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【新型コロナ】地震被災者のメンタルヘルス 孤独感への対策や社会経済的な支援が必要 熊本大学

 熊本大学は、熊本市との共同研究により、熊本地震から5年が経過しても、心理的苦痛や不眠があるなどメンタルヘルスの問題を抱えている人はいぜんとして多いことを明らかにした。

 ▼女性、▼公営住宅に居住、▼孤独感がある、▼新型コロナによる活動・収入減少、といった項目が、心理的苦痛・不眠症・PTSDリスクのすべてに関連しているという。

 熊本地震被災者のなかで、とくにメンタルヘルスの悪化が懸念される人の特徴を明らかにすることは、孤独・孤立への対策やコロナ禍の社会経済的への支援を立案するために役立つ。

コロナ禍は地震被災者のメンタルヘルスの悪化にも影響

 熊本大学は、熊本市との共同研究により、熊本地震被災者のメンタルヘルスの問題に、新型コロナがもたらした社会経済的変化が影響していることをはじめて明らかにした。

 熊本地震被災者の後遺症は、2019年に発生した新型コロナの大流行により複雑化している。しかし、地震被災者の中長期的メンタルヘルスの実態と関連要因に関する研究は世界的にも少なく、新型コロナとの関連についてはほとんど明らかにされていなかった。

 そこで、研究グループはアンケート調査を行い、熊本地震から5年経過した後も、被災者のメンタルヘルスのリスクの有病率は、心理的苦痛(抑うつ)は11.9%、不眠症は35.2%、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は4.1%と、それぞれ依然として高いことを明らかにした。

 また、▼女性、▼現在の住居形態、▼孤独感、▼新型コロナによる社会経済的変化が、被災者の中長期的メンタルヘルスに影響をもたらしていることを解明した。

 「研究成果は、復興期での熊本地震被災者のメンタルヘルスの実態と関連要因を、コロナ禍の変化を含めて、はじめて明らかにしたものです。研究により、被災者のうち、女性や公営住宅居住者のメンタルヘルスが懸念されることを明らかにしました」と、研究グループでは述べている。

 研究は、熊本大学大学院生命科学研究部健康科学講座の大河内彩子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載された。

各項目における心理的苦痛 、不眠症 、PTSDリスクのなりやすさ (オッズ比)

オッズ比は、ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度。オッズ比が1より大きいとは、疾患への罹りやすさがある群でより高いことを意味する。内の数値は95%信頼区間。
出典:熊本大学、2022年

地震と新型コロナの二重災害 被災者のメンタルヘルスに与える影響を調査

 2016年の熊本地震は、2日間で震度7を2回記録した日本初の地震だ。また、地震発生から15ヵ月間で4,364回の余震を観測している。このような激甚な地震が、被災者のメンタルヘルスに与える中長期的影響が懸念されている。

 人口約70万人の熊本市では、最大11万人が避難した。2020年中には熊本市内の仮設住宅から恒久住宅への転居もおおむね完了し、2021年4月には熊本地震発災後5年となったが、転居後の被災者のメンタルヘルスなど、いまなお被災者の状況が懸念されている。

 しかし、被災者のメンタルヘルスの中長期的な状況は、世界的にもほとんど明らかにされていない。また、熊本地震の復興期には、新型コロナのパンデミックが発生した。

 二重災害ともいえる状況のなかで、地震被災者の復興期でのパンデミックとメンタルヘルスの関連を調査した研究はほとんどなかった。

 そこで研究グループは、2020年に仮設住宅を退去し、恒久住宅に移り住んだ震災被災者全員にあたる1万9,212人を対象に、2020年7~12月にアンケート調査を実施した。メンタルヘルスの状態、属性、住居の状況、孤独感、COVID19による活動や収入の減少などを尋ねた。

 アンケートの有効回答者8,966人(女性5,135人(57.3%)、男性3,831人(42.7%)、平均年齢62.25±17.29歳(18~105歳)、65歳以上の高齢者割合53.1%)を対象に、ロジスティック回帰分析を行い、メンタルヘルス問題と社会経済的要因との関連を検討した。

 メンタルヘルスの状態は、(1) 心理的苦痛、(2) 睡眠障害、(3) PTSDリスクの3項目について尋ねた。

 (1) 心理的苦痛は、「ケスラー抑うつ尺度(K6)」を用いて評価。K6は最近1ヵ月間に神経質、絶望的、落ち着かないなどを感じた頻度を尋ねる。K6得点が10点以上の人は心理的苦痛を有すると分類した。

(2) 睡眠障害は、「アテネ不眠症尺度(AIS-J)」の日本語版を用いて評価。AIS-Jは「夜間の睡眠問題」と「日中の機能障害」の2因子から構成され、6点以上が不眠症となる。

(3) PTSDリスクは、PTSDの簡易スクリーニングのために開発された「PTSD3」を用いて評価。PTSD3の3項目のうち2項目以上で「はい」と答えた人を、熊本県や東日本大震災の調査で採用された基準により、PTSDの可能性があると判定した。

女性、孤独感、新型コロナによる活動・収入減などがメンタルヘルスに関連

 対象者のうち、78.9%が同居しており、56.6%が再建した自宅で生活していた。34.2%が震災前の学区を離れることを余儀なくされていた。

 分析した結果、地域参加をしている人は22.2%、孤独を感じている人は20.8%に上った。被災者のメンタルヘルスのリスクの有病率は、心理的苦痛(抑うつ)は11.9%、不眠症は35.2%、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は4.1%と、それぞれ依然として高いことが明らかになった。

 ▼女性である、▼公営住宅に居住している、▼孤独感がある、▼新型コロナによって活動機会が減少した、▼新型コロナによって収入が減少した、のそれぞれの項目は、統計的に有意に心理的苦痛、不眠症、PTSDリスクのなりやすさに関連していることが明らかになった。なかでも、孤独感のオッズ比は非常に高かった。

 「研究結果は、性別、現在の住居、孤独感、COVID-19が復興期にある被災者のメンタルヘルスに影響を与えることを示唆しています」と、研究グループでは述べている。

 「我々の知る限り、本研究は、マグニチュード7を超える大地震の5年後に、長期的な精神健康問題を評価し、COVID-19関連の変化を含む関連因子を特定したはじめての研究です。研究の成果は、震災被災者のメンタルヘルスの長期的な予後と予防対策に指針を与えるものです」としている。

熊本大学大学院生命科学研究部 健康科学講座
Depression, Insomnia, and Probable Post-Traumatic Stress Disorder among Survivors of the 2016 Kumamoto Earthquake and Related Factors during the Recovery Period Amidst the COVID-19 Pandemic (International Journal of Environmental Research and Public Health 2022年4月6日)
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