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お風呂に毎日入っている高齢者はうつ発症が少ない 日本人が好きな浴槽入浴はメンタルヘルスにも良い

 週7回以上の浴槽入浴をしている高齢者は、うつ病を発症するリスクが低いことが、約3,200人の高齢者を6年追跡して調査した研究で明らかになった。

 入浴には、「気持ちが良い」「よく眠れる」といった短期的で主観的な作用があるだけでない。日本人が好きな浴槽入浴は、将来のうつ発症を予防するための生活スタイルである可能性がある。

入浴にはリラックス効果だけでなくうつ発症の予防効果も

 日本では、浴槽の湯につかる入浴法が、多くの国民の習慣となっている。入浴には、リラックス効果があり、ストレスなどで疲れた体を休めてくれる効果を期待できる。

 これまで日本人の浴槽入浴が、長期的なうつの発症とどう関連するかはよく分かっていなかった。

 そこで、東京都市大学などの研究グループは、高齢者を6年間にわたり追跡した大規模な研究により、習慣としての浴槽入浴がうつ発症の長期的な予防効果があるかを調査した。

 「日本老年学的評価研究(JAGES研究)」は、日本の全国の高齢者30万人を対象に実施されている大規模研究。超高齢社会となった日本の高齢者の健康長寿を実現するために、全国の30~64市町村と共同して行われている。

 研究グループは今回、2010年と2016年に調査対象となった全国14の自治体の65歳以上の高齢者1万1,882人のうち、自立しておりかつ老年期うつ病評価尺度(GDS)が4点以下でうつがなく、夏の入浴頻度の情報のある3,220人、および冬の入浴頻度の情報がある3,224人を対象に解析した。

浴槽入浴を毎日している高齢者のうつ発症は0.76倍に低下

 その結果、6年後のうつ発症の割合は、夏の浴槽入浴の回数が週0~6回の人で12.9%、週7回以上の人で11.2%、冬の浴槽入浴回数が週0~6回の人で13.9%、週7回以上で10.6%となり、いずれも週7回以上の浴槽入浴をしている人でうつ発症の割合が低く、とくに冬の浴槽入浴では差が大きかった(P=0.007)。

 年齢や性別など他の多くの要因を考慮して解析した結果、夏の浴槽入浴回数が週0~6回の人に対して週7回以上の人のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.84倍、冬の浴槽入浴回数が週0~6回の人に対して週7回以上の人のうつの罹りやすさ(オッズ比)は0.76倍となった。

 いずれも週7回以上浴槽入浴をしている人はうつにかかりにくく、とくに冬の浴槽入浴では、統計学的有意差があった(P=0.033)。

週7回以上の浴槽入浴によりうつ発症のリスクは0.76倍に低下

毎日浴槽入浴することで高齢者のうつ発症を予防できる可能性が示された
出典:東京都市大学、2023年

浴槽入浴による自律神経のバランス調整や睡眠改善の作用

 研究は、東京都市大学人間科学部学部長・教授の早坂信哉氏らによるもの。研究成果は、「日本温泉気候物理医学会雑誌」に掲載された。

 「うつ発症予防のため、とくにご高齢の人は、できれば毎日、浴槽入浴を行うことが勧められることが示唆される結果になりました」と、研究者は述べている。

 浴槽入浴の温熱作用を介した自律神経のバランス調整作用や、睡眠改善などが、うつ予防に有益に働いている可能性があるとしている。

 「今回の大規模な追跡調査により、浴槽入浴がうつ発症の予防につながることがはじめて分かりました。浴槽入浴は、"気持ちが良い""良く眠れる"といった入浴の短期的かつ主観的な作用だけでなく、高齢者の心身の健康維持のための重要な生活習慣である可能性があります」としている。

東京都市大学人間科学部
Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project (Journal of The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine 2023年7月24日)
[Terahata]
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