ストレスサインに気づくこと
働く現場は、さまざまなストレスに満ちています。そのストレスが大きくなると、心や身体に色々な不調をもたらすことがあります。症状が軽微な初期で気づけばいいのですが、それに気づかずに、無理を続けると、メンタル不調になったり、身体的な病気になったりします。そこで、大切なのが、ストレスサインに早く気づくことです。
たとえば、風邪は、頭痛や発熱、咳といった症状がほとんど人に現れて、風邪であることを自覚できます。そして、「風邪ひいたかな?」と思ったら、無理をせずに、早めに寝たり、うがいをまめにしたり、薬を飲んだりして、それ以上悪くならないように、自分で何らかの対策を取ります。また、風邪が流行る季節には、うがいや手洗いをしたり、人ゴミに出る時にはマスクをつけるなどして、風邪がうつらないように気をつけます。それがセルフケアです。
身体の異常には、私たちは早期に気づき、それ以上悪くならないように・・・という予防が自然にできているのです。「風邪は、引き始めが大事」というのと同様に、ストレスにも早めに気づいて、早めに対処することがメンタル不調を予防します。
ところが、心の不調の出方は様々です。ある人は、落ち込んだり、イライラしたり、不安になったりと気持ちに出ることがあれば、ある人は、不眠や頭痛・めまい、肩こり、腰痛、など、身体の不調として現れることもあります。また、衝動買いやヤケ食い、酒・タバコの量が増える、ギャンブルといった行動や、時に、人に当たりちらす、怒鳴る、物を投げる、壊すなど、周囲をも巻き込んでしまうこともあります。
そういった現象が起きても、それが、メンタル不調のサインだと気づかないか、自分にメンタル不調が起きていることを認めたくない場合は、対応が遅れて、重症化し、仕事や家庭生活に影響が出てしまうのです。
ストレスチェックで自分のストレスを見える化する
ストレスチェックの57項目に答えると、自分のストレスプロフィールが出てきます。
下のストレスプロフィールを例に見てみましょう。右側のレーダーチャートで、自分のストレスの原因と、ストレス反応、ストレス反応に影響を与える因子がわかります。レーダーが大きく張り出したところは、大丈夫な部分、小さく収まって★印がついているいるところは、要注意の部分です。
(1)ストレスの原因と考えられる因子
心理的な仕事の負担(量と質)、自覚的な身体的負担度、職場の対人関係でのストレス、職場環境によるストレス、仕事のコントロール度、あなたの技能の活用度、あなたが感じている仕事の適正度、働きがいについて見ています。
この図では、仕事の量や人間関係、職場環境にはストレスを感じていないけれど、自分の知識や技術が十分生かされていない、仕事が自分に合ってない、働き甲斐がないと感じていることがストレス要因になっているのが伺えます。
(2)ストレスによっておこる心身の反応
ストレス反応を、活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、身体愁訴から見ています。この図の場合、活気が極端に小さくなっており、イキイキと働けてない様子が伺えます。
(3)ストレス反応に影響を与える他の因子
上司からのサポート、同僚からのサポート、家族や友人からのサポート、仕事や生活の満足度を見ています。この場合、4つとも★印がついており、職場でも家でも、あまりサポートが受けられていないか、助けを求めるのが苦手なタイプか、という推測ができます。
実施者としての保健師の役割
ストレスチェックの指針には、実施者がこの結果を個人に返し、医師による面接が必要かどうかを判断するとされています。
ストレスプロフィールでハイリスクと判断された従業員については、このストレスプロフィールを見ながら、面接し、職場の状況や自覚症状を確認していきます。ストレスチェックの実施~結果返しまでの時間の経過の中で、より症状が強くなっていることもあれば、ストレスチェックを受けた時は、とてもしんどかったけれど、今は大丈夫ということもあります。
実施者が個人のストレス状態を正しく把握し、スムーズに医師につなぎ、就業上の措置を受けることができるようにすることが大切です。
また、ハイリスクでありながらも、医師による面接を希望しない場合もありますから、実施者が事業場内産業保健スタッフである保健師である場合は、通常の産業保健でのハイリスクフォローとして、経過を追っていく必要も生じることは予測されます。
新しい制度ができる時は、その導入に戸惑うこともありますが、ストレスプロフィールを活用すると、あらかじめ、個人のストレスがどこにあるのかが予測できるため、無駄のない面接が可能になります。
セルフケアのアプローチ~ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ~
ストレスが高い従業員へのアプローチ(ハイリスクアプローチ)は前述したとおりですが、今回はハイリスクではなかったけれど、高ストレスになるのを予防する取組は必要です。ポピュレーションアプローチとして、ストレスマネージメントの方法やストレスチェックの活用法などの内容を盛り込んだセルフケア研修の実施や、健康教育媒体の活用をも並行して実施することも安全衛生上の課題になってくると思われます。
ストレスチェック本来の目的である「従業員自身の気づきと行動変容を促す」ことを、産業保健活動の中でしっかりと位置づけ、ストレスチェックに振り回されるのではなく、保健師が主体的に結果を活用するという展開が望まれています。