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妊娠糖尿病の女性の産後ケアを充実 産後女性の健康を改善 岡山大学「妊婦健診をふまえた予防的介入検査の実現など」

 妊娠中にはじめて発見される糖代謝異常が「妊娠糖尿病(GDM)」。

 妊娠糖尿病を発症する女性は増えている。とくに40代からの高齢出産になると、妊娠中に高血糖になるリスクは高くなる。

 また、妊娠糖尿病を発症した母親は、将来に2型糖尿病を発症するリスクが高いという調査結果も報告されている。

 このほど妊娠糖尿病妊婦の産後フォローを明確化する、「妊婦健診をふまえた予防的介入検査の実現と産後ケアの充実」を推進する事業が発表された。

 「今回の事務通知は、産後女性の健康状態の改善に寄与するだけでなく、たとえば次の妊娠を考えるきっかけとなるなど、少子化対策にも資する可能性があり、大変喜ばしく思っています」と、関係者はコメントしている。

妊娠糖尿病を発症する女性は増えている 将来の糖尿病リスクに影響

 妊娠糖尿病妊婦の産後フォローを明確化する、「妊婦健診をふまえた予防的介入検査の実現と産後ケアの充実」を推進する事業が、岡山県吉備中央町から発出された規制改革提案の第1号として、厚生労働省から疑義解釈通知として発表された。

 妊娠中にはじめて発見される糖代謝異常が「妊娠糖尿病(GDM)」。

 妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンなどの影響で、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性が強まることがある。そうなると、血糖を正常に保つために必要なインスリンの量が増えていく。

 妊娠糖尿病を発症する女性は増えている。国際糖尿病連合(IDF)によると、世界の新生児の17%は、母親の妊娠中の高血糖の影響を受けているという。とくに40代からの高齢出産になると、妊娠中に高血糖になるリスクが高くなる。

 妊娠糖尿病を発症し、妊娠経過中にインスリン治療を行っていた女性は、分娩後は耐糖能が正常化し、インスリンも不要になることが多い。

 しかし、妊娠糖尿病を発症した母親は、将来に2型糖尿病を発症するリスクが高いという調査結果が報告されている。

 一方で、食事や運動などの生活スタイルを改善することで、妊娠糖尿病を予防・改善できることも分かっている。

妊娠糖尿病を発症した女性が将来に糖尿病になるリスクを抑制

 吉備中央町は、赤ちゃんや妊産婦(夫)に対する"やさしい社会"を目指し、子育て世代が、子どもを"産み育てたくなる"社会を実現するため、「ベビーファースト宣言」をしている。

 今回の事業について、「まさに産後の疾病予防の充実を、当町から全国に発信できることを大変光栄に思います」とコメントしている。

 「今般の事務通知は、そのような糖尿病ハイリスク群の女性の糖尿病を予防することを通じて、産後女性の健康状態の改善に寄与するだけでなく、たとえば次の妊娠を考えるきっかけとなるなど、少子化対策にも資する可能性があり、当町としても大変喜ばしく思っています」としている。

 事業は、岡山大学が日本糖尿病・妊娠学会の協力のもと主導したもの。産後12週までに糖尿病が疑われる場合の管理料算定はすでに可能だったが、今回の事務連絡の発出により、産後12週以降の血糖管理についても、血糖測定などにより医学的に糖尿病が疑われる場合は算定が可能であることが明確化された。

 これにより、妊婦の糖尿病罹患予防に良い契機となるだけでなく、疾病予防により、医療費削減の可能性もあり、産後フォローなどの適正な実施が期待できる。加えて、産後女性のフォローアップを行う全国の医療機関や医療従事者の負担も軽減され、予防医療の充実の発信が期待されるとしている。

 「妊娠糖尿病に罹患した女性が、将来、糖尿病になるリスクを予防することは、次の妊娠を望むうえでのプレコンセプションケアの一環になり、さらには将来の医療費削減につながる可能性が高い」と、同大学ではコメントしている。

 「プレコンセプションケア」は、男女を問わず、妊娠などについての正しい知識の普及をはかり、健康管理を促す取り組みのこと。

プレコンセプションケアを推進 産後ケアを充実

 岡山県吉備中央町は、「デジタル田園健康特区」に2022年に指定された。この規制改革特区は、国家戦略特別区域諮問会議のデジタル田園都市国家構想の先駆的モデルとして、デジタル技術の活用により、少子高齢人口減少化など、とくに地方で問題になっている課題に焦点をあて、地域の課題解決を目指すもの。

 岡山大学は、同町と包括的な連携協定を締結しており、那須保友学長と、岡山大学病院産科婦人科教室の牧尉太講師が、立案と事業構築に向けアーキテクト(事業推進者)を担当している。

 特区である同町の提案の柱のひとつに、母子健康促進支援「妊婦健診をふまえた予防医療の実現と産後ケアの充実」がある。

 同大学などはこれまで、「妊産婦プレコンセプションケア/産後ケアの充実にむけた規制緩和」の対応を、定期的に開催される国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングで、内閣府地方創生推進事務局と厚生労働省(保険局)・こども家庭庁とともに説明してきた。

 同大学は、これを好機と捉えて、妊娠糖尿病既往女性の産後フォロー中の検査代(産後の糖負荷試験)の保険適用が地方厚生局に認められるか否かが、地域により異なっていることを懸念し、「保険適用が認められるケースとして国が統一的に示すべき」という提案をしてきた。

医療費削減につながる可能性も高い

 「妊娠糖尿病の産後ケアの充実・体制整備」は、日本糖尿病・妊娠学会が長年、ワーキングや厚生労働省と協議してきた議題だ。同学会でも「妊娠糖尿病既往女性の産後フォローアップに関する診療ガイドライン」を開示するという。

 「妊娠糖尿病の既往女性は、耐糖能が産後にいったん正常化しても、その後数年後に2型糖尿病となるリスクが高いことは、内外の研究報告により明らかです」と、同学会ではコメントしている。

 「生殖年齢女性の時期より2型糖尿病罹患のハイリスク女性を抽出し、産後女性のフォローアップを行うことは、次の妊娠のためのプレコンセプションケアの一環となるのみならず、医療費削減につながる可能性は高いと考えられます。このような視点より、今回の厚生労働省保険局医療課からの事務通知は、極めて高く評価できるものです」としている。

出典:岡山大学、2023年

岡山大学病院 産科婦人科
疑義解釈資料の送付について(その56) (厚生労働省 2023年8月30日)
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(2022年3月4日保医発0304第1号)(抄) (厚生労働省)
一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会
吉備中央町の子育て支援について (吉備中央町)
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