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連休明けは調子が上がらない? 「社会的時差ぼけ」かも 夜型の生活は体と心のリズムを乱し肥満の原因に

 土曜日や日曜日、連休にゆっくり休んだはずなのに、勤務日に体や心がだるいと感じることはないだろうか? それは「社会的時差ぼけ」のせいかもしれない。

 休日と平日の睡眠時間の差が大きかったり、食事のタイミングが「夜型」になっていると、1日周期の睡眠と覚醒のリズムが狂いやすく、肥満やメタボにもつながりやすい。

 食事や生活を「昼型」に調整し、睡眠をしっかりとると、仕事の成果を上げやすくなり、キャリアアップにもつながるという研究も発表された。

 生活を昼型に変えることで、うつ病のリスクも減り、メンタルヘルスの改善も期待できるという
休日に不規則な生活をしていると「体内時計」が乱れる
 土曜日や日曜日、連休にゆっくり休んだはずなのに、勤務日に体や心がだるいと感じることはないだろうか? それは「社会的時差ぼけ」のせいかもしれない。

 仕事のある平日に定刻に起きていても、休日は遅くまで寝ている習慣のある人は、疲れが思ったようにとれなくなるおそれがある。それどころか、睡眠習慣の乱れによって体内時計が狂い、肥満やメタボ、糖尿病、心臓病、がんなどのリスクが高まる可能性もある。

 睡眠や体温、血圧、ホルモン分泌など体の基本的な機能はおよそ24時間のリズムを示す。この1日周期の睡眠と覚醒のリズムは「概日リズム」と呼ばれる。概日リズムを調整している「体内時計」は、生活スタイルから大きな影響を受けている。

 休日に不規則な生活をしていたことが原因で、体内時計と生活時間との間にずれが生じるのが「社会的時差ぼけ(ソーシャル ジェットラグ)」だ。
休日と平日の睡眠時間の差が大きいと肥満リスクが上昇
 「平日は規則正しい生活をおくっていても、週末に夜更かしや朝寝坊をして就床時刻や起床時刻がずれると、それをきっかけに体内時計が乱れ、時差ボケのような症状をまねくことがあります。これが"社会的時差ぼけ"で、睡眠医療の研究者に注目されています」と、英国医学研究会議(MRC)のマイケル パーソンズ氏は言う。

 MRCや米国のデューク大学、ニュージーランドのオタゴ大学などが、815人を対象に行った調査では、休日と勤務日の睡眠時間の差が大きい人は、そうでない人に比べ、代謝に異常が生じ肥満になりやすいことが明らかになった。

 休日の睡眠パターンに2時間のズレがあるだけで、1~2ヵ月の血糖値の平均を反映するHbA1cが高い傾向があり、炎症を判定するためのバイオマーカーであるC反応性タンパク(CRP)の値も高かった。

 「社会的時差ぼけは、食事や運動などの健康的な習慣を乱す原因になると考えられます。これを防ぐために、概日リズム(体内時計)に狂いが生じないように、生活スタイルを工夫することが必要です」としている。
概日リズムが乱れるとどうなる?
 社会的時差ぼけは、十分な睡眠をとれていなかったり、夜遅くに間食をとり高カロリーの食品を食べたり、仕事のスケジュールが不規則であると起こりやすくなると考えられている。

 米国のロチェスター大学医療センターの研究によると、とくに一貫性のない乱れた睡眠習慣により概日リズムは狂いやすい。

 HSF1は、細胞でさまざまなストレスに対する耐性を獲得して、細胞の生存に関わる転写因子。さまざまな生理的過程で重要な役割をになっており、がんの発症にも関わっていると考えられている。

 HSF1は概日リズムからも影響を受け、睡眠と覚醒のリズムが乱れたり、不眠などが続くと活性化しやすくなり、がん発症にもつながるとしている。
良い睡眠は仕事への意欲も高める
 睡眠を改善し、質を高めることで、日中の活動での気分に好ましい影響があらわれ、仕事の成果を上げやすくなり、キャリアアップにもつながる可能性があることが、ワシントン州立大学の研究で明らかになっている。

 「夜間にぐっすりと眠れている人は、昼間に気分が高揚しやすく、仕事での地位と責任を達成しやすいことが示されました。この傾向は、とくに女性で強くみられました。女性は男性よりも、感情的な反応が大きく、プレッシャーも受けやすいとみられます」と、同大学カレッジ オブ ビジネスのリア シェパード氏は言う。

 「逆に、十分な睡眠をとれていない人は、前向きな気分が低下しており、目標に向けてチャレンジする意欲も減少する傾向がみられました。質の良い睡眠をとることは大切であることが示されました」としている。

 研究グループは、米国の135人のフルタイム労働者を対象に2週間にわたり調査。参加者に、日中の活動と夜間の睡眠について記録をとってもらった。
「体内時計」の働きを良くするにはどうしたら良い?
 それでは、概日リズムを調整している「体内時計」の働きを健康にするにはどうしたら良いのだろう?

 米国のブリガム アンド ウィメンズ病院によると、食事のタイミングが大切で、日中の活動はなるべく昼間に行い、食事も昼間の時間帯にとることで、体内時計に好ましい影響があらわれる可能性がある。

 昼間に集中して食事をとることで、たとえ睡眠のタイミングがずれていても、概日リズムを調整しやすくなり、血糖値が下がりにくくなる耐糖能異常を防ぐことにもつながるという。

 逆に、夜遅くに食べ過ぎていると、体内時計は狂いやすくなる。食事のタイミングは、うつ病や不安症にも関連しており、メンタルヘルスに影響を与えているとしていると考えられる。
「夜型」の食事スタイルは心のリズムも乱す
 研究グループは、平均年齢26.5歳の健康な男女を対象に、19日間の実験を行った。参加者を2つの食事タイミングのグループにランダムに割り付け、朝食を含み昼間の時間帯のみに食事をとった期間と、朝食をとらず昼と夜に食事をとった期間とで比較した。

 その結果、昼と夜に食事をしていると、うつ病につながる気分レベルの悪化が26%増加し、不安の気分レベルも16%増加した。昼間の時間帯のみに食事をとっていると、こうした気分障害は起こらなかった。

 「食事のタイミングが、メンタルヘルスや、気分の脆弱性に影響をもたらしている可能性があります。食事はなるべく、昼間の明るいうちにとり、夜遅い時間帯には食べないようにした方が良いと考えられます」と、同病院の睡眠・概日障害部門のフランク シェアー氏は言う。
生活を「昼型」に調整して体と心のリズムを改善
 「睡眠/覚醒や絶食/食事のサイクルは、生活スタイルを調整することで改善が可能です。規則正しい生活をし、日中は活動的に過ごし、朝食をしっかりとり、夜遅くには食べないなどの工夫が役立ちます」。

 「交代勤務に従事し、夜間に働いている方々の多くが、社会的時差ぼけを経験しています。概日リズムの障害があり、不眠などで悩んでいる人も少なくありません。そうした方も、食事のタイミングを調整することで、気分障害を防げる可能性があります」としている。

Study finds 'social jetlag' is associated with obesity-related disease (オタゴ大学 2015年1月23日)
Social jetlag, obesity and metabolic disorder: investigation in a cohort study (International Journal of Obesity 2014年12月22日)
What happens if your circadian rhythms are out of whack? (ロチェスター大学医療センター 2022年10月21日)
Circadian disruption enhances HSF1 signaling and tumorigenesis in Kras-driven lung cancer (Science Advances 2022年9月28日)
Good sleep can increase women's work ambitions (ワシントン州立大学 2022年10月31日)
Too Tired to Lean In? Sleep Quality Impacts Women's Daily Intentions to Pursue Workplace Status (Sex Roles 2022年10月1日)
Daytime eating may benefit mental health (ブリガム アンド ウィメンズ病院 2022年9月12日)
Daytime eating prevents mood vulnerability in night work (Proceedings of the National Academy of Sciences 2022年7月26日)
[Terahata]
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