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データヘルス計画の保健指導ポイントは「QOL向上」「糖尿病重症化予防」

 パナソニック ヘルスケア株式会社は、保健指導従事者を対象とした「第25回保健指導セミナー」を4月18日に都内で開催した。セミナーには、医療・健診機関、健保組合、企業、保健指導機関に所属する保健師、看護師、管理栄養士など178名が参加した。

 同社が主催する「保健指導セミナー」は年6回全国各地で開催されている。今回は、坂根直樹・独立行政法人国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター予防医学研究室 室長を講師に招き、データヘルス計画を見据えた生活習慣改善の保健指導ポイントをテーマとした内容で開催された。

 坂根先生は、自身が糖尿病教育で実践している効果を出す保健指導スキルアップのポイントや、今年度から動き出す「データヘルス計画」の展望、糖尿病重症化予防の保健指導について解説した。

言葉の使い方と相手の自己開示を意識
 保健指導の面接時のポイントとして「言葉の使い方」をあげた。例えば、対象者のストレス解消法を聞く場合、単に「ストレス解消法は何ですか?」とすると、「食べること・飲むこと」とする回答が多くなるという。坂根先生は、「ストレスが免罪符となり『食べること』への保健指導をしづらくなる」と指摘、自身が糖尿病外来の際用いる方法として、「"食べること以外の"ストレス解消法は何ですか?」と一言加えた聞き方を紹介した。聞き方を少し変えるだけで、対象者ができることを一緒に考えるきっかけになるという。

 また、面接の際には対象者がしゃべりやすい雰囲気を作り出すことも必要とした。データヘルス計画に関わる保健指導では、いままでの年齢層より上の年齢層の人や、少し病気の人が対象となるため、その人の価値観や趣味、生きがいなどを把握し、本音を聞き出す「自己開示」を意識した保健指導が効果的とした。

健診・レセプトデータで一番効果のある人を抽出・指導
 2008年からの特定健診・特定保健指導では、メタボリックシンドロームに焦点が当てられ、「減量」が指導のポイントになった経緯がある。一方、データヘルス計画では、健診・レセプトデータから現状把握を行うことは共通しているが、どの対象集団に保健指導を実施していくか、またその指導内容や目標についてはそれぞれの保険者の現状によって異なる。

 坂根先生は、「データヘルス計画の対象となる集団は、非肥満者の高血圧やLDLコレステロールの数値が悪い人、糖尿病の重症化予防(透析予防)など、特定健診・特定保健指導で出た課題と共通する部分があります。特に糖尿病の重症化予防(透析予防)は、多くの保険者にとって優先的な課題の一つです」と述べた。また、データヘルス計画による保健指導の評価項目は「QOLの改善」とし、ヘルスプロモーションの推進につながる取り組みになるとした。

糖尿病の重症化予防 目標は透析予防
 糖尿病の重症化予防として糖尿病性腎症について解説した。

 糖尿病が原因で多くみられる合併症は3つで、糖尿病が続くと5年ほどで神経障害、7~8年で網膜症、10~15年で腎症に至る。そのうち腎症では末期腎不全におちいり、透析をしなければ生命を維持することができなくなってしまう。腎症は新たに透析になる一番の原因という。

 坂根先生は、透析予防のためには「糖尿病性腎症を悪化させないことがポイント」とし、検査値をきちんと確認することをすすめた。「糖尿病は血糖コントロールにより、その状態が良くなったり悪くなったりするものです。例えば、腎症の場合、微量アルブミン尿が出はじめた頃が要注意で、この時期にきちんと血糖コントロールすることで、腎症の進行速度を抑えたり、透析導入に至る時期を遅らせたりすることにつながります」と坂根先生は述べた。

 腎症悪化つながるポイントを「point of no return(回復不能点)」と呼び、微量アルブミン尿値のほか、血圧や血糖、脂質の検査値にも注意することが大切とした。各検査値のポイントは、血糖の場合はHbA1c 7.0%未満、血圧は収縮期130mmHg~拡張期85~80mmHg、LDLコレステロールは120mg/dL未満。また、生活習慣において気をつけることとして(1)減塩、(2)減量(内臓脂肪の減量)、(3)禁煙の3つを指導ポイントにあげた。

■質疑応答

Q. 食事指導の中で、タンパク質の制限はどのように考えたらよいですか?

A. たんぱく質の制限には効果が出やすい人と出にくい人がいます。たんぱく尿が出ている人に対しては、一度、たんぱく制限をしてもらってたんぱく尿が減るかどうかをチェックしてもらってもよいと思います。高血圧者や高齢者など腎硬化症のある人ではたんぱく制限よりも血圧管理が大切です。たんぱく制限をしてみたいと言う人に対しては満足できる食事についてのアドバイスができるようになれるといいですね。

Q. 減量に対する糖質制限についての考え方について教えて下さい。

A. マスコミやインターネットの情報から糖質制限に興味を持ったり、既に実践している人がいます。欧米では低脂肪食による減量プログラムが一般的ですが、低炭水化物食も減量のオプションのひとつと考えられています。減量指導の目的は減量体重を維持することと、健康的な食生活を身につけることにあります。既に糖質制限をしている人についてはアルコール量が増えていないか、動物性たんぱく質や飽和脂肪酸が増えていないかどうかをチェックしてあげて下さい。野菜量や大豆製品の摂取を勧めます。これから糖質制限をやろうと思っている人にはメリットとデメリットを説明してあげて下さい。

データヘルス計画の保健指導ツールとして最適

 同セミナーを主催するパナソニック ヘルスケア株式会社は、2008年より特定保健指導支援システムとして「WellsPort Step」を、保険者・健診機関・医療機関等に提供している。

 今回、同社は、これまでのシステムに「生活習慣改善情報提供ツール」「一般保健指導ツール」「禁煙サポートプログラム」の3つ加え、データヘルス計画における保健指導ツールとして展開を開始した。

生活習慣改善情報提供ツール「ウェルスポートマガジン」
本人の健診結果に合わせた生活習慣改善のための情報提供PDFを自動生成(約200パターン)
作成した情報提供PDFは、対象者サイトからもダウンロード可能
対象者サイトで健康データ、食事の記録、自己管理サイトとして活用

一般保健指導ツール
特定保健指導以外の方へ、自由な指導管理が可能
保険者のデータヘルス計画などの保健事業や、労働安全衛生法における事後指導への活用
22個の生活習慣改善の目標例とその説明用資料が標準搭載

禁煙サポートプログラム
自動送信や例文も活用できる便利なメッセージ作成機能
充実の管理機能で、禁煙者の現状をスピーディーにチェック
効果的な帳票で、禁煙者の禁煙をしっかりサポート

【問合せ先】
パナソニック ヘルスケア株式会社
マーケティング本部 メディコム営業統括グループ
電話(代表)03-5408-7287
ホームページ
http://panasonic.biz/healthcare/medicom/hoken/index.html

[保健指導リソースガイド編集部]
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