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子供が生まれて家事が増えると女性の幸福感は低下 夫は妻の半分しか家事をしていない 結婚・子育て世代1万世帯を調査
2023年07月18日
フルタイムで働く妻の平日の家事時間は、子供がいない家庭で1.8時間であるのに対し、子供ができると2.2~2.5時間に増える。
それに対し、夫は妻のおよそ半分の時間しか家事をしておらず、子供数と家事時間にも関連がみられないことが明らかになった。
妻の家事時間が増えると、主観的幸福感を示すウェルビーイングが低下する傾向も示された。少子化社会の課題を解決するために、家事や育児への男女共同参画が必要であることがあらためて示された。
少子化が加速する日本 結婚・子育て世代の悩みは?
フルタイム勤務の夫婦での、家事・育児時間、ウェルビーイングとの関係、家事の外部化・自動化、家事時間などとの関係を調査した結果、少子化社会の課題を解決するために、家事や育児への男女共同参画が必要であることがあらためて示された。 これは、横浜市立大学や横浜市が、横浜在住の結婚・子育て世代1万世帯を対象に実施した大規模なアンケート調査「ハマスタディ」で明らかにしたもの。 日本では少子化が加速しており、社会の担い手である子供が減っていることは、社会に対して中長期的に大きな影響を及ぼしている。 国や地方自治体は、子供や親を支える政策、活動を実施しており、最近では子供家庭庁が設立され、社会全体で少子化対策への関心が高まっている。 そこで研究グループは、こうした政策や活動が実際に市民の暮らしや子育てを良くしているのか、子供を望む人がその望みを叶えられる社会になっているのか、あるいは子供を望まない人も納得のいく社会になっているのかなどを検証する目的で調査を実施した。夫婦のウェルビーイングも重要な観点
調査は、5年間にわたる大規模なコホート研究で、横浜市をはじめとする都市での少子化の要因を、家庭と子育ての観点から継続的に調査している。 研究グループは、横浜市民の実情を把握し、政策や活動の評価を行い、世の中に発信することを目的に、「ハマスタディ」を実施している。ハマスタディとは、「家庭と子育てに関するコホート研究」の通称。 「子供数に着目するだけでなく、夫婦のウェルビーイングも重要な観点ですが、これまでこうした点はほとんど議論されていません。研究成果によって、家庭と子育ての現状の把握とともに、子育てしやすいまち、政策づくりへの提言につなげることを目指します」と、研究者は述べている。 今回の調査では、夫婦の家事時間と育児時間に焦点をあてて分析した。主な結果は以下の通り――。女性は子供ができると家事時間が増加 |
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フルタイムで勤務する夫婦について、性別・子供数別の平日家事時間と1日当たりの平日労働時間を算出した結果、女性は子供なしの世帯に比べて、子供ありの世帯で平日家事時間は0.4~0.7時間増え、労働時間は0.3~0.5時間減っていた。 |
子供ができて家事が増えた分は主に女性が担っている |
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一方で、男性は子供数による家事時間および労働時間の変化はみられなかった。この結果から、家事時間の増加分は主に女性が担い、労働時間を減らして家事時間にあてている可能性が示された。
性別・子供数別の平日家事時間と労働時間 (フルタイム勤務者)
子供ができて家事が増えた分は女性が担っている 出典:横浜市立大学、2023年
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女性の育児時間は男性の2倍 |
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平日の育児時間を算出した結果、子供ができることで、女性は3.3~3.8時間、男性は1.7~1.8時間の育児時間を要していることが分かった。女性は男性に比べて、約2倍の育児時間を費やしていることが明らかになった。
性別・子供も数別の平日育児時間と労働時間 (フルタイム勤務者)
女性の育児時間は男性の2倍 出典:横浜市立大学、2023年
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夫の家事時間が増えると、妻の家事時間は減る |
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夫婦の家事時間、育児時間の関係を分析した結果、妻の家事時間と夫の家事時間には負の相関がみられた(r=-0.17、P=0.02)。 つまり、妻の家事時間が増えると、夫の家事時間が減り、夫の家事時間が増えると、妻の家事時間は減る。 ただし、妻の家事時間に比べて、夫の家事時間は総じて短い傾向がみられた。 一方で、育児時間では夫婦間での相関関係は確認されなかった(r=-0,07、P=0.30)。家事に比べて、育児は夫婦で関わり合い、互いの育児時間を補完しているとみられる。
妻の家事時間と夫の家事時間 (夫婦ともにフルタイム勤務)
夫の家事時間が増えると、妻の家事時間は減る 出典:横浜市立大学、2023年
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食洗器・ロボット掃除機・全自動乾燥機などの自動化は女性の家事時間の削減に寄与 |
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お惣菜などを利用する家事の外部化、あるいは家電製品の進化による家事の自動化は広く一般に普及している。調査では、食洗器、ロボット掃除機、全自動ドラム乾燥機、電気調理鍋、お惣菜(週1回以上)の利用状況を把握し、これらの導入数ごとの女性の平日家事時間を比べた。 その結果、導入数が多いほど、家事時間が減少する傾向がみられた(r=-0.03、P=0.03)。 この結果から、これらのサービスや家電の利用は、女性の家事時間の削減に寄与する可能性が示された。 |
妻の家事時間が長くなるにつれ幸福感は悪化
研究グループは今回の調査で、フルタイム勤務をしている妻の平日の家事・育児時間と、ウェルビーイングとの関係も調査した。 ウェルビーイングは、個人の権利や自己実現が保障され、身体・精神・社会的に良好な状態にあること。今回の研究では、主観的幸福感と呼ばれる指標が使用され、現在の幸福感を0点~10点で選択してもらった。 その結果、妻の家事時間が長くなるにつれて、ウェルビーイングは悪化する傾向がみられた(r=-0.14、P=0.04)。 一方で、育児時間とウェルビーイングでは、こうした関係は確認されなかった(r=0.002、P=0.97)。 この結果から、妻のウェルビーイングの低下に対して、家事時間の長さが影響していることが示唆された。
妻の家事時間が増えるとウェルビーイング (主観的幸福感) は低下していく
出典:横浜市立大学、2023年
理想としている子供の数などについても、▼現在+予定子供数、▼理想子供数、▼理想子供数とのギャップなどの観点で調査。
その結果、理想子供数とのギャップは、専業主婦ではマイナス0.28、有職(フルタイム以外)ではマイナス0.27、有職(フルタイム)ではマイナス0.36となり、いずれも、理想としている子供の数と実際の子供の数(将来の予定こども数を含む)とのギャップは少ない傾向が示された。
なお、今回の報告では、週40時間以上勤務の者をフルタイムと定義し、産前産後休業(産休)および育児休業制度(育休)を利用している人は含まれていない。
少子化・子育て政策への関心は高い
研究は、横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科の原広司准教授らの研究グループによるもの。本研究のプロトコルは、「Research Square」で公開された。 今回の調査は、横浜市在住の結婚・子育て世代(妻が20歳~39歳)1万世帯の夫婦2万人を対象に、2023年1月から調査票を送付、回収したもの。3272世帯、5458件の回答がえられた(世帯の回収率32.7%)。 研究グループは特筆すべき点として、通常の調査では低くなりやすい男性の回答率が今回の調査では高く、また、夫婦双方の回答も多く寄せられた点としている。夫婦の回答が得られたことで、夫婦間の差異や特徴などを検証することが可能になった。 さらに、自由記述欄(横浜市の暮らしや子育てに関する意見や要望)の記入数は3,000件を超え、全体の回答者の5割以上に上った。少子化・子育て政策への関心の高さがうかがえる結果になったとしている。 「ハマスタディ研究は、2022年度~2026年度の5年間にわたるコホート調査です。本結果は1年目のWave1の調査結果であり、2023年度中にWave2、2024年度以降もWave3~5と継続して実施、分析を行います」と、研究グループでは述べている。 「Wave2以降は、政策の変化や各家庭の変化などを捉え、その変化と各指標との関連を明らかにします。本調査の結果は横浜市にもフィードバックし、今後の政策等の検討に活用していただく予定です」としている。 ハマスタディ (横浜市立大学)Evaluation of planned number of children, the well-being of the couple, and associated factors in a prospective cohort in Yokohama (HAMA study): study protocol (2023年5月5日 preprint)
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