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労働者の自殺リスクとメンタルヘルス不調時の相談相手を調査 「上司に相談」は少数 働く人に向けたゲートキーパーが必要
2022年12月19日
この1ヵ月に、「精神的な不調」を感じたことのある人は17.3%、「希死念慮」を抱いた人は12.6%、「自殺念慮」を抱いた人は6.3%にそれぞれ上ることが、秋田大学が20~59歳の働いている人1万人以上を対象とした調査で示された。
被雇用者では、不調を抱えたいときに話をしたい相手として、6割超が「家族」「友人」を挙げ、「同僚」を挙げた人も57%に上った。しかし、「上司と話をしたい」という人は43%に減り、精神的な不調を相談しにくい職場環境がある可能性が示された。
さらに、「医療機関を受診する」と答えた人も35%と少なく、不調を感じても受診行動につながりにくい現状が浮き彫りになった。
「中高年男性に向けた自殺対策の必要性や、家族や友人の不調に気づく従来型のゲートキーパーの養成に加えて、働く人に向けたゲートキーパーの養成が必要です」と、研究グループでは述べている。
メンタルヘルス不調時に相談したい相手 6割超が「家族」「友人」
「秋田県の働く皆さんへ」
秋田大学自殺予防総合研究センター
秋田大学自殺予防総合研究センター
秋田県の中高年男性の自殺念慮は2.16倍多い
今回の調査は、秋田県と自殺死亡率の高い4県である青森県、岩手県、新潟県、福島県と、反対に自殺死亡率の低い5府県である岡山県、京都府、神奈川県、鳥取県、愛知県の経営者・被雇用者を対象に、2022年2月〜3月にオンラインで実施したもの。
調査対象は、上記10府県の、職場の人数が50人未満の20~59歳の小規模事業所経営者および被雇用者。1万731人から回答を得て、条件を満たす人を各府県で1,000人ずつをサンプリングした。
調査内容は、基本属性(居住地、性、年齢、婚姻状況、職場での立場、最終学歴)、不調を抱えたときに誰に話したいか(家族、友人、同僚、経営者または上司、医療機関)、自殺のリスク(精神的な不調:K6、希死念慮、自殺念慮)。
その結果、秋田県の中高年男性の勤労者の8.8%が自殺念慮を抱いており、自殺死亡率の低い地域と比較するとオッズ比で2.16倍、自殺念慮を抱きやすいことが分かった。
秋田県を自殺死亡率が低い地域と比較すると、不調を抱えたときに、経営者・家族従事者は「家族に話したい」と思う傾向があり、被雇用者は「医療機関を受診したい」と思う傾向があることも示された。
自殺念慮を抱いている人は女性や若年に多い傾向
自殺念慮は、「強い感情をともなった自殺に対する思考、あるいは観念が、精神生活全体を支配し、それが長期にわたり持続する」ことで、希死念慮は、「思考あるいは観念として散発的に出現する場合を指すことが通例で、"消えてなくなりたい""楽になりたい"などが具体的な表現」となる。
これまで、日本の自殺念慮の有訴者率は4~11%とみられており、今回の調査でも6.3%の人が自殺念慮を抱いていることが示された。
自殺念慮を抱く人は、女性や若年に多いとみられているが、これまでの研究は一地域のみの解析であり、他の地域と比較した報告は少ない。今回の調査では、自殺念慮を抱く人の割合と居住地に関連があるかも調査された。
その結果、自殺念慮を抱いている人の割合は、20~39歳の男性で8.8%、40~59歳の男性で4.9%、20~39歳の女性で8.7%、40~59歳の女性で4.0%に上った。
新型コロナの感染拡大の影響で、若年女性の自殺死亡率が上昇傾向にある背景として、20~39歳の女性の自殺念慮者が増えている影響が考えられるとしている。
また、居住地でオッズ比を比べたところ、自殺念慮の低い地域に比べ、高い地域では、20~39歳の男性では1.03倍に、40~59歳の男性では1.10倍に、20~39歳の女性では1.04倍に、40~59歳の女性では0.82倍になった。
仕事がうまくいっていないなど、メンタルヘルスの不調を感じているときに相談する人としては、全体として、被雇用者では「家族」(62.9%)、「友人」(63.4%)、「同僚」(57.0%)、「上司」(43.1%)、「医療機関の受診」(34.5%)が挙げられ、経営者では「家族」(62.4%)、「友人」(62.7%)、「医療機関の受診」(37.9%)が挙げられた。
秋田大学自殺予防総合研究センター
秋田県の働く人が抱える自殺リスクと不調時の相談相手の実態調査報告書〜秋田県とその他の自殺死亡率が高い地域及び低い地域の比較〜 (秋田大学 2022年12月)
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