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カロリー制限で寿命が延びる 「腹八分目が良い」は本当だった

 「腹八分目が体には良い」と言われるが、カロリー制限と寿命の関連について、米国であらためて議論されている。「カロリー制限を25年続けたサルは寿命が延び、加齢にともない増える生活習慣病の発症リスクも低下する」という実験結果を、米ウィスコンシン大学の研究チームが発表した。

 米国コーネル大学の研究者が1930年代に、「カロリー制限によってラットの寿命が延びる」という実験結果を発表して以来、ミジンコや昆虫、さらにはマウス、サルなどの哺乳類にまで、カロリー制限が寿命延長に効果があると報告されてきた。

 多くの研究者は、カロリー制限はヒトの寿命にも良い影響をもたらすだろうと考えたが、この議論には結論は出ていない。そこで、ヒトに近い動物であるサルを使い、カロリー制限が寿命や健康に与える影響の調査が開始された。

カロリーを30%減らすと健康・長寿に
 米ウィスコンシン国立霊長類研究センター(WNPRC)は、アカゲザル76匹を、カロリー制限を一切しないグループと、厳しいカロリー制限を課したグループに分けて、1989年から25年間という期間をかけて、2つのグループの疾病や死亡率を比較する実験を行った。

 食事制限をしたサルには、通常のサルが摂取する量から30%のカロリーを制限した量のエサを与えた。

 その結果、食べたいだけエサを食べてきたサルでは、疾患リスクは2.9倍に、死亡リスクは3倍に上昇していた。

 制限なく好きなだけエサを食べたサルの多くは、心疾患やがん、糖尿病など、加齢に伴い発症率が増える疾病で死亡したのに対して、カロリー制限をしたサルの死亡は少なかった。

 「いつでも好きなときに、食べたいだけエサを食べられる環境にいたサルは、明らかに過食の状態でした。自制心をもたず、いつでも食事ができて、好きなだけ食べ続ければ、やがて肥満や高血圧、2型糖尿病などが引き起こされます」と、WNPRCのリッキー コールマン博士は言う。

食べたいだけ食べるのは体には毒
 アカゲザルの食事を制限し寿命にどけだけ影響するかを調べた実験は、米国立老化研究所(NIA)も行っている。その実験では「カロリー制限により寿命は延びない」と報告された。

 NIAとWNPRCの実験が異なる結果になったことについて、「NIAでの実験では、国立科学アカデミーが作成したヒトを対象とした標準食のチャートのデータをもとに、一定の量のカロリー制限を行いました。それに対して、WNPRCの実験では、アカゲザルに食べたいだけ食べさせて、そこから30%のカロリー制限を課した点が異なります」と、コールマン博士は説明する。

 「NIAの場合は、結果として対照群でも10%程度のカロリー制限がされており、寿命延長の差にあらわれなかったのではないか」と述べている。

 今回の実験により、食事のカロリーを制限することが、加齢に伴い増える生活習慣病の発症を抑え、寿命を延ばす可能性が高いことが裏付けられた。カロリーを制限することで、体の代謝の再プログラミングが行われる可能性が高いという。

 「ただし、人間が食事のカロリー摂取を30%減らすのは難しいことです。極端なカロリー制限は勧められません。今回の研究は、カロリー制限がどのような効果をもたらすかを、基礎生物学の分野で解明したものです。人間を対象とした場合でもさらなる解明が期待されます」と述べている。

Monkey caloric restriction study shows big benefit; contradicts earlier study(ウィスコンシン大学 2014年4月1日)

[Terahata]
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