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ペットに介護予防の効果 ペット飼育によりフレイルや自立喪失は大幅低下 社会保障費も抑制

 ペット(コンパニオンアニマル、伴侶動物)を飼うことに、介護の予防効果があることが、東京都健康長寿医療センターの研究で明らかになった。

 これまでも、ペットを飼い世話をすることで、とくに高齢者ではフレイルや自立喪失が発生するリスクが大幅に低くなることを報告している。

 今回の研究では、ペット飼育には介護の予防効果があるだけでなく、介護給付費をおよそ半分に抑制する効果があることがはじめて示された。

ペットに介護予防の効果 フレイルのリスクが大幅に低下

 ペット(コンパニオンアニマル、伴侶動物)を飼うことに、介護の予防効果があることが、東京都健康長寿医療センター 社会参加と地域保健研究チームの研究で明らかになった。

 ペット飼育と社会保障費の抑制の関連について明らかにしたのは、日本ではこの研究がはじめて。

 研究チームはこれまでも、ペットを飼育し世話している高齢者では、フレイルや自立喪失が発生するリスクが大幅に低いことを報告している。

 フレイルは、加齢にともない、体のさまざまな機能の低下が進み、それによって健康障害を起こしやすくなっている状態のこと。また、自立喪失は、高齢者が、介護が必要になったり、死亡リスクが高くなっている状態。

ペット飼育者では介護費が半額に抑制

 研究グループは今回、既往歴や要介護認定には差のない、(1) ペットを飼育している高齢者(ペット飼育者、96人)と、(2) ペットを飼育していない高齢者(非飼育者、364人)を対象に、2017年6月~2016年1月の17ヵ月間の調査を実施した。

 その結果、ペット飼育者と非飼育者とのあいだで、医療費には差が生じていなかったものの、介護費については、ペット飼育者ではおよそ半額に抑制されていることが明らかになった。

 ペット飼育者では、介護サービスの利用頻度が低いことや、軽度の介護サービスの利用につながっていると考えられるという。

ペットを飼育している高齢者は、月額介護費がおよそ半額に抑制されていた

出典:東京都健康長寿医療センター、2023年

平均年齢は77.7歳の高齢者460人を調査

 研究は、東京都健康長寿医療センター 社会参加と地域保健研究チームの谷口優氏、藤原佳典氏らによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載された。

 「高齢化の進展にともなう介護費の増大に対して、猫や犬の飼育は、介護予防効果のみならず、介護費の抑制にも寄与することが示唆されました」と、研究チームでは述べている。

 「ペットを飼育することによる役割、責任感、活発で規則正しい生活の維持など、介護費に反映する可能性のある日常生活の自立・自律に関する多面的な要因が考えられます」としている。

 研究チームは今回、2017年に埼玉県比企郡鳩山町での疫学調査に参加した460人の調査データを使用した。対象者の平均年齢は77.7歳、男性の割合は61.6%だった。

 有病率は、高血圧が51.1%、脂質異常症が37.4%、骨関節疾患が27.4%、心疾患が22.2%、糖尿病19.3%、脳血管疾患10.7%で、要介護認定割合は6.3%だった。

 ペット飼育割合は20.9%で、うち24.0%が猫および犬の飼育で、24.0%が猫のみを飼育し、42.7%が犬のみを飼育していた。

 調査時の月額医療費は、(1) ペット飼育者が4万8,054円、(2) ペット非飼育者が4万2,260円であり、調査期間での月額医療費の比は、最小0.9倍、最大1.2倍と、有意差はみられなかった。

 一方、調査時の月額介護保険サービス利用費は、(1) ペット飼育者では676円、(2) ペット非飼育者では1,420円になり、調査期間中での月額介護費の比は、最小で1.2倍、最大で2.3倍となった。

 なお、医療費については、国民健康保険および後期高齢医療保険のレセプトデータから総額を算出した。

東京都健康長寿医療センター 社会参加と地域保健研究チーム
Pet ownership-related differences in medical and long-term care costs among community-dwelling older Japanese (PLOS ONE 2023年1月27日)
[Terahata]
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