ニュース

キャノーラ油が糖尿病コントロールに貢献 低GIとの組合せで効果

 「キャノーラ油」と「低GIダイエット」を組み合わせた食事をとると、血糖値を下げられるという研究が発表された。

 キャノーラ油(菜種油)と、全粒粉を使った低GIのパンを同時に食べると、血糖値が下がり、悪玉のLDLコレステロールも低下するという研究が発表された。カナダのトロント大学のデビッド ジェンキンス教授率いる研究チームの成果。米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「ダイアベティズ ケア」に発表された。
「グリセミック インデックス」を提唱したジェンキンス教授の研究
 ジェンキンス教授らは1980年代初期に、異なるタイプの炭水化物が血糖値に与える影響を明らかにし、糖尿病患者にもっとも良い食事を見つける手法として、「グリセミック インデックス」(GI)を提唱した。

 グリセミック インデックス(GI)は、食事をとってから2時間までの血糖値の上昇の度合いを、ブドウ糖を基準に比較し指数で示したもの。GIを決めるひとつの要素は食物繊維の量で、食物繊維を多く含むとGIは低く、穀物では精製度が上がるほどGIは高くなる。

 精製された穀類を使った食品(白パン、白米、シリアル、ジャガイモ)を食べると、体に早く吸収されるので、血糖値が上昇しやすい。一方で、全粒穀類(大麦、オート麦、玄米、豆類、ベリー類、皮付きのリンゴ)といった低GIの食品を食べると、炭水化物の吸収が遅いので、血糖値がゆるやかに上昇するというのが、GIの考え方だ。

 Jenkins教授らは今回、カナダの2型糖尿病患者141人(平均年齢59歳)を、(1)キャノーラ油を加えて作ったパンなど低GI食品を摂取する群と、(2)体に良いとされる全粒小麦で作ったパンを摂取する群に分け、それぞれ3ヵ月後の変化を比較した。

 「キャノーラ」は、カナダで品種改良された菜種(なたね)の種類で、1970年代にマニトバ大学で開発された。日本の輸入される搾油用の菜種のおよそ9割は、カナダ産のキャノーラ品種だ。

 脂肪酸の中には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸を摂り過ぎると心臓病のリスクが上昇する。キャノーラ油は、飽和脂肪酸が7%しか含まれていない。これは、健康に良いとされるオリーブオイルに比べて約半分の量だ。また、不飽和脂肪酸であるオレイン酸やリノール酸、リノレン酸などが多く含まれている。

キャノーラ油を摂取するとHbA1cが低下 血管も健康に
 (1)と(2)の群の両方が、GI値の低い食事をとっていたが、(1)の群は2,000kcalにつき31gのキャノーラ油を取るようアドバイスされた。一方で(2)の群は精製された穀物を全粒粉のものに置き換えるようアドバイスされただけだった。

 その結果、両群でHbA1cは低下したが、キャノーラ油を摂取した(1)の患者は、HbA1cが0.47%低下しており、低下幅が大きかった。これに対して、(2)の患者は、HbA1cが0.31%低下していた。

 さらに、総コレステロール、LDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪、心臓病や動脈硬化など心血管病になる危険性(フラミンガムスコア)も、低GI食グループでより大きく下がっていた。

 ジェンキンス教授によると、これは心血管イベントの7%減少につながる可能性があるという。またスタチンと呼ばれるコレステロール低下薬の標準用量の倍である20mgの投与量に匹敵するという。

 本研究のもうひとつの興味深い点は、エンドパット検査によって血流や血管内皮の状態を測定したところ、キャノーラ油を摂取した患者は、血管の状態が改善していたことだ。

 「体に良いとされるキャノーラ油を摂取して、低GIの食事をすることで、血糖コントロールが改善することが分かりました。特に、糖尿病の合併症リスクの高い患者や、脂質を下げる治療を受けている患者では、低GI食のみで得られない改善効果を期待できます」と、ジェンキンス教授は述べている

Research Suggests Benefits of Canola Oil for People with Type 2 Diabetes(トロント大学 2014年7月14日)
Effect of Lowering the Glycemic Load With Canola Oil on Glycemic Control and Cardiovascular Risk Factors: A Randomized Controlled Trial(ダイアベティズケア 2014年6月14日)

[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶