10月10日は「転倒予防の日」
小売業や社会福祉施設に急増する「行動災害」に注意を
―「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」より
10月10日というと、何の日を思い浮かべるだろうか。「体育の日」(1999年まで)や「目の愛護デー」、保健衛生に関わる人たちにとっては「世界メンタルヘルスデー」として多く知られているだろう。日本記念日協会によると、1年のうちで最も多くの記念日が登録されているのが「10月10日」だという。
日本転倒予防学会では、10月10日を 「転倒予防の日」と制定している。昨年からは厚生労働省と消費者庁が協力し、国民に対して転倒予防を呼び掛け始めた。これは職場での転倒による労働災害が急増していることに呼応したものだ。
そして今年5月には厚生労働省に「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」が設置され、その予防対策の在り方や具体的な対策の方針について議論が交わされ、8月にその中間整理案も提示されている。
求められる「行動災害」への対策
近年、職場での転倒や腰痛などによる労働災害が増加傾向にある。特に顕著な業種が小売業や社会福祉施設等で、対策の見直しが喫緊の課題となっている。今年2月にはそれらの労働災害を予防する取り組みを推進するため、「小売業、介護施設を中心として増加する行動災害の予防対策の推進」の通知(2022年2月9日付け基安発0209第1号)も発出された。
それによって今年度からは、食品スーパー、総合スーパーなど多店舗展開企業および複数の社会福祉施設を展開する法人、関係行政機関を構成員とする「+(プラス)Safe協議会」を都道府県労働局ごとに組織し、本社・法人本部主導による自主的な安全衛生管理が強化された。一方、大規模ショッピングセンターでは、施設管理者を通して安全衛生への取り組みが強化されることとなった。
また、厚生労働省は、今年5月に「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」を設置し、規制の見直しも念頭に置いた検討も始まった。
議論の中心は、増加している「転倒」や「動作の反動・無理な動作」といった「行動災害」について。これらは骨折や後遺症を伴う重大なものもみられ、対策を講じる必要のある重要な労働災害である。しかし、その発生メカニズムは労働者の個人要因の影響も大きいため、従来型の労働災害と同様の対策では十分な成果を上げることができていない状況にあった。そこで、関係者や有識者の参画を得て、転倒防止・腰痛予防対策の在り方および具体的な対策の方針等について討議するため設置された。
8月30日に開催された第4回検討会では、検討事項の中間整理案が提示され、おおむね了承。来年度から始まる「第14次労働災害防止計画」(5か年)に反映される予定だ。検討会では、まだ議論が尽くされていない一部の事項について、今後も検討を継続するとしている。
労働災害で最も多いのが「転倒」
今年5月30日に厚生労働省が公表した2021年の「労働災害発生状況」によると、死亡者数、休業4日以上の死傷者数ともに、長期的には減少傾向にある。しかし、この20年間をみてみると死傷者数は横ばいが続き、ここ数年に限ると増加傾向にある。
図1 労働災害による死亡者数、死傷者数の推移
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業種別の死傷災害の推移をみると、製造業や建設業などの第二次産業では災害が減少しているものの第三次産業、特に「小売業」「社会福祉施設」では災害が増加している。
さまざまな業界の中でも、労働災害の深刻度が特に増しているのが介護等の社会福祉施設だ。検討会で示されたデータでは、2017年と2021年の比較で、休業4日以上の死傷者数の割合は、社会福祉施設で37.8%増。百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアやそのほか衣料品や医薬品、家電製品を扱う専門店など多種多様な小売業が20.6%増と続いている(2022年1月速報値)。
図2 業種別死傷災害の推移
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しかも「事故の型別労働災害発生状況」をみると、休業4日以上の死傷者数で最も多いのが「転倒」、次いで「墜落・転落」「動作の反動、無理な動作」となっている。
労働災害が増加している小売業、社会福祉施設で多数報告されている「転倒」と「動作の反動、無理な動作」をあわせると4割近くにもなる。
図3 令和3年 事故の型別労働災害発生状況
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20~30年前は「はさまれ」「墜落」といった設備に起因するものが多かったが、ここ数年は「転倒」「動作の反動」(腰痛などの原因になるもの)のような作業方法などに起因する災害が増加。
これら労働災害は、労働者の個人要因の影響も大きいため、従来型の労働災害と同様な対策では、十分な成果を上げることができない状況にある。
図4 「事故の型」のトレンド
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