フレイル高齢者の運動系社会参加を促すには「地域のつながり」が重要 地域内での格差の実態を把握することも大切に

畿央大学大学院健康科学研究科の研究グループが、高齢者を対象に調査を行い、自治体内でも地域によって運動系社会参加に格差があることを明らかにした。
また、運動系社会参加の推進には近所づきあいのような地域のつながりが重要であると示した。
「フレイル」とは、高齢者の健康状態の一つで、「加齢に伴う身体的、心理的、社会的な脆弱性の増加」を指す。「健康と要介護の中間」に位置し、適切に対応しなければ要介護状態に進行するリスクがある。
そのため、早期に気づいて治療や予防などで正しく介入すれば、その進行を抑えたり、回復を促したりする可能性が高まると考えられている。
たとえば、以下のようなサインが挙げられる。 ・意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少 ・疲れやすい(週に3-4日以上、何をするのも面倒だと感じる) ・歩行速度の低下 ・握力の低下 ・身体活動量の低下
近年、フレイル対策として運動を主体とする社会参加(運動系社会参加)がフレイルからの脱却や要介護等のリスク軽減につながることが報告されている。一方、高齢者がフレイルになると、移動の困難などから十分に運動系社会参加を続けることは難しい。
そのため、同じ自治体の中であっても、地域内で格差の実態を把握したうえで、それぞれの課題に応じた対策を立てる必要がある。しかし運動系社会参加の地域内格差を調査した報告は少ないことから、畿央大学大学院健康科学研究科、客員研究員の中北智士氏、松本大輔准教授、高取克彦教授は地域の高齢者を対象に調査を実施した。
研究の対象は、ある特定の市における、要介護認定を受けていない65~80歳の高齢者。厚生労働省が作成したフレイル判定に役立つ「基本チェックリスト」と、社会活動についての郵送調査を行い、フレイル高齢者に該当する6532人の回答から運動系社会参加に関する地域要因を検討した。
基本チェックリストとは、65歳以上の高齢者が自分の生活や健康状態を振り返り、心身の機能で衰えているところがないかどうかをチェックするためのもの
その結果、運動系社会参加の割合は同一自治体内でも最大1.5倍の地域内格差があることが明らかとなった。さらに、運動系社会参加者に占めるフレイル高齢者の割合6.7%から16.5%と差があった。
このうち、フレイル高齢者の運動系社会参加が最も多かった地区では、フレイル高齢者が運動系社会参加に参加しやすく、近所づきあいのような地域のつながりも良好であることがわかった。
これらのことから、地域密着型の取り組みが、フレイル高齢者の社会参加を促進するうえで重要だと言える。研究グループではフレイル高齢者が社会参加しやすい地域づくりを進めるとともに、今回の研究における対象者を引き続き追跡し、介護予防効果を検証していくという。
フレイル高齢者の社会参加は、要介護リスクを軽減することが分かっており、積極的にフレイル高齢者の社会参加を推進することが必要です。通いの場による介護予防推進のためには、フレイル高齢者が地域とのつながりを保つことができるような地域密着型の取り組みが重要であると考えられます。今後は、フレイル高齢者が社会参加できるような地域づくりに加え、本研究の対象者を縦断的に追跡し介護予防効果を検証していきたいと考えています。
国もフレイル対策には力を入れている。厚生労働省では、特設WEBサイト「地域がいきいき 集まろう!通いの場」を開設(現在サイトメンテナンス中)。地域の住民同士が気軽に集まり、生きがいや仲間づくりを進められるよう情報発信することで、介護予防・フレイル対策につながっていくことが期待されている。
地域在住フレイル高齢者の運動系社会参加を促進する地域要因の検討(畿央大学) 地域がいきいき 集まろう!通いの場(厚生労働省)

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