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健康管理アプリは医療者や専門職による支援・サポートが加わると効果的 アプリのみだと効果なし

 健康管理に役立つとされているスマホアプリは、医療従事者や専門職による適切な支援やサポートが加わると、効果を期待できるという、リアルワールド研究の結果が発表された。アプリのなかには有用なものもあるものの、アプリのみでは効果をあまり得られないことも示された。

 医療従事者による行動変容理論にもとづく生活スタイル介入に、アプリの利用を組み合わせると、食事の質が改善し、腹部脂肪が減少し、インスリン抵抗性の進展を防ぐ効果が得られた。

健康管理アプリにより肥満や糖尿病のリスクを軽減できるかを検証

 東フィンランド大学の研究で、肥満や糖尿病のリスクの高い人を対象に、健康管理のためのスマホアプリをベースに、集団カウンセリングによる生活スタイル介入を1年間行うと、食事の質が改善され、腹部脂肪とインスリン抵抗性が減少することが示された。

 研究は、フィンランドで、食事・運動・睡眠などの生活スタイルへの介入と、職場環境の整備による、糖尿病の予防に焦点をあて実施されている「StopDia」研究の一環として行われたもので、プライマリヘルスケアで実施される集団ベースの生活スタイル介入が糖尿病の危険因子に与える影響がはじめて調査された。

 肥満や糖尿病のリスクが高いフィンランドの18歳~74歳の成人2,907人(男性 20%、女性 80%)を対象としたこの研究では、食事・運動・睡眠・アルコールなどの400以上の項目で生活スタイル改善を支援するアプリ「BitHabit」が使用された。

 参加者のBMI(体格指数)の平均は31.1で、正常体重が12%、過体重が34%、肥満が54%だった。血糖代謝が正常だったのは44%で、空腹時血糖異常(IFG)は36%が有しており、IFGと耐糖能異常(IGT)の両方を有していたのは14%。

 なお、「BitHabit」アプリは、「StopDia」研究の一環として、東フィンランド大学およびフィンランド保健福祉研究所が協力し、フィンランドのVTT技術研究センターによって開発されものだという。

 研究に先立ち、看護師・栄養士・運動指導者などの約100人のヘルスケア専門家が、いくつかの行動変容理論にもとづく集団カウンセリングの訓練を受けた。

「アプリ+集団教育」により腹囲周囲径・空腹時インスリン値は低下

 参加者を、(1) アプリのみを使用する群、(2) アプリに加え集団カウンセリングを受ける群、(3) どちらも行わず従来の治療を受ける対照群、に無作為に振り分けて比較した。

 研究の目的は、減量にとどまらず、食事の質を改善し、身体活動を増やし、座位時間を減らし、睡眠を改善し、アルコール摂取量を減らし、禁煙を促すことで、肥満や糖尿病のリスクを減らすことだった。

 その結果、1年間の介入により、体重・BMI・空腹時血糖値・ブドウ糖負荷2時間値の変化は全群で差がでなかったものの、腹囲周囲径はアプリ+カウンセリング群では対照群に比べより減少した(-1.8cm 対 -1.3cm、p=0.028)。空腹時インスリン値はアプリ+カウンセリング群では対照群に比べより低下し(1.0mU/L 対 0.5mU/L、p=0·042)し、アプリのみの群では変わらなかった(1.0mU/L 対 0.0mU/L、p = 0.033)。

 さらに、アプリ+カウンセリングの群は、より食生活の質が向上し、とくに野菜と脂肪の摂取状況が改善された。身体活動の増加と座位時間の減少も示された。アドヒアランスは、アプリ+カウンセリング群とアプリのみの群とで同等だった。

実用的なデジタルリソースの利用は低コストで柔軟性・拡張性がある

 「肥満や糖尿病などの非感染性疾患(NCD)による、医療や経済への負担が増大していることを考えると、リアルワールドでの集団ベースの生活スタイル介入と、実用的なデジタルリソースの利用は、低コストで柔軟性・拡張性のあるものと期待されます」と、同大学公衆衛生学のPilvikki Absetz教授は言う。

 「グループカウンセリングに携わる医療従事者との長年の協働により、今回のアプローチは得られました。このアプローチが実践に適していることは予想されていましたが、その有効性を証明するエビデンスを得る必要がありました」としている。

 糖尿病の予防を目標とした「StopDia」研究は、健康増進の目標を戦略的にサポートするために、プライマリヘルスア向けに設計・構築されており、職場環境の整備にも着目している。患者、非政府組織、労働組合、雇用主、その他の利害関係者にも参加してもらうことを奨励している。

 年間に2万6,000人以上が糖尿病リスクに関するテストを受けており、今回研究は、そのテストで糖尿病のリスクが高いと判定された成人が対象となった。

アプリの利用でも医療者や専門職によるサポートが必要

 「人々が自身の肥満や糖尿病のリスクを認識し、それを予防する可能性についてより良く認識し、健康的な生活スタイルを促進するために必要なサポートとサービスを受けられるようにすることが重要です」と、同大学生物医学研究所のTimo Lakka教授は言う。

 「今回の研究は、これはプライマリヘルスケアで実施され、デジタルとグループベースのカウンセリングを組み合わせた生活介入の相互作用を調査した、はじめて大規模な無作為化対照研究です」としている。

 「肥満や糖尿病のリスクの高い人に包括的に介入するために、複数の関係者の努力と幅広い協力が必要であることが示されました」と、同大学臨床栄養学研究所教授で研究責任者であるJussi Pihlajamäki氏は述べている。

 「食事の質が向上すると、体重の変化に関係なく、糖尿病のリスクは低下します。食事指標を取り入れた集団カウンセリングと、スマホアプリの組合せは、食事の質を向上するのに有用な組合せと考えられます。今後の研究で生活介入のカウンセリングをより個別化することで、さらに効果的な介入ができるようになると期待しています」としている。

Digital and group-based lifestyle counselling to prevent type 2 diabetes shows real-world effectiveness in Finnish health care (東フィンランド大学 2022年10月26日)
Real-world effectiveness of digital and group-based lifestyle interventions as compared with usual care to reduce type 2 diabetes risk-A stop diabetes pragmatic randomised trial (Lancet Regional Health - Europe 2022年10月12日)
StopDia and T2D-Data

[Terahata]
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