小規模事業所の過労死等防止対策など一層の推進を 厚労省「令和6年版 過労死等防止対策白書」
厚生労働省はこのほど令和6年版「過労死等防止対策白書」を公表した。
今年8月には「過労死等の防止のための対策に関する大綱」も変更されており、その内容をふまえて長時間労働削減やメンタルヘルス対策などについて詳細に報告している。
「過労死等」とは、以下のものを指す。
過労死等防止のための対策推進を求める「過労死等防止対策推進法」が平成26年に成立してから10年が経過した。取り組みの結果、長時間労働が減少傾向にあるなど成果はあるが、依然として大きな社会問題にあることは変わりがない。
平成27年に策定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、大綱)も来年には10年の節目を迎えることから内容を見直し、今年8月には大綱の変更を閣議決定。過労死ゼロを目指して数値目標を定めた。
たとえば週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を令和10年までに5%以下にする、という目標がある。
令和6年版「過労死等防止対策白書」によると、週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は令和5年で8.4%。4年連続で10%を下回ったが、大綱の目標に定める5%との差は依然として大きい。
同様に、男女別でそれぞれに見た場合、割合が最も多かった年齢層は、男性は40歳代で11.9%。女性は60歳以上で5.2%だった。
業種別では「運輸業、郵便業」が最も多く18.5%。次いで「宿泊業、飲食サービス業」(16.0%)、「教育、学習支援業」(15.9%)の順にその割合が高い。多くが前年に比べて横ばいまたは減少していたが、「電気・ガス・熱供給・水道業」「生活関連サービス業、娯楽業」「教育、学習支援業」「公務」は増えていた。
年次有給休暇の状況を見ると、平成20年以降の取得日数は微増傾向にあり、令和4年は10.9日と4年連続で10日を上回った。
取得率は平成29年に5割を上回り、令和4年は62.1%にまで上昇した。大綱で定めた目標では、年次有給休暇の取得率を令和10年までに70%以上とする、としており、より一層の取り組みが求められている。
仕事や職業生活について強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.7%(令和5年)。大綱の目標では、この割合を令和9年までに50%未満とする、と掲げている。
仕事や職業生活について強い不安や悩み、ストレスを感じている、と答えた労働者のうち、その内容は「仕事の失敗、責任の発生等」が39.7%で最も多かった。次いで「仕事の量」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」となっている。
また「相談できる人がいる」と答えた労働者の割合は94.9%。相談相手としては「家族・友人」が7.7%で最も多く、「同僚」(64.9%)が続いた。
一方、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合(令和5年)は63.8%だった。大綱では令和9年までに、この割合を80%以上とすることを目標としている。
事業所の規模別に見ると、50人以上の事業所はこの目標を達成し、おおむね9割を超えている。しかし30人から49人」の事業所は71.8%、「10人から29人」の事業所は56.6%にとどまっており、小規模な事業所でのメンタルヘルス対策をさらに推進する必要がある。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所における取り組み内容としては「ストレスチェックの実施」が65%と最も多い。一方、大綱では令和9年までに労働者数50人未満の小規模事業所におけるストレスチック実施の割合を50%以上とすることを目標にしているが、令和5年は34.6%だった。
ストレスチェック制度は平成26年の労働安全衛生法の改正により創設されたが、産業医の専任義務のない50人未満の事業場については、ストレスチェックの実施が現状、努力義務にとどまっている。
精神障害の労災支給決定件数は年々増加の経過にあり、令和5年度は883件と過去最多だった。またメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業または退職した労働者がいる事業者の割合も近年、上昇傾向にある。
そのためメンタルヘルス対策の強化はより一層必要とされ、ストレスチェック制度についても効果検証が求められる中、厚労省では「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催。このたび中間取りまとめが公表され、50人未満の事業場におけるストレスチェックについても今後のあり方について検討が行われている。
厚労省では、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現に向け、引き続き過労死等防止対策に取り組んでいく考え。
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