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肥満・メタボとも関連の深い「脂肪肝」 成人の4人に1人にリスクが 予防・改善する方法は?

 「脂肪肝」は、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態。

 脂肪肝のある成人は世界で増えており、4人に1人が、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまった非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と推定されている。

 食事や運動などの生活スタイルを見直すことが、脂肪肝の改善につながることが分かってきた。

 高カロリーのファストフードを食べすぎないようにして、魚の油などの体に良い脂肪もとり、バランスの良い食事をするのが効果的だ。

 質の良い睡眠も脂肪肝リスクを大きく減少することが報告されている。

脂肪肝は肥満・メタボとも関連が深い

 「脂肪肝」は、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態。脂肪肝になると、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの深刻な病気のリスクが高まる。

 脂肪肝の原因として大きいのは肥満やメタボ。2型糖尿病の人や糖尿病予備群も、脂肪肝とは関連が深い。

 食べすぎや運動不足などにより、摂取したエネルギーが消費するエネルギーを上回ると、余ったエネルギーは中性脂肪などに替えられる。処理されなかった中性脂肪は内臓や肝臓にどんどんたまっていく。

 肝細胞が壊され、肝機能が落ちると、炎症が引き起こされる。脂肪肝や肝炎を放置していると、肝臓が硬くなる肝硬変になり、さらに肝機能は落ちていく。

世界の成人の4人に1人が肝臓に脂肪が異常にたまったNAFLD

 米国心臓学会(AHA)は、脂肪肝のある成人は世界で増えており、4人に1人が、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまった非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と推定している。

 NAFLDは、定期的な健康診断で見逃されることも少なくないとしている。

 脂肪肝を予防・改善するために、健康的な体重を維持し、食事を改善し、運動を習慣として行い、2型糖尿病や脂質異常症のある人は、それらの適切な治療を受けることも重要になる。

 「NAFLDの治療の基礎となるのは、生活スタイルの改善です。食事では、脂肪のとりすぎや、血糖値を上げやすい単糖類の摂取を減らし、食物繊維が豊富に含まれる野菜や全粒穀物を食べることが勧められます」と、オレゴン健康科学大学の内分泌学・糖尿病・臨床栄養部門のバートン デュエル教授は言う。

 「肥満のある人は、体重を10%減らすと、脂肪肝は劇的に減少し、肝臓の線維化を改善できることが示されています。体重を5%以上減らしただけでも、効果を期待できます」。

 「健康的な食事をとり、ウォーキングなどの運動を1日に20~30分行うことも、脂肪肝を減らし、インスリン感受性を改善し、血糖値を下げるインスリンが働きやすくするのに役立ちます」としている。

ファストフードの食べすぎは脂肪肝のリスクを高める

 南カリフォルニア大学による別の研究では、ハンバーガーやフライドチキン、ピザなどのファストフードの食べすぎは、NAFLDのリスクを高めることが明らかになった。

 「肥満や2型糖尿病のある人が、1日の総カロリーの20%以上をファストフードからとっていると、肝臓の脂肪レベルが著しく上昇することが分かりました」と、同大学肝臓内科のアニ カーダシアン氏は言う。

 研究では、糖質や脂肪を多く含む高カロリーのファストフードを、少し食べすぎただけで、肝臓にダメージがもたらされる可能性が高まることも示された。

 研究グループは今回の研究で、米国健康栄養調査(NHANES)の2017年~2018年のデータを解析した。脂肪肝の検査を受けた約4,000人の成人の、ファストフードの利用状況について調査した。

魚の油が脂肪肝のリスクを減少 体に良い脂肪をとることが大切

 それでは、脂肪肝を予防・改善するためにどうしたら良いのか?

 シンガポールのデュークNUS医科大学による別の研究では、食事スタイルを改善し、動物性食品を食べすぎないようにして、サバやイワシなどの青魚に含まれるEPAやDHA、アマニ油や大豆油などに含まれるα-リノレン酸など、n-3系脂肪酸を十分にとるのが効果的であることが示された。

 「脂肪肝は、何年もかけて徐々に進行していきますが、放置していると、NAFLDや肝硬変といった深刻な病気につながる可能性があります」と、同大学心臓血管部門のチン チェン フェイ氏は言う。

 「n-3系脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸を含む脂質をとることが、NAFLDを長期的に予防するための手段となる可能性があります」。

 動物性食品に含まれる飽和脂肪酸は、とりすぎると血液中に悪玉コレステロールを滞らせ、動脈硬化の原因となる。一方、植物性食品に含まれる不飽和脂肪酸には、コレステロールを下げるなどの働きがある。飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えるのは効果的としている。

 「動物性脂肪の多い高カロリーの食事を続けていると、心血管疾患、肥満、2型糖尿病、さらには脂肪肝のリスクが上昇します。野菜や大豆食品、魚なども食べ、バランスの良い食事をすることをお勧めします」としている。

睡眠も大切 良い睡眠が脂肪肝リスクを29%減少

 米国内分泌学会が発表した別の研究によると、座ったまま過ごす時間が長く、運動不足の生活スタイルが続いていて、良い睡眠をとれていない人は、脂肪肝になるリスクが高い。

 意識して体を動かすようにし、ウォーキングなどの運動を習慣として行い、質の良い十分な睡眠をとるように生活スタイルを変えていくと、脂肪肝のリスクを減少できると考えられている。

 睡眠も大切で、研究では睡眠の質を改善すると、脂肪肝のリスクを29%減少できる可能性があることが示された。

 これは、中国の広東省食品・栄養・健康重点研究所などが、脂肪肝疾患をもつ5,011人の中国の成人を対象に、睡眠や就寝の時間や、睡眠の質について調査したもの。

 「睡眠の質を適度に改善しただけでも、脂肪肝のリスクを軽減できることが示されました。とくに不健康な生活スタイルをもつ人は、良い睡眠をとることが重要です」と、同研究所のヤン リュー氏は述べている。

About 1 in 4 adults has an often-missed liver disorder linked to higher heart disease risk (米国心臓学会 2022年4月14日)
Nonalcoholic Fatty Liver Disease and Cardiovascular Risk: A Scientific Statement From the American Heart Association (Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 2022年4月14日)
Consumption of fast food linked to liver disease (南カリフォルニア大学 2023年1月10日)
Quantifying the Negative Impact of Fast-food Consumption on Liver Steatosis Among United States Adults with Diabetes and Obesity (Clinical Gastroenterology and Hepatology 2023年1月10日)
Singapore scientists find that a special omega-3 lipid might prevent fatty liver disease (デュークNUS医科大学 2023年7月19日)
Blood-derived lysophospholipid sustains hepatic phospholipids and fat storage necessary for hepatoprotection in overnutrition (Journal of Clinical Investigation 2023年7月18日)
People with poor sleep behaviors may be at risk for fatty liver disease (米国内分泌学会 2022年7月28日)
Sleep Factors in Relation to Metabolic Dysfunction-Associated Fatty Liver Disease in Middle-Aged and Elderly Chinese (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2022年7月22日)
[Terahata]
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