ニュース

ウォーキングをしやすい地域に住むと肥満関連のがんが減少 ウォーカビリティと健康な街づくりが大切

 運動を習慣として行っている人ほど、がんになるリスクは低下することが知られている。

 しかし、さまざまな理由で、運動を習慣として行うのを困難に感じている人は多い。その理由のひとつは、歩きやすい環境を示す「ウォーカビリティ」が整備されていないことだ。

 ウォーキングをしやすい地域に住むことで、女性の肥満に関連するがんの発症リスクは大幅に減少することが分かった。

運動によりがんリスクは低下 ウォーキングを妨げている理由は?

 活発な運動や身体活動により、がんの発症リスクが低下することが知られている。

 日本の国立がん研究センターなどの研究でも、身体活動量が高い人ほど、がんになるリスクは低下することが示されている。とくに男性では大腸がん、女性では乳がんで、運動の影響は大きいことが分かった。

 18歳から64歳の人は、ウォーキングやそれと同等以上の強度の身体活動を、1日に60分行うことが推奨されている。

 しかし、さまざまな理由で、運動を習慣として行うのを困難に感じている人は多い。その理由のひとつは、歩きやすい環境を示す「ウォーカビリティ」が整備されていないことだ。

 日常生活のなかに歩行を取り入れやすい都市づくりが求められている。そのために必要なのは、▼人がたくさんいて、街に活気があること(人口密度)、▼さまざまな目的地や訪問先があること(多様性)、▼安全で快適に歩ける環境(安全性)などだ。

ウォーキングしやすい地域に住むと肥満関連のがんが減少

 ウォーキングをしやすい地域に住むことで、女性の肥満に関連するがんの発症リスクは大幅に減少することが、米国のコロンビア大学公衆衛生大学院などの調査で明らかになった。

 「肥満は、女性の13種類のがんの発症リスクの上昇と関連しています。運動や身体活動により、これらのがんの一部のリスクを低下できることが分かっています」と、同大学院疫学部のアンドリュー ランドル教授は言う。

 「しかし、運動を習慣として続けるのを困難に感じている女性は少なくなく、運動不足をなかなか減らせません。その原因を解明する必要があります」としている。

 研究グループは今回、近所の歩きやすさと肥満に関連するがんのリスクの関連について着目した。1985年~1991年にニューヨーク市のマンモグラフィ検査センターを受診した34歳~65歳の女性1万4,274人を対象に調査した。

 約24年間の追跡期間に、目的地へのアクセスのしやすさや人口密度などから、地域環境の歩きやすさのレベルを測定し、がんの診断記録と付け合わせた。

都市のウォーカビリティが女性のがん発症を減少

 その結果、歩きやすい地域に住んでいる女性は、そうでない女性に比べ、肥満に関連するがんの発症リスクが26%低いことが明らかになった。

 とくに閉経後の乳がんのリスクが低下し、子宮内膜がん、卵巣がん、多発性骨髄腫についても関連がみられた。

 対象となった女性のうち、2016年末までに18%が肥満に関連するがんの診断を受けた。もっとも多かったのは、閉経後の乳がんで53%、次いで結腸直腸がんの14%、子宮内膜がんの12%が続いた。

 「都市のウォーカビリティは、女性のがん発症に影響することが、長期の追跡調査により示されました」と、ランドル教授は言う。

 「近隣に歩きやすい環境があることは、生活者の活動を促進し、運動や身体活動を全体的にサポートしやすくし、肥満の減少につながると考えられます。歩きやすさに留意した都市デザインが必要です」としている。

車に依存しない都市環境をつくり住民の健康に貢献

 高齢化社会での都市設計では、住民の健康と福祉にどのような影響をもたらすかを考慮することも求められる。

 運動や身体活動を増やし、肥満を減らすために、個人レベルの介入をしただけでは、長期的な効果をえるのが難しく、費用もかかる。

 「歩くことを促し、身体活動を全体的に増やし、車に依存しない都市環境を作りだすことができれば、不健康な体重を原因とする生活習慣病の予防や改善につながる可能性があります」と、ランドル教授は指摘している。

 とくに貧困レベルの高い地域に住んでいる女性は、近所の歩きやすさと全体的な肥満に関連するがんリスクの低下との関連性がより強いことが示されたことから、近隣の社会的および経済的環境への介入も必要としている。

Women Living In More Walkable Neighborhoods Have Lower Rates of Obesity-Related Cancers (コロンビア大学公衆衛生大学院 2023年10月4日)
Long-Term Exposure to Walkable Residential Neighborhoods and Risk of Obesity-Related Cancer in the New York University Women's Health Study (NYUWHS) (Environmental Health Perspectives 2023年10月4日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年06月10日
【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
2025年06月09日
【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
2025年06月09日
健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
2025年06月09日
ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
2025年06月02日
【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
2025年06月02日
【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
2025年06月02日
女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
2025年06月02日
自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
2025年05月30日
都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶