ニュース
わずか10分の「階段の上り下り」が効果的な運動に 短い時間に集中して運動 心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下
2023年10月16日

階段を上ることは、立派な運動になる。階段の上り下りを毎日行うだけで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが大幅に減少することが明らかになった。
階段の上り下りを、数分間という短い時間行っただけでも、筋肉や心臓血管の健康を改善できることも分かった。
運動をする必要があると理解はしていても、毎日忙しくて「運動の時間をとれない」という人は多い。そういう人も、職場や近所の階段の昇降であれば取り組みやすい。
階段の上り下りが立派な運動に
階段を上ることは、立派な運動になる。階段の上り下りを毎日3~5階分行うだけで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが20%以上減少するという研究を、米国のチューレーン大学が発表した。 エレベーターやエスカレーターをなるべく使わないようにして、自分の足で階段を上るだけで、良い運動効果が生まれるという。階段の昇降はすぐに取り組める運動で、特別な費用も必要ない。 運動をする必要があると理解はしていても、仕事・家事・育児・介護などで忙しく、「運動の時間をとれない」という人は多い。そういう人も、職場や近所の階段の昇降であれば、比較的取り組みやすいのではないだろうか。 「階段を使うことで、トレーニングジムへ行ったのと同じような運動効果を期待できます」と、同大学肥満研究センターのルー チー所長は言う。 「階段の昇降は高強度の身体活動であり、時間効率の良い運動法となりえます。続けていれば、心肺機能を高められ、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の予防にもつながります」としている。階段の昇降をしている人は心血管疾患のリスクが低下
運動には万能薬のような作用がある。運動を続けることで、糖尿病や高血圧が改善し、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病、がんなど、さまざまな病気の予防や改善につながる。 研究グループは、英国バイオバンクに参加した45万8,860人を12.5年(中央値)追跡したデータを用いて、階段の昇降と健康状態の関連を調べた。 その結果、階段の上り下りを毎日50段分くらい行っている人は、とくに心血管疾患のリスクが低いことが明らかになった。 階段の昇降をまったくしていないという人に比べ、階段の昇降を毎日16~20回行っている人では、冠動脈疾患や虚血性脳卒中などの動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが23%低かった。11~15回行っている人でも22%低かった。 英国バイオバンクは、40~69歳の中高年約50万人を追跡して調査している大規模研究で、血液やDNAサンプル、生活習慣や身体活動レベルなどの関連を調べている。毎日数分間の階段昇降で筋肉や心臓血管を改善できる

「運動の間食」 1日に10分の運動で効果が
「1日に10分という短い時間であっても、階段上りのような負荷の高い運動を集中して行うことで、健康効果を期待できることが証明されました」と、同大学で運動学を研究しているジョナサン リトル氏は言う。 「これは"運動の間食"とも言えるものです。座ったまま過ごす時間の長い生活スタイルをもつ人は、コーヒーを飲んだり、トイレに行くための休憩と同じくらいの時間、階段を勢いよく上るだけで、体力を十分に高められます」。 「オフィスビルで働いている方や集合住宅に住んでいる方は、朝・昼・夕に階段を元気よく上る余裕があるのではないでしょうか。そのことが効果的なトレーニングになります」としている。 研究グループは、冠状動脈疾患があり心臓手術を受けた患者を対象とした研究も実施した。指導者のサポートを受けながら階段の昇降に取り組んだ人は、4週間で心肺機能が向上し、その後の8週間も良い状態を維持できた。 「冠状動脈バイパス手術やステント手術を受けた患者さんは、同年齢の健康な人に比べて、筋肉が減少していることが多いのですが、そうした方でも、やはり階段の昇降により筋肉の改善がみられました」と、同大学運動学部のモーリーンマクドナルド教授は述べている。 Walking more than five flights of stairs a day can cut risk of heart disease by 20%, study says (チューレーン大学 2023年9月28日)Daily stair climbing, disease susceptibility, and risk of atherosclerotic cardiovascular disease: A prospective cohort study (Atherosclerosis 2023年 2023年9月15日)
Exercise 'snacks' make fitness easier: Researchers find short bouts of stairclimbing throughout the day can boost health (マックマスター大学 2019年1月18日)
Do stair climbing exercise "snacks" improve cardiorespiratory fitness? (Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism 2019年1月16日)
Stair climbing offers significant cardiovascular and muscular benefits for heart patients (マックマスター大学 2021年5月17日)
Brief Vigorous Stair Climbing Effectively Improves Cardiorespiratory Fitness in Patients With Coronary Artery Disease: A Randomized Trial (Frontiers in Sports and Active Living 2021年2月16日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月05日
- 【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月30日
- 都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査