ニュース

女性の更年期障害は職場にも広範囲に影響 女性の健康を改善すると職場も良くなる 更年期応援ガイドを策定

 女性の更年期障害は、職場にも広範囲に影響をおよぼしているとして、更年期を迎えた女性を支援するための新しいガイドが策定された。

 更年期を迎えた女性にケアを提供すると職場も良くなるとしている。女性の1人ひとりに個別化した治療オプションを提供することで、女性の健康を改善できる。

更年期障害は職場にも影響をもたらしている

 米国のバージニア大学医療システム(UVA Health)などは、更年期を迎えた女性を支援するための新しいガイドを策定した。女性の更年期障害は、職場にも広範囲に影響をおよぼしているとしている。

 更年期を迎えた女性の「生活の変化」が、自身の健康や職場環境、さらには社会経済にあたえる影響は深刻だが、適切な対策をすることでネガティブな影響を取り除くことができるとしている。

 40代以降の女性だけでなく、男性に起こることもある更年期障害では、性ホルモンの減少により、さまざまな症状が起こる。

 「女性の閉経期への移行により起こる、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌の変化などにより、不規則な月経周期、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗、膣の乾燥、気分のふさぎこみ、睡眠障害、頭痛など、さまざまな身体的および精神的な症状が起こる場合があります」と、同大学産婦人科で更年期障害について研究しているジョアン ピンカートン教授は言う。

更年期障害の治療を受けられている女性は少ない

 ほとんど症状を感じないまま更年期を終える女性もいるが、全体で8割以上の女性がなんらかの更年期障害の症状を経験しているという。

 一方で、「更年期障害の症状に対して、効果的で個別化された、科学的根拠にもとづいた治療を受けられている女性は15%未満と少数です」と、ピンカートン教授は指摘している。

 ピンカートン教授らは、さまざまな国の更年期障害の専門家が協力して、更年期障害について分かっていることを要約し、更年期障害のタイムラインと治療法についてさらなる研究をする必要があると指摘。

 「更年期障害は、それを経験している当人だけでなく、ともに生活し、その人を愛し、いっしょに働いている人たちにも影響を及ぼします」としている。

更年期を迎えた女性にケアを提供すると職場も良くなる

 研究グループによると、閉経期への移行にともなうホルモンの変化は、症状と長期的な全身影響、とくに心臓代謝や筋骨格系の健康への悪影響の両方を引き起こす可能性があるという。

 また、更年期障害の中程度から重度の症状は、仕事を遂行する能力の低下と関連しており、更年期障害に悩む女性にとっては、職場での仕事の成果の低下と関連していることが多い。

 女性の更年期障害は、パートナーのいない女性、喫煙者、過体重や肥満のある女性、介護をしている女性、住環境が良好でない女性など、特定のサブグループにとくに影響が強い。

 英国の女性を対象とした調査では、更年期障害の症状に苦しんでいると女性は、経済的問題、うつ病、健康上の問題に悩んでいる割合が高いことが示された。英国では、女性の更年期障害について職場で取り組み、その悪影響を最小限に抑える対策が行われている。

 更年期を迎えた女性の1人ひとりに個別化した治療オプションを提供することで、女性の健康を改善することは可能で、それは職場でのニーズに応えることにもつながるとしている。

ホルモン補充療法が治療の中心

 近年は、更年期障害の効果的な治療を選択できるようになってきた。更年期障害の治療は、婦人科で受けられるが、最近では「女性ヘルスケア外来」を設ける医療機関も増えてきているという。

 更年期障害の治療の中心となっているのは、ホルモン補充療法だ。これは、減少したエストロゲンなどを補充する療法で、日本でも保険適用になっている。

 ホルモン補充療法は、更年期障害の根本的な治療法としてみられており、骨量の減少を軽減し、心臓代謝への好ましい効果も期待できるという。

 ホルモン補充療法は、1人ひとりに合わせて個別に行う必要があり、そのために問診が重要となる。

 どのような症状があり、いつから起きているかや、初経や閉経の年齢、月経の周期・日数など、さらには生活環境やストレスなどの基本的な情報を医師と共有する必要がある。

漢方薬などを使った補完代替医療も

 ただし、科学的根拠にもとづくホルモン補充療法を受けられている女性はまだ少数だ。また、医療保険では受けられる治療が限られている。

 「今後は、より多くの女性が、少ない負担で治療を受けられるように環境を改善し、治療の選択肢の有効性と安全性についてもさらに研究を進める必要があります」と、ピンカートン教授は指摘する。

 更年期症状に対する補完代替医療(CAM)の選択肢も増えている。日本でも、更年期障害の治療に漢方薬が使われることが多く、保険適用にもなっている。

 体全体の調子を整えてくれる漢方薬は、全身にさまざまな症状があらわれる更年期の不調を和らげるのに向いている。のぼせや肩こり、疲れやすい、不安、イライラといった不定愁訴を緩和するものも使われている。

 ただし漢方薬は、効き目はおだやかではあるものの、やはり薬なので副作用もある。女性の1人ひとりに合った処方ができるようにするためにも、有効性や安全についての調査が必要になっている。

更年期の健康状態を最適化し健康に年齢を重ねる

 更年期症状を緩和すると謳ったサプリメントや栄養補助食品も多くが販売されている。しかし、なかには高価なものもあり、その有効性や安全が不明なものが多い。

 「更年期障害に苦しんでいる女性や、エストロゲンレベルの低下にともない健康リスクが上昇している女性が、科学的な根拠にもとづく効果的なホルモン療法や非ホルモン療法を選択できるようにする必要があります」と、ピンカートン教授は述べている。

 「すべての女性にとって、更年期の健康状態を最適化することは、健康に年齢を重ねていくための入り口となります」としている。

Menopause's Effects on the Workplace, and Other Surprising Impacts (バージニア大学医療システム 2023年10月25日)
Menopause--Biology, consequences, supportive care, and therapeutic options (Cell 2023年9月6日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
2025年02月25日
【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
2025年02月25日
ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月17日
中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
2025年02月17日
高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」
2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶