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抗菌薬や抗生物質の知識は不十分なまま 不適切な使用が増加ー抗菌薬意識調査レポート2022ー

 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンターは2022年10月に、今年度の「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」について結果を取りまとめ、公表した。

 結果からは、抗菌薬・抗生物質や薬剤耐性について一般の人が持つ知識は不十分なまま数年間変化していないことが分かった。一方、「体調不良で休む」という回答が増加するなど基本的な感染対策の浸透は垣間見られた。
抗菌薬・抗生物質の正しい知識を持つ人の割合は低いまま

 感染症治療に必要な抗菌薬や抗生物質が効かない薬剤耐性(AMR)の問題が世界中で深刻化している。薬剤耐性の問題は抗菌薬や抗生物質な不適切な使用が一因とされる。
 そのため同センターはインターネットを通じて全国15歳以上の男女約700人を対象に抗菌薬・抗生物質、薬剤耐性に対する認識について調査を実施。問題点と今後の取り組みについて方向性を探った。

 結果によると抗菌薬・抗生物質という言葉を「聞いたことがある」と答えた人は81.7%に上ったが、そのうち「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」が「不正解(正しいと思う)」と間違った理解をしている人は62.8%と過半数を超えた。
 同様に「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」が「不正解(正しいと思う)」と間違った理解をしている人も45.5%と半数近くいた。

出典:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター、2022年9月30日

 ほかにも「抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方が良い」と間違った理解をしている人が43.2%いて、自らの判断で服用をやめている人が多いことも分かる。これらの結果と近年の結果とに大きな差はなく、一般国民の抗菌薬・抗生物質に関する知識は不十分なまま推移している。

一方、「家にとってある抗菌薬・抗生物質がある」と回答した人は27.4%で、前年比9.5ポイントの増加。年代別で見ると、10代が43.8%と高かった。また「同居している15歳以下の子どもがいる」人も40.3%が「ある」と答えた。
 「とっておいた抗菌薬・抗生物質を自分で飲んだことがある」と回答した人も25.5%で、前年比9.0ポイントの増加。

 これらの結果から、抗菌薬の不適切な使用が増加している可能性がある。薬剤耐性や薬剤耐性菌という言葉の認知度については、「聞いたことがある」人が40.1%で、2019年から増加していない。

新型コロナの影響などにより基本的な感染対策は浸透してきている

 また同センターは2019年、AMRによる死亡者数の調査を初めて実施し、MRSA菌血症とフルオロキノロン耐性大腸菌血症で年間約8,000人が死亡と推計。他の薬剤耐性菌も含めると、それ以上の人が死亡していると推計されている。

 しかし、今回のアンケート調査で「日本で年間どれくらいの方が薬剤耐性菌の感染症で亡くなっていると思いますか」という設問に対して一番多い回答は「100〜1,000人未満」(44.1%)。そのため、報告書では「薬剤耐性の問題に対する関心や理解は深まっておらず、その疾病負荷は多くの人に低く見積もられている可能性がある」としている。

 一方、「発熱等の症状で学校や職場を休む」と回答した人は60.0%で年々、増加している。また今後の感染症予防対策として「咳エチケット」を「必ず行いたい」と回答した人は59.6%で過去最多となり、新型コロナウイルス感染症の影響もあり「基本的な感染対策は浸透してきている」としている。

 報告書は「抗菌薬・抗生物質は不適切な利用により、本当に必要な時に効かなくなってしまう」と警鐘を鳴らし、AMR対策の必要性を訴えている。

[yoshioka]
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