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女性の方が高い長期病休発生率 ライフステージごとに異なる健康課題か(国立健康危機管理研究機構)

 国立健康危機管理研究機構(JIHS)はこのほど、勤労者約10万人から収集した病休情報に基づき、2012年度から2021年度の10年間における長期病休の発生率を性別・年齢・原因別に調べた。

 その結果、女性が男性に比べて長期病休発生率が高く、また主な原因疾患は年齢による違いが顕著にみられ、女性がライフステージによって異なる健康課題を抱えていることが示唆された。

女性は20歳代の長期病休発生率が最も高い

 病気やケガによる欠勤(病気休業:病休)は本人のみならず、企業、ひいては社会全体にとっても生産や経済面で損失となる。そのため長期にわたる病休については産業保健上の専門的な対応が求められるが、今や労働人口の約45%を占める女性の長期病休発生状況や、その原因となっている疾患の実態把握は十分行われてこなかった。

 そこでJIHSは、関東・東海地方に本社を置く10数社の勤労者約10万人を対象とした職域多施設研究(J-ECOHスタディ)に基づき、2012年度から2021年度までの10年間にわたる長期病休発生率(観察期間中にどれだけの長期病休が発生したかを示す指標)を性別・年齢・原因別に分析。連続30日以上の欠勤を長期病休と定義し、性別や年齢による発生率の違いや、長期病休の年齢による発生率パターンの性差を統計から明らかにした。

 調査結果によると、観察期間中に発生した長期病休件数は男性が6518件、女性が1886件。1万人年あたりの長期病休発生率は女性が115.5、男性が89.2で、女性のほうが高い値を示した。

 また年齢別に見ると、女性は20歳代の長期病休発生率が最も高く、年齢が上がるにつれて低下。一方で男性は20歳代から50歳代にかけてわずかに上昇しており、女性とは異なる傾向が見られた。

 長期病休の主な原因のうち、男女ともに最も多かったのは「精神および行動の障害」で20歳代が最も高いものの、年齢が上がるにつれて減少していた。また40歳未満の女性は、妊娠関連の健康問題が原因とする人も多く、特に30歳代では長期病休の原因の約3割を占めた。また男女ともに年齢が上がるにつれ、身体的疾患による長期病休の割合が増える傾向にあった。

 そのほか腫瘍や筋骨格系疾患、外相に起因する長期病休発生率は男性よりも女性が高く、年齢による増減のパターンも男女で異なっていることがわかった。

 これらの結果から、女性は男性よりも長期病休発生率が全般的に高いことが明らかになった。一方で、性別や年齢によって長期病休の原因には違いが見られたことから、長期病休につながる疾病の予防やケアにおいて産業保健には、性差や年齢差の考慮が求められることを示唆している。

「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」

 厚生労働省は、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP:トータル・ヘルス・プロモーション指針)をわかりやすくまとめた「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」をHPで公開している。

 労働者の健康保持増進措置に取り組む事業者、人事労務管理スタッフ、産業医、衛生管理者、保健師をはじめとする産業保健スタッフなどに向け、THP指針の基礎的な情報から、THP指針に沿った事業場の取り組み事例などについてまとめている。

勤労者における長期病休発生の実態調査-大規模職域研究に基づく性差に着目した検討-(国立健康危機管理研究機構)
職場における心とからだの健康づくりのための手引き~事業場における労働者の健康保持増進のための指針~(厚生労働省)
[yoshioka]
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