「熱中症対策計画」を閣議決定 2030年までに死者数半減
-職場における熱中症対策も重要な柱に-
政府は5月30日、地球温暖化で被害が深刻化する熱中症の対策を強化し、現状の年間死者数を2030年までに半減するとの目標を掲げた「熱中症対策実行計画」を閣議決定した。
計画期間はおおむね5年間で、関係府省庁が連携して今年の夏から対策を強化する。
熱中症による救急搬送人員や死亡者数は高水準で推移
近年、熱中症による救急搬送人員や死亡者数が高い水準で推移している。救急搬送人員は、平成22年以降、毎年4万~7万人前後で推移しており、熱中症による全国の死亡者数(5年移動平均)は、1,000人を超えている。
熱中症に関しては、これまで死者数を年間1,000人以下に抑えるとする目標を掲げていたが、法律に基づかないものだった。だが、熱中症対策を強化するための改正気候変動適応法が4月に成立したことを受け、今回、関係府省庁が連携し、年間死者数を2030年までに半減するとの目標を掲げて「熱中症対策実行計画」が閣議決定された。具体的な数値目標としては、18~22年の平均の年間死者数1,295人を基準とし、30年までに半減させるというもの。
具体的な施策としては、以下が盛り込まれたほか、現行の熱中症警戒アラートの一段上に特別警戒情報を新設することも決まった。
- 予防行動のための普及啓発や情報提供
- 高齢者や子どもなど「熱中症弱者」のための熱中症対策
- 教育機関や職場、スポーツ施設など管理者がいる場での熱中症対策
- 地方自治体ではクーリングシェルター(避難所)などの確保
- 産業界との連携
職場における熱中症対策
一般に、熱中症になりやすいとされているのは、体温調整の機能が十分に備わっていない子どもや高齢者。しかし、働き盛り世代であっても、糖尿病、高血圧、心疾患、腎臓疾患、甲状腺疾患などの基礎疾患がある場合は、体温調整の機能が低下しており、熱中症リスクが高いといわれている。
また、基礎疾患のある・なしにかかわらず、「職場における熱中症対策」は作業環境管理の重要な柱の一つだ。計画では、以下の3点が盛り込まれている。
- 職場における熱中症対策に関し、「職場における熱中症予防基本対策要綱」に基づく暑さ指数の把握や活用、異常時の措置等、事業者が重点的に取り組む事項を業界団体等に周知する。また、都道府県労働局及び労働基準監督署を通じて事業者に対する指導等を実施する。
- 職場における熱中症対策に特化したポータルサイトを設け、熱中症予防等の知見や現場での取組を周知し、労働衛生教育を支援する。
- 熱中症予防に効果のある衣類や機器等を活用した個人の健康管理による熱中症予防方法に関して検討、展開、または周知する。
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