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「週4日勤務」により働く人の健康と幸福度が改善 ストレスと健康不良が大幅減少 企業の生産性は維持
2023年02月28日

生産性目標を保持しながら、給料も下げることなく、従業員の勤務時間を20%減らすという大規模な取り組みが、英国で行われた。
週5日から週4日の勤務体制に変更した結果、従業員のストレスと健康不良の割合が大幅に減少したことが明らかになった。
週4日勤務により、「燃え尽き症候群」のレベルが低下し、ストレスが軽減された。病欠日数や離職も大幅に減少した。期間中に、企業の収益が落ちることはなく、むしろ増やしたところもあるという。
週4日の勤務体制に変更 ストレスと健康不良が大幅に減少
英国では、61の企業で、2022年6月から6ヵ月間、生産性目標を保持しながら、給料も下げることなく、従業員の勤務時間を20%減らすという取り組みが行われた。 週5日から週4日の勤務体制に変更した結果、従業員のストレスと健康不良の割合が大幅に減少したことが明らかになった。週4日勤務により、従業員の71%は「燃え尽き症候群」のレベルが低下し、39%はストレスが軽減されたとしている。 前年同時期に比べて、病欠日数は65%減少し、離職するスタッフの数は57%減少した。期間中に、企業の収益が落ちることはなく、むしろ平均で1.4%増加していた。 この英国のパイロットプログラムに参加した企業の92%(61社中56社)は、週4日勤務を取り入れたいという意向を示し、実際に18社が勤務規定の変更に乗り出したという。 この研究は、英ケンブリッジ大学が、米ボストン大学やシンクタンクなどと協力して実施したもの。週4日勤務の普及を広げる活動をしている「4 Day Week Campaign」や「4 Day Week Global」とも連携した。 参加した企業の業種は、オンライン小売業、金融サービス、コンサルティング業、住宅会社、マーケティング関連、ヘルスケア関連から、IT会社、アニメーション スタジオ、地元のフィッシュ アンド チップス ショップなどにも及び、対象となった従業員は約2,900人だった。週4日勤務により不安と疲労のレベルが低下 健康が改善
研究グループは試験期間中に、従業員を対象に調査を行い、自由時間が1日増えることの影響を測定した。その結果、従業員全体で、不安と疲労のレベルが低下し、精神および身体の健康が改善したことが明らかになった。 参加者の多くで、「仕事と家庭、社会的な責任とのバランスをとるのが容易になった」という感想が聞かれたという。 参加者の60%は「有給の仕事と家事・育児・介護を両立させる能力が向上した」と答え、62%は「仕事と社会生活を両立させるのがより容易になった」と答えた。 自由時間が増えたことで、「スポーツや運動、料理、音楽制作、ボランティア活動、専門的な資格の取得など、すでに行っていた活動をより良く楽しみながら行えるようになった」という声も聞かれたという。 一方、クリエイティブな仕事をしている企業などの一部のスタッフからは、業務の集中化による勤務時間の減少にはメリットだけがあるわけではないという意見が出された。 「整理されていない対話や交流、チャットなどから、新しいアイデアが生みだされることもあるので、長時間労働が必ずしも悪いわけではない」としている。 関連情報週4日勤務に移行しても企業の生産性は低下しない
「試験を開始する前は、従業員の勤務時間を減らすと、企業の生産性が低下するのではないかと、多くの人が懸念を示していましたが、実際にはそんなことにはなりませんでした」と、この研究を率いたケンブリッジ大学の社会学者であるブレンダン バーチェル教授は述べている。 「従業員の多くは、仕事の効率を向上する方法を自身でみつけようと、熱心に取り組みました。多くの人が参加する長時間の会議は、短縮されるか、完全に廃棄されました。従業員の多くは、無駄な時間を過ごすことが少なくなり、生産性を向上させるためのテクノロジーを積極的に取り入れていました」としている。 「多くの企業が週4日制を、夢ではなく現実的な政策としてとらえ、実際にメリットが多いことを理解する結果になったことに本当に勇気付けられています」と、同大学で社会調査を研究しているデビッド フレイン氏は述べている。 「この研究は、勤務時間の短縮というアイデアを現実のものにするための、大きなブレークスルーになります」と、"4 Day Week Campaign"のディレクターであるジョー ライル氏は述べている。 「経済のさまざまな部門で、こうした驚くべき結果を得られたことは、週4日制を実際に機能させることは可能であることを示しています」としている。今後はさらに規模の大きい研究を計画
研究グループは、6ヵ月のトライアル試験の前・中・後に、従業員や企業のCEOを対象に多数の広範なインタビューを実施した。 ただし、今回の試験は最大規模のものではなく、詳細なインタビュー調査を含む最初の小規模なものだと付け加えている。 「このパイロット研究により、研究者は調査の枠を超えて、企業が現場でどのように機能を保っているかを詳細に調べることができました」と、フレイン氏は述べている。 「週4日制は、今後、新型コロナなどの感染症のパンデミックが起きた場合にも適応しやすい、合理的な対応であり、コロナ後の雇用市場で人材を集める際にも有利と考えられます」としている。 Working a four-day week boosts employee wellbeing while preserving productivity, major six-month trial finds (ケンブリッジ 2023年2月21日)掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


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