タバコを吸う人は認知症リスクが上昇 喫煙は歯を失う原因に 全身疾患のリスクが上昇

喫煙習慣のある人は、喫煙習慣のない人に比べて、認知症のリスクが1.18倍に上昇することが、東北大学などの研究で明らかになった。うち20%は、喫煙により歯を失うことで説明できるという。
禁煙に取り組むことは、健康改善に役立つだけでなく、認知症などの予防にも役立つ可能性がある。タバコ対策は、歯科疾患の予防と、歯の喪失による全身疾患のリスク上昇を予防するうえでも重要としている。
タバコを吸う人は歯を失いやすい 認知症リスクも上昇
歯の数が減っている人は、認知症をはじめ、さまざまな全身疾患のリスクが高くなることが、これまでの研究で分かっている。
歯を失う主な原因は、「むし歯」と「歯周病」であり、それらの主なリスク要因は「フッ化物の低利用」「砂糖の高摂取」「喫煙習慣」などだ。
東北大学などの研究グループは今回、喫煙習慣のある人の歯の喪失が、認知症リスクの上昇につながることを長期追跡研究により明らかにした。
日本老年学的評価研究(JAGES)は、日本全国の高齢者20万人を対象とした大規模研究で、超高齢社会となった日本で、予防政策の科学的な基礎づくりを目標にして行われている。
研究グループは、2010年に実施された調査に参加した、65歳以上で平均年齢72.6歳の高齢者3万2,986人を9年間の追跡し、2010年時点での喫煙状況および2013年時点での歯数を調査し、2013~2019年の認知症の発症の有無との関連を調べた。

歯の喪失を予防することは全身疾患の予防にもつながる
その結果、認知症の発症率は、「喫煙習慣のあった人」「歯数の少ない人」で高く、分析したところ、喫煙習慣のあった人では認知症のリスクが1.18倍高いことが明らかになった。
この関連のうち、20%は[喫煙 → 歯の喪失 → 認知症の発症]という経路で説明されることも分かった。
JAGES研究の過去の調査で、歯の喪失と認知症発症とのあいだに関連があり、友人・知人との交流といった社会的な要因や、野菜や果物の摂取や体重減少などの栄養に関する要因などにより説明できることが示されている。
「タバコ対策は、歯周病をはじめとする歯科疾患の予防でも重要です。今回の研究結果から、タバコ対策により、歯の喪失を予防することは、その後の全身疾患の予防にもつながる可能性が示唆されました」と、研究者は述べている。
「歯の喪失は、高齢者の過去または現在の喫煙と認知症のリスク増加との関連に、大きく影響することが分かりました」としている。
禁煙指導は全身疾患の予防にもつながる可能性が
歯科医院での禁煙指導・禁煙治療を推進するような仕組み作りが、歯科疾患の予防・治療だけでなく、その後の全身疾患の予防にもつながる可能性がある。
なお、研究に参加した高齢者の認知症の発症率は、100人年あたり2.1だった。分析に際しては、因果媒介分析を用いて、喫煙状況と認知症との関連のうち、喫煙状況 → 歯の喪失 → 認知症発症という経路が、どの程度の割合を占めるのかを明らかにした。
分析に際しては、性別・年齢・教育歴・等価所得・婚姻状況・併存疾患(糖尿病・高血圧・肥満)・飲酒習慣・歩行時間の影響を取り除いた。
今回の研究は、東北大学大学院歯学研究科の草間太郎氏らによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された。
日本老年学的評価研究(JAGES)
Tooth loss mediates the association between smoking and an increased risk of dementia among older adults: The JAGES prospective cohort study (Journal of Clinical Periodontology 2024年2月7日)


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