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保健指導を受けた人は自分の食事は健康的になったと過大評価しがち 実際には大きな変化はなし

 保健指導で食事のアドバイスを受けた人は、体重を減らすために生活スタイルを変えると、自分の食生活は健康的になったと過大評価してしまう傾向があるという調査結果が発表された。

 12ヵ月の調査の過程で、食事スタイルがどれだけ改善されたかについて、多くの人の自己評価は不正確であることが示された。ほとんどの人は、自分の食事の質が改善したと考えていたが、客観的な評価にもとづくと、実際には大きな変化はなかった。

 研究は、米国心臓学会(AHA)の2022年度年次学術会議で発表されたもの。食事や栄養についての認識と現実のギャップを解明することで、より効果的な食事指導を行えるようになる可能性があるとしている。

成人の半数は体重を減らそうと毎年努力

 多くの人は、保健指導で食事のアドバイスを受けて、体重を減らすために生活スタイルを変えると、自分の食生活は健康的になったと過大評価してしまう傾向があるという調査結果が発表された。しかし、客観的な評価にもとづくと、実際には大きな変化はないことが多いという。

 「一般的に、野菜や果物が健康的な食品であることを知っている人は多いのですが、医療関連の専門職や研究者が考えている健康的でバランスのとれた食事スタイルと、一般の人々がイメージしている健康的な食事スタイルとでは、隔たりがある可能性があります」と、バーバード公衆衛生大学院疫学部およびマサチューセッツ総合病院一般内科のジェシカ チェン氏は指摘している。

 米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、米国の成人の半数近くは、体重を減らそうと毎年努力しており、果物や野菜などのサラダをもっと多く食べようと望んでいる人は大多数に上る。

 確かに、2021年に発表された米国心臓学会(AHA)の食事ガイドラインでは、心臓と全身の健康、さらには長寿を実現するために、次のような健康的な食事スタイルが勧められている。

米国心臓学会(AHA)が推奨する健康的な食事スタイル

  • さまざまな野菜や、糖質の少ない果物を食べる。
  • 精製された穀物ではなく全粒穀物を選ぶ。
  • 良質なタンパク質源を選ぶ。
  • 乳製品はなるべく、全脂肪のものの代わりに、無脂肪や低脂肪のものを使う。
  • 肉を食べるときは、脂肪が少なめの赤身肉を選ぶ。
  • 食用油は、動物性のものの代わりに、不飽和脂肪酸の含まれる植物性のものを使用する。
  • 超加工食品よりも、加工が最小限の食品を選ぶ。
  • 糖質や脂肪を加えた加工食品や飲料は最小限に抑える。
  • なるべく塩分が添加されていない食品を選ぶ。
  • アルコールを飲むときは、飲み過ぎないようにする。

1対1の食事指導と自己管理により食事は健康的になるかを検証

 研究には、ペンシルバニア州ピッツバーグ地域で、体重を減らそうと取り組んでいる、35~58歳の成人116人が参加した。

 参加者は、栄養士と1対1で、食事や栄養について話し合い、その後はFitbitアプリを利用し、毎日食べたり飲んだりした食品すべてについて1年間記録した。さらに、体重を毎日測定し、Fitbitデバイスを使用して身体活動についても計測した。

 研究グループは、参加者が食べたと報告した食品の種類にもとづき、研究の開始時と終了時に、健康的な食事についての指数である「HEI」スコアを測定した。この食事スコアは、米政府が作成した成人向け食事ガイドラインに、食事内容がどの程度合致しているかを評価するための尺度となる。

 参加者は、各時点で2日間、24時間の食品内容を思い出すことが求められた。食事スコアは、野菜、果物、全粒穀物、精製穀物、肉、魚介類、ナトリウム、脂肪、糖質などについて、さまざまな食品を食べる頻度にもとづき評価するためのもの。0~100点で示され、スコアが高いほど健康的な食事であることを示している。

 参加者は、食事についての自己評価を調べるため、研究の最初と最後に食事の質を自己採点した。そのスコアも、HEIのコンポーネントにもとづき0~100点で示された。

 参加者の研究開始時の食事の自己評価は「振り返り」であり、最後の自己評価との違いは、認識している「食事スタイルの変化」を示している。研究グループは、「HEI」スコアと参加者が認識しているスコアとの差が6ポイント以下であれば、「よく一致している」と評価した。

4人に3人は自分の食事は健康的になったと過信

 その結果、参加者の4人に1人は、自己評価している食事スコアと実際の食事スコアとのあいだに、良好な一致を示した。

 一方で、4人に3人はスコアの一致率が低く、実際の食事スコアよりも自己評価している食事スコアの方が高い、つまり、自分の食生活は健康的になったと過信している人が多いことが示された。

 なお、自己評価スコアの平均は67.6点で、「HEI」スコアの平均は56.4だった。

 さらに、12ヵ月間の食事スコアの変化をみたところ、自己評価による食事スコアと、研究グループが計測した客観的な「HEI」スコアの変化とのあいだに良好な一致が示されたのは、参加者の10人に1人だけだった。

 研究の最後には、研究グループが計測したスコアにもとづくと、参加者の食事の質は平均して1ポイント改善していた。一方、参加者の自己評価は18ポイント改善していた。

 ここでもやはり、生活改善に取り組んだ結果、多くの人が自分の食事は健康的になったと過大評価していることが示された。

栄養士や専門職による食事指導には改善の余地が

 「体重を減らし、体重コントロールに取り組んでいる人と、減量や栄養摂取についての目標を達成しようとしている医療従事者とでは、食事に対する理解に予想以上のギャップがあることが示されました」と、チェン氏は言う。

 「これは、栄養士やヘルスコーチなどの医療従事者や専門職による食事指導に改善の余地がある可能性が高いことを示しています。健康的で持続可能な栄養改善を行う方法を開発し、適切で具体的な情報を提供していくことが必要です」。

 「今後の研究では、人々の食事の自己評価と客観的な食事の質の測定とのあいだにあるギャップを埋めるために、どのような対策が役立つかを究明していくことを望んでいます」としている。

 なお、今回の研究の限界点としては、参加者の多く(79%)は女性であり、白人が多かった(84%)ことを挙げている。そのため、調査結果は他の集団には同じようには当てはまらない可能性があるとしている。

Study finds dieters may overestimate the healthiness of their eating habits (米国心臓学会 2021年10月31日)
The American Heart Association Diet and Lifestyle Recommendations (米国心臓学会 2021年11月1日)
New federal guidelines may lift dietary cholesterol limits (米国心臓学会 2017年11月13日)
[Terahata]
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