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【新型コロナ】なぜ男性は女性よりも重症化しやすい? 後遺症は女性の方が多いという報告も
2023年02月20日

内外のさまざまな調査で、新型コロナは、女性に比べて男性の方が重症化しやすく、死亡率が高いことが示されている。
ただし、新型コロナを発症した後では、女性は男性に比べて後遺症で苦しむ割合は高いことも報告されている。
なぜ男性は女性よりも重症化しやすいのかを解明する研究も進められており、成果が出始めている。
女性は男性に比べて重症化や死亡が少ない
新型コロナの危険因子として、高齢であること、肥満・メタボ、高血圧・糖尿病・肺疾患などの基礎疾患があることが知られているが、性差についても注目されている。 内外のさまざまな調査で、新型コロナは、女性に比べて男性の方が重症化しやすく、死亡率が高いことが示されている。 韓国疾病予防管理センター(KCDC)が、2020年1月20日~4月30日に、新型コロナの入院患者5,628人を対象に実施した前向きコホート研究では、女性は男性に比べ、新型コロナが重症化しにくいことが示された。 40歳以上では、女性の入院患者は男性よりも多かったものの、院内死亡率、院内累計死亡数は男性の方が多かった。死亡のハザード比は、女性の3.5%に対し、男性は5.5%と高かった。 なお、新型コロナが重症化する危険因子のひとつである過体重のある人の割合は、男性30.9%に対し、女性は18.6%と少なく、高血圧・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患・肝硬変などの基礎疾患のある人も男性に多かったという。新型コロナの後遺症は女性の方が多い
ただし、新型コロナを発症した後では、女性は男性に比べて後遺症で苦しむ割合は高いという報告も発表されている。 新型コロナの後遺症についての、ジョンソン・エンド・ジョンソンの女性の健康研究所(Women's Health)による研究で、女性の後遺症は男性に比べ22%多いことが示された。 後遺症の性差をみると、女性は男性に比べ、メンタルヘルス関連症状が1.80倍、耳・鼻・喉の症状が1.42倍、筋骨格の症状が1.15倍、呼吸器症状が1.09倍、それぞれ多くみられた。一方、腎機能の低下は男性に比べ0.83倍と少なかった。 「女性と男性の免疫系機能の違いが、新型コロナの後遺症に性差がある要因である可能性があります。女性は男性に比べ、より迅速かつ堅牢に自然免疫や免疫応答を開始し、初期の感染や重症化から保護されていると考えられます」と、同研究所のシャーリー シルベスター氏らは説明している。 「ただし、この同じ違いにより、女性は長期にわたる自己免疫の関連疾患に対して、男性に比べ脆弱になっている可能性があります。性ホルモンの違いや、閉経期を迎えた女性ではそれにともなう体の変調も、新型コロナの後遺症に影響しているかもしれません」としている。なぜ男性は女性よりも重症化しやすい?
日本の国立感染症研究所の調査でも、▼女性の方がウイルスに対する免疫反応が高い、▼男性の方がウイルス感染に関わるレセプター(ウイルスが細胞へ侵入する際に利用する受容体)が多いといった、生理学的要因があることが示唆されている。 それに加えて、女性は同性との交流が多い傾向があり、子供と接する機会が多いなど、社会学的要因も影響している可能性がある。 新型コロナが、男性の方が女性に比べて重症化しやすいのは、ウイルスを抑制する抗体の産生を調整する体内のネットワークに、男女で違いがあるからかもしれない。新型コロナの治療でも性差医療が必要
「ヘルパーT細胞」はウイルスなどの体に侵入してきた異物に応答して、他の免疫細胞の働きを調節する司令塔の役割を果たしている。 このうち、抗体産生を抑制する働きをする特殊なタイプのヘルパーT細胞があり、「Tfr」と呼ばれている。Tfrは、ウイルスなどを体から除去する分子である抗体の産生を調整し、質を高める働きをしていると考えられている。 大阪大学の研究で、新型コロナを発症した患者では、このTfrが減少しており、この傾向は男性でより強いことが明らかになった。これにより、男性では女性に比べて、抗体を産生するT細胞やB細胞の数が増加しやすいという。 「新型コロナの抗体産生を制御している細胞間の相互作用を解明することで、新型コロナの重症化や後遺症を予測し、抑制する新たな治療法を開発できるようになると期待しています」と、研究グループは述べている。 「今回の研究で、免疫細胞で構成される抗体産生ネットワークのバランスは、男性と女性では異なることを発見しました。新型コロナの感染では、性差に合わせた治療法を開発する必要が考えられます」としています。 研究は、大阪大学感染症総合教育研究拠点(ヒト生体防御学チーム)のJonas Nørskov Søndergaard特任助教、Janyerkye Tulyeu特任研究員、James Badger Wing准教授(免疫学フロンティア研究センター兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「PNAS」にオンライン掲載された。
新型コロナ感染症急性期における抗体産生調整機構の性差による違い

Tfr:濾胞性制御性T細胞、Tph:末梢性ヘルパーT細胞、Atypical B cell:異型B細胞、Plasma blast:プラズマブラスト(形質細胞)
出典:大阪大学、2023年
Sex-specific difference of in-hospital mortality from COVID-19 in South Korea (PLOS ONE 2022年1月24日)Sex differences in sequelae from COVID-19 infection and in long COVID syndrome: a review (Current Medical Research and Opinion 2022年6月20日)
日本における新型コロナウイルス感染症の流行波ごとの性別・年齢的特徴の疫学的検討 (国立感染症研究所 2022年12月23日)
大阪大学感染症総合教育研究拠点 ヒト生体防御学チーム
A sex-biased imbalance between Tfr, Tph, and atypical B cells determines antibody responses in COVID-19 patients (PNAS 2023年1月20日)
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