が25℃を上回ると暑さによる睡眠障害が増加し、その被害は熱中症の死亡に匹敵することを明らかにした。 地球温暖化による気候変動で、気温は上昇し続けており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書では、今後はさらに気温が上昇し、極端な暑さが増加することが予測されている。 気温の上昇は、デング熱やマラリアなどの感染症だけではなく、直接の熱曝露を通じて、熱中症や睡眠障害を引き起こす。体が⾼温に曝されると熱中症になる。また、周囲の温度が睡眠に適さない場合、睡眠が乱される。 世界保健機関(WHO)は、直接の熱曝露による健康被害は、デング熱やマラリアなどの感染症よりも⼤きくなると推定している。しかし、睡眠障害は、WHOの直接の熱曝露の影響には含まれていない。 熱帯夜による睡眠の悪化や睡眠障害については、さまざまな⽅法で明らかにされてきたが、熱中症のような他の被害と比べられない指標で評価されていたため、健康被害としての実態はよく分かっていなかった。エアコンが適切に使⽤されていない可能性が
名古屋市では、暑さによらず3割強の人が睡眠障害にかかっているとみられるが、日最低気温が24.8℃以上になると睡眠障害にかかる人々の割合が増加し、4割に達することが示された。 また、この関係と過去の観測気温を⽤いて、名古屋市の2010~2014年の睡眠障害による被害を評価したところ、名古屋市で5年間に発⽣した熱中症の被害とほぼ同じであり、DALYを⽤いると毎年約100年~200年の被害が出ていることが分かった。 「死亡数や救急搬送数といった統計が存在しない熱帯夜による睡眠障害の被害が定量化され、熱中症に匹敵することが明らかになったことで、夜の暑さについても対策の必要性が認識されることが期待されます」と、研究グループでは述べている。 「今後、本研究で開発された質問票と解析⼿法を⽤い、世界のさまざまな都市の睡眠障害の評価を進めていくことで、睡眠障害の実態を把握していく予定です」。 さらに、「エアコンの普及率が95%超と⾼い名古屋市で、熱帯夜による睡眠障害が多く発⽣していることは、エアコンが適切に使⽤されていないことが理由として考えられます。エアコンの適切な使い⽅に関する研究も必要かもしれません」としている。
日最低気温と睡眠障害に罹っている人々の割合の関係(PSQIによる補正後)
網かけしていある範囲が熱帯夜による睡眠障害を示す 2010~2014年の名古屋市での熱帯夜による睡眠障害と熱中症の健康被害の比較
5年間の睡眠障害による被害は熱中症の被害とほぼ同じ
網かけしていある範囲が熱帯夜による睡眠障害を示す 2010~2014年の名古屋市での熱帯夜による睡眠障害と熱中症の健康被害の比較
5年間の睡眠障害による被害は熱中症の被害とほぼ同じ
出典:岡山大学、2022年
熱帯夜による睡眠の悪化や睡眠障害を調査
研究グループは今回、「障害調整⽣存年(DALY)」を⽤いて、睡眠障害の被害の評価に取り組んだ。 DALYは、平均寿命に、健康ではない人の障害の程度や期間を加味して調整した生存年数。80歳まで⽣きるべき⼈が50歳で死ぬと30年のロスと計算し、深刻さの度合いが0.3の病気に10年間罹ると3年のロスと計算する。 研究グループは今回、DALYでの評価が可能となるような、毎⽇の睡眠の質を計測する⾃記式質問票と回答結果の解析⼿法を開発した。 1ヵ月の睡眠の質を評価する⾃記式質問票であるピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)をもとに、前⽇の睡眠の質を評価する⾃記式質問票である毎⽇の睡眠の質のための睡眠質問票の改訂版(SQIDS2)を開発した。 質問票である「PSQI」と「SQIDS2」を⽤いて、2011と2012年の夏に、名古屋市の住⺠それぞれ550人以上の1ヵ月および毎⽇の睡眠の質を計測した。 「SQIDS2」で得られた毎⽇の睡眠の質を観測された気温と⽐較し、その結果を「PSQI」で得られた1ヵ月の睡眠の質で補正することで、⽇最低気温とDALYで評価可能な睡眠障害の関係を得た。 研究は、東京⼤学⼤学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻の井原智彦准教授、岡⼭⼤学学術研究院環境⽣命科学学域の鳴海⼤典教授、関⻄福祉科学⼤学健康福祉学部健康科学科の福⽥早苗教授、産業技術総合研究所環境創⽣研究部⾨の近藤裕昭客員研究員、同安全科学研究部⾨の⽞地裕研究部⾨⻑によるもの。研究成果は、「Sleep and Biological Rhythms」にオンライン掲載された。 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻岡山大学学術研究院環境生命科学研究科
Loss of disability-adjusted life years due to sleep disturbance caused by climate change (Sleep and Biological Rhythms 2022年9月24日)
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