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睡眠ホルモンが前立腺がんのリスクを75%減らす 生活習慣が影響
2014年01月22日

睡眠に影響するホルモンである「メラトニン」が、進行性の前立腺がんの発症を75%抑えるという研究が発表された。良質な睡眠は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病だけでなく、がんの発症にも影響するという。
メラトニンは年をとると分泌量が減る
メラトニンは、季節のリズムや概日リズム(サーカディアンリズム)の調節作用をもつホルモン。体内時計に働きかけることで、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれている。
メラトニンの分泌は主に光によって調節されている。夜中に強い照明の中にいるとメラトニンの分泌量が減り、体内時計が休息に適した状態に導かれず、睡眠覚醒リズムが乱れる原因となる。
メラトニンは、年齢を重ねるとともに分泌量が減る。年をとると朝早く目覚めたり、夜中に何度も目が覚めるなど、若い頃より睡眠時間が減ってくるのは、加齢により体内時計の調節機能が弱まっているためと考えられている。
一方、前立腺がんは、欧米だけでなく、日本でも発症数が増えている。男性の場合、他人事ではなく、中年以降になると誰でもがんになる可能性があり、50歳以降になると年とともにがんの発症は増えていく。
前立腺がんは男性特有のがんで、50歳を過ぎた中年以降に多く発症する。米国では年間に23万人以上が発症し、男性の部位別にみたがんの第1位になっている。日本でも泌尿器科のがんの第1位で、がん全体でみると今後は肺がんに次ぐ第2位になると予想されている。
メラトニンが進行性の前立腺がんの発症を75%抑制
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、メラトニンが前立腺がんの発症を抑えることを、調査で突き止めた。
研究チームは、アイスランド人の男性928人のメラトニン値を測定し、平均7年間追跡し調査した。その結果、期間中に111人が前立腺がんと診断され、うち24人は進行性のがんだった。
メラトニンの分泌レベルが中央値よりも高い男性は、低い男性に比べ、進行性の前立腺がんを発症する割合が75%低いことが明らかになった。
「メラトニンは、不眠症や睡眠障害と深い関わりがあります。メラトニンの分泌異常は概日リズムの乱れや抑うつ、ストレス、生殖能力などにも関連している可能性が報告されています」と、ハーバード公衆衛生大学院のサラ マルクト氏は話す。
また、ウォーキング、ランニング、自転車、水泳などの運動や、ガーデニングなどの身体活動をよく行う男性では、進行性の前立腺がんの発症が少ないという報告も発表されている。
「睡眠障害に悩まされている人は、がん発症のリスクも抱えている可能性があります。睡眠や運動を含め生活習慣を見直すことが、がんの予防につながります」と、マルクト氏は指摘している。
メラトニンの分泌を高める生活スタイル
メラトニンの分泌を高めるために効果的なのは、規則正しい生活をすること。サーカディアンリズムを乱さないために、研究者は次のことを勧めている。
(1)就眠する2~3時間前に、光にあたり刺激を受けることを防ぐ。コンビニの照明や、テレビ、パソコンのモニターも、必要以上に見ないようにする。
(2)寝室の睡眠環境に明るい照明を持ち込まない。光が刺激になり、メラトニンの効果を相殺してしまう。
(3)就眠する2~3時間前に、コーヒーや緑茶などカフェインの入った飲料を飲まない。カフェインはメラトニン分泌を抑制する。夜食も避けた方が良い。
(4)朝は決まった時間に起き、朝日を浴びる。光を浴びると、脳にある体内時計の針が進み、体内時計がリセットされて活動状態に導かれる。
Melatonin May Lower Prostate Cancer Risk(米国がん学会 2014年1月19日)
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