ニュース
ウォーキングをしやすい地域に住むと肥満関連のがんが減少 ウォーカビリティと健康な街づくりが大切
2023年10月10日

運動を習慣として行っている人ほど、がんになるリスクは低下することが知られている。
しかし、さまざまな理由で、運動を習慣として行うのを困難に感じている人は多い。その理由のひとつは、歩きやすい環境を示す「ウォーカビリティ」が整備されていないことだ。
ウォーキングをしやすい地域に住むことで、女性の肥満に関連するがんの発症リスクは大幅に減少することが分かった。
運動によりがんリスクは低下 ウォーキングを妨げている理由は?
活発な運動や身体活動により、がんの発症リスクが低下することが知られている。 日本の国立がん研究センターなどの研究でも、身体活動量が高い人ほど、がんになるリスクは低下することが示されている。とくに男性では大腸がん、女性では乳がんで、運動の影響は大きいことが分かった。 18歳から64歳の人は、ウォーキングやそれと同等以上の強度の身体活動を、1日に60分行うことが推奨されている。 しかし、さまざまな理由で、運動を習慣として行うのを困難に感じている人は多い。その理由のひとつは、歩きやすい環境を示す「ウォーカビリティ」が整備されていないことだ。 日常生活のなかに歩行を取り入れやすい都市づくりが求められている。そのために必要なのは、▼人がたくさんいて、街に活気があること(人口密度)、▼さまざまな目的地や訪問先があること(多様性)、▼安全で快適に歩ける環境(安全性)などだ。ウォーキングしやすい地域に住むと肥満関連のがんが減少
ウォーキングをしやすい地域に住むことで、女性の肥満に関連するがんの発症リスクは大幅に減少することが、米国のコロンビア大学公衆衛生大学院などの調査で明らかになった。 「肥満は、女性の13種類のがんの発症リスクの上昇と関連しています。運動や身体活動により、これらのがんの一部のリスクを低下できることが分かっています」と、同大学院疫学部のアンドリュー ランドル教授は言う。 「しかし、運動を習慣として続けるのを困難に感じている女性は少なくなく、運動不足をなかなか減らせません。その原因を解明する必要があります」としている。 研究グループは今回、近所の歩きやすさと肥満に関連するがんのリスクの関連について着目した。1985年~1991年にニューヨーク市のマンモグラフィ検査センターを受診した34歳~65歳の女性1万4,274人を対象に調査した。 約24年間の追跡期間に、目的地へのアクセスのしやすさや人口密度などから、地域環境の歩きやすさのレベルを測定し、がんの診断記録と付け合わせた。都市のウォーカビリティが女性のがん発症を減少
その結果、歩きやすい地域に住んでいる女性は、そうでない女性に比べ、肥満に関連するがんの発症リスクが26%低いことが明らかになった。 とくに閉経後の乳がんのリスクが低下し、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫についても関連がみられた。 対象となった女性のうち、2016年末までに18%が肥満に関連するがんの診断を受けた。もっとも多かったのは、閉経後の乳がんで53%、次いで結腸直腸がんの14%、子宮内膜がんの12%が続いた。 「都市のウォーカビリティは、女性のがん発症に影響することが、長期の追跡調査により示されました」と、ランドル教授は言う。 「近隣に歩きやすい環境があることは、生活者の活動を促進し、運動や身体活動を全体的にサポートしやすくし、肥満の減少につながると考えられます。歩きやすさに留意した都市デザインが必要です」としている。車に依存しない都市環境をつくり住民の健康に貢献
高齢化社会での都市設計では、住民の健康と福祉にどのような影響をもたらすかを考慮することも求められる。 運動や身体活動を増やし、肥満を減らすために、個人レベルの介入をしただけでは、長期的な効果をえるのが難しく、費用もかかる。 「歩くことを促し、身体活動を全体的に増やし、車に依存しない都市環境を作りだすことができれば、不健康な体重を原因とする生活習慣病の予防や改善につながる可能性があります」と、ランドル教授は指摘している。 とくに貧困レベルの高い地域に住んでいる女性は、近所の歩きやすさと全体的な肥満に関連するがんリスクの低下との関連性がより強いことが示されたことから、近隣の社会的および経済的環境への介入も必要としている。 Women Living In More Walkable Neighborhoods Have Lower Rates of Obesity-Related Cancers (コロンビア大学公衆衛生大学院 2023年10月4日)Long-Term Exposure to Walkable Residential Neighborhoods and Risk of Obesity-Related Cancer in the New York University Women's Health Study (NYUWHS) (Environmental Health Perspectives 2023年10月4日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」