自殺総合対策大綱には女性の自殺対策を重点施策に 令和4年版「自殺対策白書」
自殺者数の推移は、警察庁の自殺統計原票を集計した結果と、厚生労働省の人口動態統計に基づく結果でそれぞれ数値は異なるが、おおむね似た推移を示している。
警察庁の自殺統計の結果では、令和3年の自殺者数は21,007人で前年比74人減。男女別では男性が13,939人(66.4%)、女性が7,068人(33.6%)で男性が約2倍、上回っている。一方、男性は平成22年以降12年連続で減少しているのに対し、女性は令和2年に増加に転じ、令和3年も42人増えた。
年齢階級別で最も多いのは「50〜59歳」で前年比193人増加の3,618人。男女別で最も多い年齢階級は、男性が「40〜49歳」で2,519人、女性が「50〜59歳」で1,126人だった。また「20〜29歳」は2,611人で、女性が前年比75人増加していた。
職業別の最多は「無職者」で11,639人。このうち「年金・雇用保険等生活者」が5,001人で半数を占める。一方、学生・生徒等の総数は1,031人で、最多は大学生の434人(前年比19人増)。男女別で見た場合、女性は大学生の136人より、高校生の145人が多かった。
原因・動機別では「健康問題」が9,860人と最多で、「経済・生活問題」(3,376人)、「家庭問題」(3,200人)と続く。「健康問題」は前年比335人減だったが、「経済・生活問題」は160人増、「家庭問題」は72人増だった。
自殺総合対策大綱は、自殺対策基本法でおおむね5年をめどに見直すこととされている。前回の大綱は平成29年で、令和3年から見直しに向けて検討してきた結果、このほど新しい大綱が閣議決定された。
今回の大綱では、自殺者数が依然として毎年2万人を超える水準で推移し、男性が大きな割合を占めている一方、コロナ禍の影響などから女性が2年連続の増加、小中高生が過去最多の水準となっている点を指摘。今後5年間で取り組むべき施策を新たに位置づける、としている。
例えば、「新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対策の推進」を「自殺の現状と自殺総合対策における基本認識」に新たに盛り込み、女性や無業者、非正規雇用労働者、ひとり親、フリーランス、児童生徒への影響も踏まえた対策を図る。
「対策の基本方針」では、自殺対策が「SDGsの達成に向けた政策としての意義を持つ」旨を明確化。令和5年4月に設立予定のこども家庭庁との連携などにも言及した。また近年、SNS等で自殺者に関する情報が拡散される傾向にあることから、「自殺者等の名誉及び生活の平穏に配慮する」も新たに明文化した。
重点施策には「女性の自殺対策をさらに推進する」を追加。妊産婦への支援の充実や、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえた女性支援を推進していく、としている。
重点施策の一つ「子ども・若者の自殺対策をさらに推進する」では、いじめを苦にした子どもの自殺を予防するため、タブレット端末の活用でプッシュ型支援をするなど取り組みをさらに進める。
小中高生の自殺者数は、自殺者総数が減少傾向にある中でも増加傾向にあり、令和2年は過去最多を記録、令和3年も過去2番目の水準だった。令和5年4月に開設されるこども家庭庁と連携し、体制整備を図る。
数値目標については、先進諸国の現在の水準まで減少させることを目指し、令和8年までに自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)を平成27年と比べて30%以上減少させる、という旧大綱の数値を継続して採用した。具体的には平成27年の自殺死亡率18.5から30%以上減少させると13.0以下となるが、令和2年は16.4だった。
厚生労働省は、相談窓口、ゲートキーパー、自殺対策の取り組みなどの情報をわかりやすくまとめたサイト「まもろうよ こころ」を公開するなどし、広く啓発を図っていく。
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