厚労省が長時間労働疑いで2万6117事業場に監督指導 8割が労働基準関係法令違反

2024年7月に厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果を公表した。
監督指導した2万6117事業場のうち8割に労働基準関係法令違反が確認され、是正勧告書が交付された。
同省は「働き方改革特設サイト」を公開中。監督指導で違法な長時間労働等が行われ、労働基準監督署が指導した事例も公表しており、さまざまな観点から理解を深めてほしいとしている。
監督指導の対象は、さまざまな情報から時間外・休日労働時間数が1カ月あたり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働で過労死などの労災請求が行われた事業場など。令和5年度は2万6117事業場で監督指導が実施された。
このうち労働基準関係法令違反が確認され、是正勧告書が交付された事業場は2万1201事業所で81.2%を占めた。
内訳を見ると、違法な時間外労働が確認されたのは1万1610事業場(44.5%)。業種別では商業(2467事業場)、製造業(2235事業場)、接客娯楽業(1599事業場)などの順に多い。
一方、監督指導した2万6117事業場のうち、1万2944事業場については、長時間労働の労働者に健康被害防止措置を講じるよう指導した。
具体的には、1カ月80時間を超える時間外・休日労働を行なっている労働者に、医師による面接指導などの措置を講じるよう、2681事業場に対して指導。
また1954事業場については、長時間労働による健康障害防止対策に関する調査審議を実施するよう求めた。これは、常時50人以上の労働者が働く事業場の場合は衛生委員会で調査審議を実施すること、常時50人未満の労働者が働く事業所の場合は関係労働者の意見を聴取することを、それぞれ指導したもの。
労働時間の把握が不適正だった4461事業場については、厚生労働省で定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導した。
具体的な指導事項は、「始業・終業時刻の確認・記録」(2771事業場)、「(自己申告性による場合)実態調査の実施」(1769事業場)など。
厚生労働省では、監督指導で違法な長時間労働等が行われ、労働基準監督署が指導した事例も公表している。
監督指導において違法な長時間労働を認めた事例としては、倉庫業の事業場で取引先のセールなどで取扱貨物量が増加する時期に、最長で1カ月あたり127時間の時間外・休日労働を実施していたケースを紹介。指導の結果、労働是正の取り組みが行われ、時間外・休日労働時間数は最長でも月45時間と大幅に削減されたという。
このような実際の事例を3つ取り上げ、立ち入り調査で把握した事実、労働基準監督署の指導内容、長時間労働是正の取り組み内容を紹介。デジタル技術を活用するなどし、自主的に長時間労働削減に取り組んでいる企業の事例も合わせて公表している。
厚生労働省では「働き方改革特設サイト」を設置しており、時間外労働の上限規制についても分かりやすく解説している。動画や資料の掲載があり、さまざまな観点から理解を深められるようになっている。
長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果を公表します(厚生労働省/2024年7月25日) 働き方改革 特設サイト「時間外労働の上限規制」(厚生労働省)


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