オピニオン/保健指導あれこれ
ストレスチェック制度と産業保健師の役割
No.2 ストレスチェックをセルフケアに生かす
保健師・看護師・精神保健福祉士/会社の保健室 代表
2015年06月03日
ストレスサインに気づくこと

ストレスチェックで自分のストレスを見える化する
ストレスチェックの57項目に答えると、自分のストレスプロフィールが出てきます。
下のストレスプロフィールを例に見てみましょう。右側のレーダーチャートで、自分のストレスの原因と、ストレス反応、ストレス反応に影響を与える因子がわかります。レーダーが大きく張り出したところは、大丈夫な部分、小さく収まって★印がついているいるところは、要注意の部分です。
(1)ストレスの原因と考えられる因子心理的な仕事の負担(量と質)、自覚的な身体的負担度、職場の対人関係でのストレス、職場環境によるストレス、仕事のコントロール度、あなたの技能の活用度、あなたが感じている仕事の適正度、働きがいについて見ています。 この図では、仕事の量や人間関係、職場環境にはストレスを感じていないけれど、自分の知識や技術が十分生かされていない、仕事が自分に合ってない、働き甲斐がないと感じていることがストレス要因になっているのが伺えます。 (2)ストレスによっておこる心身の反応
ストレス反応を、活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、身体愁訴から見ています。この図の場合、活気が極端に小さくなっており、イキイキと働けてない様子が伺えます。 (3)ストレス反応に影響を与える他の因子
上司からのサポート、同僚からのサポート、家族や友人からのサポート、仕事や生活の満足度を見ています。この場合、4つとも★印がついており、職場でも家でも、あまりサポートが受けられていないか、助けを求めるのが苦手なタイプか、という推測ができます。

実施者としての保健師の役割
ストレスチェックの指針には、実施者がこの結果を個人に返し、医師による面接が必要かどうかを判断するとされています。
ストレスプロフィールでハイリスクと判断された従業員については、このストレスプロフィールを見ながら、面接し、職場の状況や自覚症状を確認していきます。ストレスチェックの実施~結果返しまでの時間の経過の中で、より症状が強くなっていることもあれば、ストレスチェックを受けた時は、とてもしんどかったけれど、今は大丈夫ということもあります。

セルフケアのアプローチ~ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ~
ストレスが高い従業員へのアプローチ(ハイリスクアプローチ)は前述したとおりですが、今回はハイリスクではなかったけれど、高ストレスになるのを予防する取組は必要です。ポピュレーションアプローチとして、ストレスマネージメントの方法やストレスチェックの活用法などの内容を盛り込んだセルフケア研修の実施や、健康教育媒体の活用をも並行して実施することも安全衛生上の課題になってくると思われます。
ストレスチェック本来の目的である「従業員自身の気づきと行動変容を促す」ことを、産業保健活動の中でしっかりと位置づけ、ストレスチェックに振り回されるのではなく、保健師が主体的に結果を活用するという展開が望まれています。
「ストレスチェック制度と産業保健師の役割」もくじ
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