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生活習慣病を防ぐ"少食"のすすめ 第3回全国生活習慣病予防月間講演会開催

 日本生活習慣病予防協会とセルフメディケーション推進協議会は2月18日に千代田区立内幸町ホールで、「第3回全国生活習慣病予防月間講演会」を開催した。

 2013年のテーマは、健康標語である"一無二少三多"から"少食"にフォーカスした、「生活習慣病を防ぐ"少食"のすすめ」。全国から募集したスローガンの最優秀賞は、「少食で 延びる寿命 減る脂肪」に決まった(応募総数2,695通)。

 肥満やメタボリックシンドロームを引き起こす基盤は生活習慣にあって、とくに暴飲暴食を控えることは体を健康な状態に維持するために重要となる。講演では3名の講師が登壇した。

話題の糖質制限食の是非をめぐって
中村丁次先生(神奈川県立保健福祉大学学長/日本栄養士会名誉会長)
 炭水化物の摂取量を極端に減らす「糖質制限食(低炭水化物食)」は、短期的には減量や血糖コントロールの改善につながるとして、減量や生活習慣病の食事療法のひとつとして注目されている。しかし、効果や安全性については、あきらかになっていない点が多い。

 2型糖尿病などの生活習慣病は、偏った食生活の積み重ねによって発症するといわれるくらい、食事との関係は密接だ。また、肥満が2型糖尿病の最大の原因であることから、食事は、エネルギーをコントロールして、栄養のバランスを整えることが基本であるとされる。

 糖尿病の食事療法では、制限された摂取エネルギーの中で栄養素の必要量をとる目的で、「何を、どのくらい」食べるかが中心となってる。注意しなければならないのは、食事は多くの栄養成分の複合体である食品を組み合わせて調理し、加工していろいろな料理に仕上げて献立として供されていることだ。実際の食事では、食品の組み合わせにより栄養の成分の複合度は増し、体内での消化、吸収、代謝における成分の相乗作用は大きくなる。

 生活習慣病予防の食事療法のポイントは、(1)腹八分と運動により、適正体重を維持する、(2)食後血糖の調節は、炭水化物の量的、質的な問題とと食品の組み合わせを考慮する、(3)三大栄養素の比率は、各栄養素の過不足状態が起きないように、個人がもつリスクの状態で決める、(4)ご飯に主菜と副菜と組み合わせた日本型食事は、栄養素をバランスよく摂取することができると同時に食後高血糖の抑制にも有効である、(5)食事は継続させるために、規則正しく、ゆっくり、おいしく食べること。

 肥満がある場合は、エネルギー制限によりまず減量をするが重要で、肥満の有無に関係なく、主たる制限を炭水化物にするか、脂肪にするかは、個人がもつリスクにより決定される。中村先生は、「全ての栄養素の必要量が確保され、過剰摂取状態にならないようにすることが重要です」と強調した。

全国生活習慣病予防月間にあたって
宮崎 滋 先生(日本生活習慣病予防協会監事/新山手病院生活習慣病センター長)
 内臓脂肪がたまりすぎると、血中脂質や血糖、血圧に異常が起きて、脂質異常症、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が引き起こされやすくなる。このような生活習慣病を重ねもつほど、動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中を発症する危険性が高まる。

 肥満を解消するには、その元の内臓脂肪を減らす減量が第一だ。食事改善に取り組むときは、エネルギーのとりすぎが原因になっていないかをチェックし、体重だけを目標にせず、生活習慣から改善すべき点を見つけ、その改善に取り組むことを毎日の目標にすることが大切だ。

 食生活の問題点がわかったら、すべてを改善しようとするのではなく、無理なくできそうなものを選んで、毎日実行することが必要となる。

 食生活のポイントは、▽野菜をたっぷりとる(健康日本21では1日に350g以上をとり、このうち緑黄色野菜を120g以上とることを目標としている)、▽ひとり分ずつ、取り分けて食べる(どれだけ食べたかを把握しやすくしておく)、▽食事は決まった時間に時間をかけて食べる(朝食を抜いたり、食事時間が不規則だったり、就寝前3時間の間に食べるのは好ましくない。ゆっくりよく噛んで、時間をかけて食べることも重要)など。

少食とアンチエイジング
和田高士先生(日本生活習慣病予防協会専務理事/東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学センター教授)
 生活習慣病を予防するために少食を重んじる考え方は古くからある。江戸時代の儒学者である貝原益軒は「養生訓」で、元気で長生きをし、長寿を楽しむために、「珍美の食に対すとも、八九分にてやむべし」と説いている。

 低カロリー食と老化の減速は強い関連があり、低カロリー食で寿命が延び、より健康的に生きられる可能性があることは実験でも確かめられている。和田先生は、米ウィスコンシン大学の研究チームが、アカゲザルを対象に20年にわたり調べた研究を紹介した。

 エネルギー制限の従来の考え方は、「代謝率を下げ、体を'低速'で運転させることで寿命を延長する」ことだったが、現在の考え方は「栄養感知性の代謝経路を修飾することにより'省エネモード'で体を運転させ、老化や加齢性疾患の発生を抑制する」ことに変わってきているという。

 そのために、『一無(喫煙しない)・二少(少食、少酒=食べ過ぎない、飲み過ぎない)・三多(多動、多休、多接=運動、休養、多くの人や物に接し、ストレスを解消)』という健康標語が掲げられている。

閉会の挨拶
池田義雄 先生(日本生活習慣病予防協会理事長/タニタ体重科学研究所所長)
 「寿命を延ばす遺伝子は誰でももっており、普段は眠っているが、ある方法でスイッチをオンにできる」という考え方があり、例えば赤ワインに含まれるポリフェノールの一種が「長寿遺伝子」の働きをオンにするという研究が注目されたことがある。実際には1日100本飲まないと効果がない計算になり、現実的ではない。

 「健康で長生きしたいというニーズに応えられるのは、健康的な食事をとり、エネルギーをとりすぎずに、バランスを考え、必要なものを欠かさないといった、食事と運動からなる生活習慣の日々の改善です。適切な知識ももとづく食事指導が健康寿命の延長につながります」と、池田先生はまとめた。

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
  全国生活習慣病予防月間ホームページ
認定NPO法人 セルフメディケーション推進協議会

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