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インスリン抵抗性の原因はアルコール
2013年02月05日

アルコールの飲み過ぎは、インスリン抵抗性に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させるという研究が発表された。
脳は、全身のエネルギー状態を感知し、摂食や末梢神経の代謝をコントロールすることで、全身のエネルギーバランスを調節している。最近の研究では、インスリンなどのホルモンが脳の視床下部にも作用し、糖代謝の調節に影響していることが分かってきた。 アルコールを過剰に摂取すると、視床下部で炎症反応が引き起こされる。これにより末梢組織のインスリン受容体へのシグナル送信が阻害され、インスリン抵抗性や過食が引き起こされると考えられている。 「アルコール摂取が血糖値に影響を与えることは以前から知られていました。今回の研究では、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性の直接の原因になることが分かりました」と、ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学のクリストフ ベットナー氏(内分泌学)は話す。 研究チームは、マウスにエタノールを毎日投与し、過度の飲酒を続けているのと同じ状態にした。アルコールは胃や腸で吸収されて血管へまわる。血液中のアルコール濃度が高くなるにつれて酔いが回っていく。 結果として、マウスの体ではインスリン抵抗性が起こり、正常な血糖値を維持できなくなった。マウスの脳を調べたところ、視床下部で炎症反応が起こっており、神経活動に異常があらわれていた。 「アルコール摂取はインスリン抵抗性を引き起こすだけではありません。食欲を亢進する作用もあります」と、ベットナー氏は言う。アルコールには、食欲を抑制するホルモンであるレプチンを減少させる作用もある。レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、視床下部にある満腹中枢に作用して、食欲を抑える作用がある。飲酒量が多い人では、レプチンの濃度が低下する傾向がみられるという。 「アルコールは、アルコールそのものの作用のほかに、肝臓や膵臓の障害などのさまざまな因子を介して、血糖コントロールを困難にします。糖尿病のある人は、アルコール摂取に特に注意が必要です」(ベットナー氏)。 米国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病患者がアルコールを飲むときは、飲む量をコントロールすることが重要だとアドバイスしている。主治医にアルコールを飲むことを伝え、医療スタッフとともに、アルコールが安全であるか、よく話しあう必要があるとしている。 Binge Drinking Increases Risk of Type 2 Diabetes by Causing Insulin Resistance(マウントサイナイ医科大学 2013年1月30日)
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