ニュース

閉経後の女性の健康ニーズを満たす「アート療法」 ダンスや運動を取り入れると体重が減少 メンタルヘルスも改善

 閉経を迎えた肥満のある女性の健康ニーズを満たすために、ダンスや運動なども取り入れたクリエイティブな「アート療法」が効果的という新しい研究が発表された。

 最近、更年期を迎えた女性や、閉経期に入ったばかりの女性にとって、運動をすることが有益という研究も発表されている。

 運動に取り組んだ女性は、血栓リスクのマーカーが低下し、心臓病や脳卒中のリスクが減少したことが示された。

閉経を迎えた女性の健康ニーズを満たす「アート療法」

 女性は人生のほぼ3分の1を閉経後に過ごしている。女性は閉経期に移行すると、健康状態に変化が生じやすく、生活の質(QOL)にも影響があらわれる。

 この時期にマイナスの経験をする女性は多い。メンタルヘルス不調や、過体重・肥満、炎症を促すサイトカインやコルチゾールの増加など、心血管疾患のリスクも高まることが知られている。

 閉経を迎えた肥満のある女性の健康ニーズを満たすために、「アート療法」が効果的という新しい研究を、米国のドレクセル大学が発表した。

 アート療法とは、芸術などの創作活動と心理学を組み合わせたもので、絵画・彫刻・写真・音楽・ダンスなどの芸術の創造、創作の過程、心理療法などを通し、メンタルヘルス不調などを改善しようというもの。

 米国では、州によって「アートセラピスト」が資格として公式に認められている。アートセラピストになりたい人は、アートセラピー認定評議会が認定した大学院の修士課程で専門的な教育とトレーニングを受け、臨床心理指導やクライアントとの対面臨床研修などを受ける必要がある。

アート療法に参加した女性は自己効力感やストレスなどが改善 体重も減少

 研究には、過体重や肥満のある、閉経後の58歳~65歳の女性が参加した。参加者は、ダンスや運動なども取り入れたアート療法と栄養教育のセッションに、交互に16週間取り組んだ。栄養士に加えて、アート療法では、専門の芸術療法士やダンス・運動療法士がサポートを務めた。

 アート療法では、セッションのテーマを決め、それに関連した体の動きのウォームアップ(ストレッチ、呼吸、軽い運動など)をしたり、一定の時間内で自分の頭に浮かんだことをありのまま描いたり書き出す「ジャーナリング」などに取り組んだ。

 その結果、アート療法に参加することで、すべての参加者は、BMI(体格指数)や血圧値などが低下した。

 さらに、参加者の多くは閉経後の生活で、困難な感情・悲しみ・嘆き・不安・抑圧・ストレスなどを感じていたが、アート療法に参加した後は、QOL・自己効力感・ストレス・不安・自己の身体に対する意識などが幅広く改善したことが示された。

閉経後の女性に合った統合的アプローチが必要

 「栄養教育とダンスや運動なども取り入れたクリエイティブなアート療法の組み合わせは、肥満や過体重のある閉経後の女性の健康管理のサポートや、心理社会的幸福を高めるのに有益であることが示されました」と、同大学看護・健康学部の専門職大学のレベッカ ディーテリッヒ ハートウェル氏は言う。

 「残念ながら閉経後の女性が治療の対象となることは多くなく、多くの女性が適切な治療を受けられていません。閉経後の女性の身体的なニーズと心理社会的なニーズの両方を満たす統合的アプローチが、健康に全体的なプラスの影響をもたらす可能性があります」としている。

更年期や閉経を迎えた女性が
運動に取り組むと血管疾患リスクが大幅に減少

運動をすることは女性にとっても有益

 閉経後の女性が、運動を習慣として行うと、脳卒中のリスクを大幅に軽減できるという別の研究を、英国のスウォンジー大学が発表した。

 「とくに最近、更年期を迎えた女性や、閉経期に入ったばかりの女性にとって、運動をすることは有益である可能性があります。運動に取り組んだ女性は、血栓リスクのマーカーが低下することが示されました」と、同大学救急医学のエイドリアン エヴァンス教授は言う。

 一般的に年齢を重ねるにつれて、脳卒中などの血管疾患のリスクは上昇するが、閉経後の女性は同年齢の男性に比べ、脳卒中のリスクが高いことが知られている。

 理由のひとつとして、女性ホルモンであるエストロゲンは、血管疾患から保護する働きをするが、閉経後はその分泌が大幅に減少してしまうことが考えられる。

 さらには、閉経期を迎えた女性は、免疫炎症反応が起こりやすく、血液の凝固や血流に異常が生じやすくなり、それが結果として脳卒中を引き起こしている可能性があるという。

運動に取り組んだ女性は心臓血管の健康が改善

 しかし研究では、有酸素トレーニングなどの運動を定期的に行う8週間のプログラムに参加した27人の女性は、とくに閉経から5年以内の女性では、血栓質量の40%が減少するなど、血栓リスクのマーカーが低下し、心臓血管の健康が改善したことが示された。

 「活発なウォーキングなどの有酸素トレーニングに取り組むと、年齢に関係なく恩恵を受けられますが、閉経時または閉経直後の女性が運動をはじめると、とくに有益な効果をえられる可能性があります」と、エヴァンス教授は指摘している。

 「更年期を迎えた女性や、閉経期に入ったばかりの女性は、なるべく運動をする機会をみつけて、積極的に体を動かすことを心がけるべきでしょう。このパイロット研究は、今後さらに大規模で長期にわたる試験に引き継がれる予定です」としている。

Early Study Shows Health Benefits of Creative Arts Therapies and Nutrition Education for Postmenopausal Women (ドレクセル大学 2024年1月11日)
A Creative Arts Therapy and Nutrition Education Approach for Postmenopausal Women (Journal of the American Art Therapy Association 2023年11月8日)
Master of Arts in Art Therapy and Counseling (ドレクセル大学)
Regular exercise could reduce the risk of stroke in post-menopausal women, according to new research partly undertaken in Swansea (スウォンジー大学 2023年12月15日)
Exercise training induces thrombogenic benefits in recent but not late postmenopausal females (American Journal of Physiology 2023年7月21日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶