朝に自然光を浴びると肥満やメタボのリスクが減少 目覚めの質も良くなる 体内時計を調節

ヒトの体には、ほぼ1日の周期で体内リズムを調整する「体内時計」の機能がそなわっており、それがホルモンの分泌や代謝、睡眠リズムといった概日リズムを調整している。
朝に明るい自然光を浴びると、体内時計がリセットされ、体格指数(BMI)が低下し、肥満予防につながる可能性があることが分かった。
逆に、夜に明るすぎる光を浴びると、体内時計が乱れて、概日リズムに異常があらわれすいことも示された。
起床前に自然光を浴びると、目覚めの質が向上することが、日本人を対象とした新しい研究でも明らかになった。
朝に明るい自然光を浴びると肥満予防につながる
朝に明るい自然光を浴びると、体内時計がリセットされ、体格指数(BMI)が低下し、肥満予防につながる可能性があるという研究を、米国のノースウェスタン大学が発表している。
「1日の早い時間に日光を浴びている人ほど、BMIは低く、肥満が少ない傾向が示されました。逆に、遅い時間に明るすぎる光にさらされる時間の長い人は、BMIは上昇しました」と、同大学神経学部のフィリス ジー教授は言う。
研究グループは、平均年齢30歳の54人の男女を対象に実験を行った。参加者に手首にアクチグラフィーモニターを装着してもらい、通常の生活環境で7日間、光への露出と睡眠パラメータを測定した。7日間の食事や体重などについても記録した。
その結果、午前中に500ルクスを超える明るい光を浴びている人は、1日の後半に強い光を浴びている人に比べ、体重増加が抑えられていることが示された。
「光を浴びることは、体内時計を同期させ、概日リズムを調節するもっとも強力な因子であり、体のエネルギー代謝のバランス調節にも影響します。空腹感や満腹感の調節にも影響すると考えられます」と、ジー教授は指摘している。
「体内時計を整えるために、午前8時から正午のあいだに、なるべく明るい光を浴びるようにすることをお勧めします。朝に日光を20~30分浴びるだけで十分です。曇りの日でも、屋外の光は1,000ルクス以上の明るさがあります」としている。
なぜ朝に明るい自然光を浴びると肥満リスクが減少する?
なぜ、朝に明るい自然光を浴びると肥満リスクが減少するのか、因果関係ははっきりと分かっていないが、概日リズムを調節することが睡眠に好ましい影響をもたらしている可能性があると指摘している。
メラトニンは、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用をするホルモンで、「睡眠ホルモン」とも呼ばれている。
メラトニンの分泌は、体内時計の働きにより夜に活発になる。朝になり光を浴びると、体内リズムがリセットされて活動状態に導かれ、メラトニンの分泌はとまる。
逆に、夜中に強い光を浴びたり、多めの食事をとる習慣があると、体内時計の働きが乱れて、メラトニンの分泌が抑えられる。これにより睡眠と覚醒のリズムが乱れると考えられる。
「体内時計の狂いは、日照時間の短い冬や、季節の変化、さらには夜遅くに食事をとる習慣があるなど、生活リズムの乱れにより起こりやすくなります」と、ノースウェスタン大学で生体リズムを研究しているイトン ファン氏は言う。
研究グループは、気候やライフスタイル、時差ボケなどの影響で乱れた体内時計を回復し、睡眠障害などを改善する新しい方法の開発にも取り組んでいる。
寝室のカーテンにスマート制御装置を導入
起床前に自然光を20分間浴びると、目覚めが良くなるという。
大阪公立大学の研究グループは今回、電動カーテンで寝室に適度な光を適時に入れると、朝の目覚めが良くなるかを検証した。
19人の参加者に対して、▼IA(起床前に20分間自然光を浴びる)、▼IB(夜明けから起床まで自然光を浴びる)、▼CC(起床前に自然光を浴びない)、という3つの条件で、起床後の眠気、覚醒度、疲労度を測りそれぞれ比較した。
その結果、起床前に20分間自然光を浴びたIAは、IBはCCに比較して、眠気がなく、覚醒度も良好で、目覚めを良くする効果的な方法であることが示された。
「カーテンを閉めて寝るか、それとも開けて寝るか? これはひとつの興味深い課題です。私たちは寝室のカーテンに、スマート制御装置を導入し、自然光が差し込むタイミングを調整することで、朝の覚醒度や反応速度に良い影響を与えることを確認しました」と、研究者は述べている。
「しかし、自然光は覚醒に効果的であるものの、必ずしも多ければ多いほど良いわけではありません。ふだんの起床時間の約20分前に自然光を浴びることが、適切な選択と言えるでしょう」。
「今後、一般的なカーテンなどの窓装備をスマート化することにより、目覚めの改善につながることが期待できます」としている。
研究は、大阪公立大学大学院生活科学研究科の王暁鋭氏、松下大輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Building and Environment」にオンライン掲載された。
Morning Rays Keep Off the Pounds (ノースウェスタン大学 2014年4月2日)
Timing and Intensity of Light Correlate with Body Weight in Adults (PLOS ONE 2014年4月2日)
Synchronizing Your Internal Clocks May Help Mitigate Jet Lag, Effects of Aging (米国物理学協会 2023年9月5日)
A minimal model of peripheral clocks reveals differential circadian re-entrainment in aging ( Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Science 2023年9月5日)
大阪公立大学大学院生活科学研究科
Natural light control to improve awakening quality (Building and Environment 2025年4月1日)


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