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中年期に生活スタイルが健康だった人は認知症リスクが低下 バランスの良い食事が大切 年齢を重ねても生き生きと

 中年期にバランスの良い健康的な食事スタイルを保ち、高血圧や糖尿病などを予防・改善できていた人は、年齢を重ねても、記憶障害などの認知機能の低下が少ないことが明らかになった。

 健康的な生活をおくっている女性が、認知症を発症するリスクが低いことは、1万人超の女性を10年間追跡して調査した研究でも明らかになっている。

中年期に食事を改善すると認知症リスクが低下

 中年期にバランスの良い健康的な食事スタイルをもち、高血圧や糖尿病などを予防・改善できていた人は、年齢を重ねても、記憶障害などの認知機能の低下が少ないことが、1万4,000人以上の女性を30年以上追跡した大規模な調査で明らかになった。

 若い頃に食事の改善を行うことで、年齢を重ねてから認知機能の低下を抑制でき、その後の人生に大きく影響することが示された。

 とくに、中年期に高血圧を予防・改善するのに効果的な食事をしていた女性は、数十年後に認知機能の低下がみられる可能性が17%減少していた。

 「中年期に食事スタイルが健康的だと、年齢を重ねてから認知機能の低下を抑制でき、認知症を予防するのに効果的であることが示されました」と、米ニューヨーク大学ポピュレーション保健学部のユー チェン教授は言う。

高血圧を予防・改善するための「DASHダイエット」

 高血圧を予防・改善するために考案された「DASHダイエット」は、健康的な食事スタイルとして知られ、2型糖尿病や脂質異常症などの改善にも有用とされている。

▼野菜・果物、▼豆類・ナッツ類・大豆食品・乳製品、▼食物繊維の多い全粒穀物(玄米、ふすまを取っていない麦、全粒粉のパンなど)、▼脂肪の少ない肉類や魚を十分に食べて、▼塩分を控える、▼アルコールを飲みすぎない、▼高カロリーのお菓子や飲料を控える食事スタイルが奨励されている。

 研究では、平均年齢79歳となった現在では、全体で33%の女性が、「最近の出来事や買い物リストを思い出せない」「口頭での指示やグループでの会話を理解しにくくなった」「馴染みのある街の通りを移動するのに困難を感じる」など、認知機能についていくつかの不安を抱えていた。

 しかし、「DASHダイエット」を実行していた女性は、年齢を重ねても認知機能の低下が17%少ないことが示された。

健康的な食事は認知機能の低下や認知症のリスクを減らす

 研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受けて行われたもの。研究グループは今回、同大学が中心となり実施している大規模研究「ウィメンズヘルス研究」に参加した1万4,000人以上の女性のうち、5,116人のデータを分析した。

 この研究では、食事や運動などの生活スタイルが、高血圧や糖尿病などの慢性疾患や、女性が多く発症するがんなどにどのように影響するかを調査している。

 研究開始時の平均年齢が49歳だった参加者を30年以上追跡して調査し、1985年~1991年には食事スタイルなどについても詳しく質問した。

 「DASHダイエットにより、カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルや食物繊維が含まれる植物ベースの食事をとり、体に悪い飽和脂肪酸・コレステロール・ナトリウム・糖質などを減らすことが、認知機能の低下や認知症のリスクを減らすのに役立っている可能性があります」と、チェン教授は指摘している。

中年期の健康的な生活スタイルにより認知症を予防 7つの健康習慣

 健康的な生活をおくっている女性が、認知症を発症するリスクが低いことは、1万3,720人の女性を10年間追跡して調査した別の研究でも明らかになっている。

 食事や運動など、7項目の健康的な生活スタイルの実行スコアが高い女性は、認知症リスクが6%低下することが明らかになった。

 米国心臓学会(AHA)が提唱している「ライフズ シンプル 7」は、(1) 血圧を管理する、(2) 脂質を管理する、(3) 血糖値を管理する、(4) 健康的な食事を続ける、(5) 運動を習慣として行う、(6) 健康的な体重を維持する、(7) タバコを吸わない、という7項目で構成される。

 「中年期に健康的な生活スタイルを選択することが、認知機能が低下するのを防ぎ、年齢を重ねてから認知症を発症するリスクを減少するのに役立つことが示されました」と、ブリガム アンド ウイメンズ病院で予防医学を研究しているパメラ リスト氏は述べている。

 研究グループは、平均年齢が54.2歳の1万3,720人の女性を、10年後(2004年)まで追跡して調査した。ベースラインでの「ライフズ シンプル 7」の実行スコアの平均は4.3で、10年後は4.2だった。

ライフズ シンプル 7

1健康的な食事を続ける

 健康的な食事を続ければ、体重、血圧値、血糖値、コレステロール値を改善できる。カロリーのとりすぎを防ぎながら、必要な栄養素をバランスよくとることが大切。そのために、1日3食をしっかりと食べ、野菜、海藻、大豆食品、魚類、果物などを適度に食べることが勧められる。
 塩分のとりすぎも脳の血管の老化を促す。塩分は1日6g以下を目指そう。糖質のとりすぎにも注意する。

2運動を習慣として行う

 運動を習慣として続ければ、血糖値・血圧値が下がりやすくなり、悪玉のLDLコレステロールが減り、善玉のHDLコレステロールが増えやすくなる。骨が丈夫になり骨粗鬆症の予防につながり、がんの発症リスクも下げられる。運動はストレス解消に役立ち、夜はよく眠れるようになる。
 運動を行うと、酸素を体内に取り入れられ、脳の血液量が増える。認知症を予防するためにも、運動は効果的だ。
 座ったまま過ごす時間が長い生活スタイルは、健康に悪影響をもたらす。職場や家などで座ったままの時間が長引いたときは、立ち上がって体を動かそう。

3健康的な体重を維持する

 肥満を抑制し、標準体重を維持することが大切だ。肥満は体にとって異常な状態で、とくに内臓脂肪が一定以上にたまった内臓脂肪型肥満は、2型糖尿病や高血圧のリスクも高める。
 肥満に脂質異常や、高血圧、高血糖などが重なると、血管にさらに障害が起きやすくなり、血流が悪くなり、血液が固まりやすい状態になり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まる。
 肥満の人は体重を減らしただけでも、これらの検査値が改善することが多い。3~6ヵ月かけて現在の体重を3%減らすだけでも、さまざまな検査値が改善する。

4血圧を管理する

 高血圧があると、血液の流れが悪化しやすくなり、十分な酸素と栄養を心臓や脳に供給するのが難しくなる。脳の血流の不足は認知機能の低下も引き起こす。
 定期的に血圧を測り、健康な体重を維持し、塩分の摂取量も減らし、医師に処方してもらった薬をきちんと飲むことが大切だ。

5脂質を管理する

 コレステロールや中性脂肪などの脂質の異常は、動脈硬化を進行させ、狭心症や心筋梗塞などの心臓病や、脳出血や脳梗塞などの脳卒中の原因になる。
 悪玉のLDLコレステロールを減らすために、動物性食品のとりすぎを抑えて、野菜、果物、魚、大豆などをバランスよく食べることが必要だ。

6血糖値を管理する

 糖尿病のある人が、血糖値が高い状態を放置していると、心臓病や脳卒中の危険性が2~4倍に高まる。血糖値を管理すれば、これらの合併症を防ぐことができる。
 血糖値は、1日のなかで食事や運動などの影響を受けて変動する。生活スタイルを少しずつでも改善していき、医師から処方された薬をしっかり服用することが重要。

7タバコを吸わない

 タバコに含まれるニコチン・タール、一酸化炭素には血管を収縮させる作用がある。タバコを吸う人は禁煙をするだけで、心臓病や脳卒中、がんや、慢性肺疾患、呼吸器疾患、認知症などの発症リスクを減少できる。
 タバコを吸う人は、心臓病や脳卒中の発症リスクを減らすために、いますぐ禁煙しよう。火を使わない電子タバコなども、健康への悪影響が少ないことが医学的に証明されているわけではないので、注意が必要だ。

Women with a Heart-Healthy Diet in Midlife Are Less Likely to Report Cognitive Decline Later (ニューヨーク大学医科大学院 2023年10月24日)
Mid-life adherence to the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet and late-life subjective cognitive complaints in women (Alzheimer's & Dementia 2023年10月20日)
Can Seven Healthy Habits Now Reduce Risk Of Dementia Later? (米国神経学会 2023年2月27日)
Life's Simple 7 and the Risk of Dementia among Women (Neurology 2023年4月28日)
Life's Simple 7 (米国心臓学会)
[Terahata]
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