「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正 "カスハラ"や感染症リスクも考慮 厚生労働省

ストレスの強さを評価する際の具体的事例に、顧客や利用者などからの著しい迷惑行為(いわゆるカスターハラスメント)や感染症のリスクが高い業務への従事を加えるなど、社会情勢の変化に合わせた改正内容となっている。
精神障害の労災保険給付請求件数は令和4年度に2,683件あり、年々増加している。精神障害や自殺事案については、2011年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災認定が行われてきたが、策定から約10年が経過する中で社会情勢は大きく変化。
そのため厚生労働省の専門検討会において、最新の医学的見地も踏まえて認定基準全般について検討が行われてきた。2023年7月に報告書が取りまとめられたことを受けて9月1日、認定基準が改正された。
今回の改正では「業務による心理的負荷評価表」が見直され、「具体的出来事」に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)と、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」が追加された。また、心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例が拡充された。
精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲についても見直された。改正前は悪化前おおむね6カ月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ業務起因性が認められなかったが、改正後は「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める、となった。
また医学意見の収集方法を効率化するため、これまで専門医3人の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き1名の意見でも決定できるよう変更されている。
厚生労働省は改正後の基準に基づき、業務により精神障害を発病した人に対して一層迅速で適正な労災補償を行なっていく、としている。
厚生労働省は働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』を開設するなどし、職場のメンタルヘルス対策や過重労働対策につながる情報提供に力を入れている。
上記検討会の報告書では「業務上の事由により被災した労働者やその遺族に対しては労災保険給付が行われるが、人の生命・健康はかけがえのないものであり、過労死等はあってはならない」と明記。
引き続き業務による心理的負荷を原因とする精神障害防止のため、メンタルヘルス対策や長時間労働削減、過重労働による健康障害の防止対策、ハラスメント対策などが求められている。
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」(厚生労働省/2023年9月1日) 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

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