ニュース

高齢者の孤立は認知症と死亡のリスクの上昇をまねく? 1人暮らしだと影響は弱い ペットを飼っている高齢者はリスクが低い

 他者との交流頻度が少ない高齢者は、認知機能の低下が総死亡に与える影響が強いことが、東京都健康長寿医療センターの調査で明らかになった。

 しかし、独居(1人暮らし)の高齢者は、その影響が弱いことも示された。

 同センターは、ペット(コンパニオンアニマル、伴侶動物)を飼っている高齢者は、認知症の発症リスクが低いことも明らかにしている。

社会的に孤立している高齢者はリスクが上昇 孤立のありようによって異なる影響も

 認知機能の低下や認知症は、将来の死亡リスクを高める因子として知られている。

 他者との交流頻度が少ない高齢者は、認知機能の低下が総死亡に与える影響が強いことが、東京都健康長寿医療センターの調査で明らかになった。

 しかし、独居(1人暮らし)の高齢者は、その影響が弱いことも示された。

 高齢者の「独居」と「希薄なつながり」は、ともに孤立の指標として用いられることが多いものの、そのあり方によって影響は異なることが示された。

 同センターは、ペット(コンパニオンアニマル、伴侶動物)を飼っている高齢者は、認知症の発症リスクが低いことも明らかにしている。

 ペットの飼育と運動習慣や社会的孤立との組み合わせ別に、認知症の発症リスクを調べた結果、ペットを飼っていて運動習慣のある高齢者や、社会的孤立の少ない高齢者で、認知症のリスクは低かった。

7万人超の高齢者の認知機能低下について調査

 認知機能低下や認知症は、将来の死亡リスクを高める因子として知られており、この関係性に影響を与える要因として、「性別」「人種」「認知症のタイプ」などが報告されているが、「孤立」がもたらす影響についてはよくわかっていない。

 そこで同センターの研究チームは、都市部高齢者の疫学データを用い、認知機能低下と総死亡の関係性に対して、「孤立」がどのように作用するかを調べた。

 孤立の定義として、▼世帯構成(独居か否か)、▼社会的ネットワーク(他者との交流頻度)、▼社会参加活動(地域活動等への参加状況)の3つを取り上げた。

 研究グループは2015年、東京都に居住する介護保険認定を受けていない65歳以上の高齢者に、質問紙調査を郵送し、7万8,917人から回答を得た(回収率59.8%)

 自宅以外で居住している高齢者、認知症の診断を受けている高齢者を除く、7万4,872人を分析対象とし、10項目の自記式チェックリストにより、認知機能低下について測定した。

高齢者の孤立も多様化 孤立にもさまざまな形態が

 その結果、高齢者の認知機能低下は、死亡リスクを1.37倍上昇させることが分かった。

 詳しく分析したところ、他者との交流頻度が少ない高齢者では、多い高齢者に比べて、認知機能低下が総死亡に与える影響は強いことが分かった[1.60倍 対 1.24倍]。

 さらに世帯構成別にみたところ、独居(1人暮らし)の高齢者では、誰かと同居している高齢者に比べ、その影響は弱いことが示された[1.13倍 対 1.43倍]。

 研究は、東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チームの村山洋史・研究副部長らによるもの。

 「高齢化が進展する日本では、認知機能が低下した高齢者や、認知症のある高齢者への支援やケア体制の構築が、喫緊の課題になっていますが、その際には孤立の種類を把握し、十分に考慮すべきであることが示唆されました」と、研究者は述べている。

他者との交流頻度が少ない高齢者は、多い高齢者に比べて、認知機能低下が死亡リスクに与える影響が強い

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2023年

高齢者のペット飼育
犬を飼っている人は認知症の発症リスクが40%減少

 同センターはもうひとつの研究で、「ペット飼育と認知症発症リスク」についても調査した。

 とくに、ペット(コンパニオンアニマル、伴侶動物)である犬の飼育を通じた運動習慣や社会とのつながりにより、認知症の発症リスクが低下することをはじめて明らかにした。

 犬を飼っている高齢者は、そうでない高齢者に比べて、認知症の発症リスクが40%低いことが分かった。

 また、犬を飼っていて、運動習慣のある高齢者、社会的な孤立の状態にない高齢者は、認知症の発症リスクがそれぞれ低下することも明らかにした。

 研究グループはこれまで、犬を飼育している高齢者では、フレイルや自立喪失が発生するリスクが大幅に低いことも報告している。

 また、犬の飼育者のうち、運動習慣をもつ高齢者は、負の健康事象が発生するリスクが低いことも確認している。

 調査では、2016年に東京都での疫学調査に協力した1万1,194人のデータを解析。対象者の平均年齢は74.2歳、女性の割合は51.5%だった。

 研究は、東京都健康長寿医療センター 社会参加とヘルシーエイジング研究チームの谷口優氏(協力研究員)、藤原佳典氏らによるもの。

 「日常的に犬を世話することにより、飼育者が身体活動や社会参加を維持することが、自身の認知症の発症リスクを低下させることにつながっている可能性があります」と、研究者は述べている。

犬を飼っている高齢者は、そうでない高齢者に比べて、認知症の発症リスクが40%低い
犬を飼っていて、運動習慣のある高齢者、社会的孤立の状態にない高齢者は、認知症リスクがそれぞれ低下

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2023年

東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム
The relationship between cognitive decline and all-cause mortality is modified by living alone and a small social network: A paradox of isolation (Journals of Gerontology: Series B 2023年9月19日)
Protective effects of dog ownership against the onset of disabling dementia in older community-dwelling Japanese: A longitudinal study (Preventive Medicine Reports 2023年12月日)

[Terahata]