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「和食」が認知症リスクを低下 日本型の食事スタイルが脳を健康に 健康的な食事はメンタルヘルスにも良い

 和食をとっている女性は、西洋スタイルの食事をとっている女性に比べ、脳の萎縮が少なく、認知症のリスクが低いことが明らかになった。日本の伝統的な食事スタイルである和食は健康的と、海外でも注目されている。

 健康的な食事は、脳の健康にも良く、習慣として続けていると、うつ病や不安症などのリスクが低下し、メンタルヘルスが改善する可能性があることも分かった。

和食をとっている女性は認知症リスクが低い

 和食をとっている女性は、西洋スタイルの食事をとっている女性に比べ、脳の萎縮が少なく、認知症のリスクが低いことが明らかになった。日本の伝統的な食事スタイルである和食は健康的と、海外でも注目されている。

 和食のメリットとして、▼新鮮な魚介類・海藻・貝など海産物から、野菜・大豆・キノコ・果物・漬物・緑茶など、さまざまな食材を取り入れられる、▼日本には春夏秋冬の四季があり、食材の旬を活かした料理がある、▼主菜・副菜・汁物と主食であるごはん(一汁三菜)を食べ、栄養バランスが良い――といったことがある。

 研究は、英国のリバプール大学や、日本の国立長寿医療研究センターなどによるもの。研究には、40~89歳の日本の成人1,636人が参加した。

 研究グループは参加者に、3日間食べたり飲んだすべての食物を記録してもらい、食事の前後に写真を撮ってもらい、どれだけ食べたかを視覚的に記録してもらった。それらをもとに、参加者の1日の食事摂取量を計算した。

 さらに、APOE遺伝子型などの認知症の遺伝的素因があるかや、喫煙習慣や運動習慣、糖尿病や脳卒中などの既存の健康状態などについても調査した。期間中に、MRIスキャンなどによる脳の測定も行った。

 589人が伝統的な日本型の食事スタイルをもち、697人が西洋式の食事スタイルをもっていることが分かった。350人は植物性食品や乳製品の摂取が多かった。

日本型の食事スタイルをもつ女性は脳の萎縮が少ない

 その結果、2年間の追跡期間に、日本型の食事スタイルをもつ女性は、西洋式の食事スタイルをもつ女性に比べ、脳の萎縮が少ないことが明らかになった。

 「伝統的な日本食は、抗酸化作用や抗炎症作用をもたらす、ビタミンやポリフェノール、フィトケミカル、不飽和脂肪酸をとりやすいことが影響している可能性があります」と、研究者は指摘している。

 さらに、「魚・貝・大豆・キノコ、全粒穀物などに含まれるマグネシウムや、女性ホルモンに似た作用のあるイソフラボンを摂取することが、女性の脳に対して保護効果をもたらしている可能性も考えられます」としている。

 一方、男性の参加者では、こうした傾向はみられなかった。男性は、伝統的な日本の食事スタイルから逸脱していることが高く、女性よりも糖質の多い麺類やアルコールなどを多く摂取している傾向がみられた。これらが脳の縮小に寄与している可能性がある。

 「認知機能の低下や認知症は、すでに世界中で5,500万人以上の人々に影響を与えています。世界人口の高齢化にともない、今後数十年間で急増すると予測されています」と、リバプール大学心理学部のジョバンニ サラ氏は述べている。

 「これらに変えることのできない遺伝的な要因も関わっていますが、食事や運動、睡眠など、変更が可能な生活スタイルも大きく影響していると考えられています」としている。

健康的な食事は脳の健康とメンタルヘルスを高めるのに役立つ

不健康な食事を続けるとうつ病や不安症のリスクが上昇

 健康的な食事は、脳の健康にも良く、習慣として続けていると、メンタルヘルスが改善する可能性があることが、英国のレディング大学などによる別の研究でも示された。

 逆に、不健康な食事を続けていると、うつ病や不安症などにつながりやすい脳の変化が起こる可能性があるという。

 研究グループは30人の成人を対象に、食事の質が高いグループと低いグループにランダムに分け、脳への影響を調べた。脳の画像撮影検査を行い、食事による脳の前頭前野の代謝物の濃度や体積イメージングなどへの影響を調べた。

 食事の質が高いグループには、健康的な食事スタイルとして知られる地中海式ダイエットをとってもらった。

 地中海式ダイエットは、▼食物繊維の多い緑黄色野菜やキノコ類を食べる、▼魚介類を多めにし、肉類は少なめにする、▼油脂は主にオリーブオイルをとる、▼果物やナッツ類も適量を食べる、▼適量の赤ワインを飲むことなどが特徴となる。

不健康な食事は脳の神経伝達のバランスを乱す

 その結果、食事の質が低いグループでは、うつ病や不安症などのメンタルヘルスに影響をもたらす、神経伝達物質や灰白質の量の変化があらわれた。

 不健康な食事により、脳の前頭領域でGABA(γアミノ酪酸)が減少した。GABAは、脳で抑制系の神経伝達物質として作用し、ストレスを和らげ、興奮した神経を落ち着かせる働きをするとみられている。さらに、やはり神経伝達物質であるグルタミン酸が増加し、灰白質の体積が減少した。

 不健康な食事は糖代謝にも影響をもたらし、血糖値と血中インスリン値が上昇した。高血糖は神経伝達物質にも関与し、脳のGABAの減少とグルタミン酸の増加に影響しているとみられる。健康的な食事が糖尿病を改善するのに有用であることはよく知られている。

 「不健康な食事をしていて、糖質や飽和脂肪酸をとりすぎている人は、興奮性のある神経伝達と抑制性のある神経伝達のバランスが崩れ、脳の体積も減少しやすくなることが示されました」と、同大学で栄養精神医学を研究しているピリル ヘプソマリ氏は言う。

 「そうした脳の変化が、うつ病や不安症などのメンタルヘルス不調につながっている可能性があります。GABAとグルタミン酸は、食欲にも関連しており、不健康な食品の選択を促す原因になっている可能性もあります」。

 「よりよく食べることは、脳の健康とメンタルヘルスを高めることにもつながっていると考えられます」としている。

Traditional Japanese diet associated with less brain shrinkage in women compared to western diet (リバプール大学 2024年4月8日)
Associations of dietary patterns and longitudinal brain-volume change in Japanese community-dwelling adults: results from the national institute for longevity sciences-longitudinal study of aging (Nutrition Journal 2024年3月12日)
Poor quality diet makes our brains sad (レディング大学 2024年6月5日)
Adherence to unhealthy diets is associated with altered frontal gamma-aminobutyric acid and glutamate concentrations and grey matter volume: preliminary findings (Nutritional Neuroscience 2024年5月24日)
[Terahata]
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