ニュース
お風呂に毎日入っている高齢者はうつ発症が少ない 日本人が好きな浴槽入浴はメンタルヘルスにも良い
2023年07月31日

週7回以上の浴槽入浴をしている高齢者は、うつ病を発症するリスクが低いことが、約3,200人の高齢者を6年追跡して調査した研究で明らかになった。
入浴には、「気持ちが良い」「よく眠れる」といった短期的で主観的な作用があるだけでない。日本人が好きな浴槽入浴は、将来のうつ発症を予防するための生活スタイルである可能性がある。
入浴にはリラックス効果だけでなくうつ発症の予防効果も
日本では、浴槽の湯につかる入浴法が、多くの国民の習慣となっている。入浴には、リラックス効果があり、ストレスなどで疲れた体を休めてくれる効果を期待できる。 これまで日本人の浴槽入浴が、長期的なうつの発症とどう関連するかはよく分かっていなかった。 そこで、東京都市大学などの研究グループは、高齢者を6年間にわたり追跡した大規模な研究により、習慣としての浴槽入浴がうつ発症の長期的な予防効果があるかを調査した。 「日本老年学的評価研究(JAGES研究)」は、日本の全国の高齢者30万人を対象に実施されている大規模研究。超高齢社会となった日本の高齢者の健康長寿を実現するために、全国の30~64市町村と共同して行われている。 研究グループは今回、2010年と2016年に調査対象となった全国14の自治体の65歳以上の高齢者1万1,882人のうち、自立しておりかつ老年期うつ病評価尺度(GDS)が4点以下でうつがなく、夏の入浴頻度の情報のある3,220人、および冬の入浴頻度の情報がある3,224人を対象に解析した。浴槽入浴を毎日している高齢者のうつ発症は0.76倍に低下
その結果、6年後のうつ発症の割合は、夏の浴槽入浴の回数が週0~6回の人で12.9%、週7回以上の人で11.2%、冬の浴槽入浴回数が週0~6回の人で13.9%、週7回以上で10.6%となり、いずれも週7回以上の浴槽入浴をしている人でうつ発症の割合が低く、とくに冬の浴槽入浴では差が大きかった(P=0.007)。 年齢や性別など他の多くの要因を考慮して解析した結果、夏の浴槽入浴回数が週0~6回の人に対して週7回以上の人のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.84倍、冬の浴槽入浴回数が週0~6回の人に対して週7回以上の人のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.76倍となった。 いずれも週7回以上浴槽入浴をしている人はうつにかかりにくく、とくに冬の浴槽入浴では、統計学的有意差があった(P=0.033)。
週7回以上の浴槽入浴によりうつ発症のリスクは0.76倍に低下
毎日浴槽入浴することで高齢者のうつ発症を予防できる可能性が示された

出典:東京都市大学、2023年
浴槽入浴による自律神経のバランス調整や睡眠改善の作用
研究は、東京都市大学人間科学部学部長・教授の早坂信哉氏らによるもの。研究成果は、「日本温泉気候物理医学会雑誌」に掲載された。 「うつ発症予防のため、とくにご高齢の人は、できれば毎日、浴槽入浴を行うことが勧められることが示唆される結果になりました」と、研究者は述べている。 浴槽入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整作用や、睡眠改善などが、うつ予防に有益に働いている可能性があるとしている。 「今回の大規模な追跡調査により、浴槽入浴がうつ発症の予防につながることがはじめて分かりました。浴槽入浴は、"気持ちが良い""良く眠れる"といった入浴の短期的かつ主観的な作用だけでなく、高齢者の心身の健康維持のための重要な生活習慣である可能性があります」としている。 東京都市大学人間科学部Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project (Journal of The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine 2023年7月24日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」